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【暑い夏10】講師インタビュー Vol. 21 エマニュエル・ユイン

2010年08月13日

聞き手・インタビュー構成:古後奈緒子


prof_emma EMMANUELLE HUYNH エマニュエル・ユイン (フランス/アンジェ)
フランス・アンジェ国立現代舞踊センター(CNDC)の芸術監督。造形作家や音楽家など異なった分野のアーティストとの共同作業を精力的に行うなど、鋭い批評的まなざしでダンスの再構築を進める彼女は、ドミニク・バグエ、トリシャ・ブラウンなど多くの著名な振付家の下で踊り、エルヴェ・ロブ、オディール・デュボックなどと共同作業を行う。’94年にはヴィラ・メディチ海外研究奨学金を得てヴェトナムで創作。ボルドー美術館、ヴェラスケス美術館、ベルサイユ宮殿などでのパフォーマンス企画も多数。’01年にはフランス政府派遣アーティストとしてヴィラ九条山に滞在。09年はモンペリエ・ダンスフェスティバルにて上演を行なう。




アンジェと京都の間で見えるもの



2001年の「クリエイターズミーティング」(高嶺格、野村誠らとの共同制作@京都芸術センター)を皮切りに、モノクローム・サーカスとの『怪物』プロジェクト(2009年『踊りに行くぜ!!』他)、上演・映像と様々な版のある『A vida enorme』(2007年<ビデオラマ>@ヴィラ九条山、2008年《暑い夏》オープニング公演)etc…と、ここ数年、日本各地で紹介されてきたエマニュエル・ユイン。

何かしら問いを喚起し、もっと知ろうとする者には豊かなリンクを提供する。そんな良質の書物のような彼女の仕事に惹かれ、2007年に次いで2回目の《暑い夏》講師インタビューを試みました。ここでは彼女が拠点とするインスティテューション、アンジェ国立現代舞踊センター(CNDC)のお話を中心にお届けします。(尚、今年の《暑い夏》で紹介された『Cribles』をめぐるお話は、8月刊行の「《京都の暑い夏》15周年記念ドキュメントブック」のほうに掲載されます)

撮影:津田英理子
撮影:津田英理子


 劇場が一般市民とどのように関係を結ぶかに興味を持っているのですが、アンジェ国立現代舞踊センター(以下、CNDC)では、どういった取り組みを行っていますか? 例えば、ノンダンサー向けのワークショップをされたりは?

エマニュエル(以下、エマ) 私個人は、学校の先生達にワークショップを行っていて、受刑者たちにワークショップをしたことなどがあります。それから、これは私ではありませんが、CNCDは病院に出向いてもいますし、6才から18才までの学校に通う青少年たちとのワークショップを催しています。学校関係者がたくさん集まっていることになりますね。

 あなたのインスティテューションは、地域のコミュニティと恊働している。

エマ 当然の義務としてね。CNDCには5つの使命があるのですが、その一貫です。5つというのは、まずクリエイション。2つめは、空間や予算の面で他のアーティストとインスティテューションを分かち合うこと―例えば来季は室伏鴻が3人のダンサーと創作を行うんですよ―。さらにCNCDは学校でもある。それから、私たちが拠点とする建物内のEPCC LE QUAIという劇場などで、毎月2回ダンスの公演をプログラムしています。5つ目が、「文化的作用/関心の喚起」(cultural action or sensibilization)と呼んでいるのですが、都市においてダンスに何ができるかといったことを実践している人々と、一緒に行っている活動です。
 つまり、公衆に関わる活動はCNDCの使命、したがって私の職務の一部なのですが、もちろん個人としても関心を持って取り組んでいます。実際に、CNDCには「ダンスの社会事業」と呼ばれるアマチュアの人と関わる活動がかなりあります。いつもやるべきことが死ぬほどあって気が狂うかと思うけど(笑)、そのことを除けば、これらの使命は何ら特別なことではないわ。公のお金を得ているのだから、社会のために何かをするというのは当たり前のことでしょう。


撮影:津田英理子
撮影:津田英理子


 ボランティアで関わる人々はいますか? 《京都の暑い夏》や日本の芸術フェスティバルなどでは一般的ですが。

エマ いえ。働いているのはその道に秀でた人ばかりです。提供されるアクティヴィティに参加するのは、学生であれ教師であれ無料ですが、オーガナイズに関わる人々はみな有給です。小学校や中学校といった教育機関で、そこの教師が関わる場合でも、手当がつきます。


撮影:津田英理子
撮影:津田英理子


 そういった“素人”とのワークショップを通して、どのようなニーズや可能性を感じ取っていますか。

エマ 考えるに、自己陶冶への欲求を持った人たちが、自分自身で何かをクリエイトするためのアイディアや道具を得ようと、芸術のワークショップを取っているんでしょうね。そういった人たちは、教えたり、学んだり、共有したりといったことに、とても熱心です。実際、情報や体験をいかに共有するかといった類いの問いは、多くの仕事に応用できるでしょうね。学校の教師や研究者、それにオフィスなどで他の人を使っている人だって、そこで振舞いを見つめ直す糧を得ることができる。例えば今回やった「円になる」のワークなんか、そこで力と役割がぐるぐると再分配されるわけですね。権力と可能性が誰の手にも等しく委ねられているのだから。まあ、これは『クリブル』という作品に属する一面なのだけれど。

 そういったリサーチを、劇場の観客とも分かち合っていると?

エマ 劇場公演では敷居は高くなりますね。ワークショップ参加者のほうは、本当に自分のこととして関わっているので。彼らにワークの中で何を感じ、気づき、理解したのか、訊ねないでいるほうが無理ですよ。とはいえ私たちは、一般に劇場に来る人々が、自分自身に関する問いを考えられるように試みています。アンジェでは、作品ごとに情報や扱う問題を公開し、彼らが何を見、自身にとっての問いは何なのかといったことを、自ら表現できるようにといったことも考えています。


(2010年5月7日@京都芸術センター)


古後奈緒子(こご・なおこ)
「なんで君、いっつもいるの?」 「私の生活に必要だからでございます。」
今年、とある講師に問われて咄嗟に答えはしたものの、《暑い夏》で個人的に気づかされた価値も、もうちょっとパブリックに回転させてゆきたいところ。知り合った皆々さま、今後もお知恵拝借、お願いいたします。ぺこり。





《関連リンク》

2007年講師インタビューvol.10 http://www.log-osaka.jp/article/index.html?aid=297&p=3

2007年<ビデオラマ>レポート http://www.log-osaka.jp/article/index.html?aid=298&p=2

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