【暑い夏13】一問多答インタビュー
2013年06月18日
インタビュアー・構成:森下瑶
翻訳:橋本純
皆さんは、空間と身体の関係について意識した事はありますか?おそらく普通の日常生活を送る中で、瞬間的または感覚的に意識する事はあるとしても、その関係のヴァリエーションやその関係が我々の知覚にどのような作用をもたらすのかという事まで意識する事は稀であると思われます。私は大学で建築を学んでいて、空間について深く考えることはあったとしても、その空間に身体が入ることによって生まれる空間と身体との間の相互作用的な関係性については意識した事がありませんでした。このようなことを考えるに至った発端は、「Dance in building」という、Monochromecircs主催のワークショップに参加したことでした。
このワークショップは、建築物の中で踊るということをより意識的に行うワークショップです。建物を丁寧に観察し、踊る空間から得られる情報(その空間の特性など)を身体にインプットし、それらを手がかりに踊ります。これだけでも面白いのですが、このワークショップでさらに面白いのが「ショーイング」の時間です。「ショーイング」とは、ワークショップ参加者それぞれが、建築物の中の気に入った空間を決め、その空間をリサーチし作ったダンスをお互いに鑑賞し合う時間のことです。ショーイングの中で空間との強い関係をもったダンスを鑑賞していると、それまで気付かなかった空間の特性がはっきりと見えてきて、多くの発見を得る事ができます。(この場所はこんなに天井が高かったんだ、こんなに奥行きのある場所だったんだ、こんなところにこんな面白いものがあったんだ、という様に・・・)このワークショップの経験を通して、私は空間と身体との関係について興味を抱くようになりました。
そして今回、ダンスで世界的に活躍されている講師陣が集まるこのフェスティバルで、講師の皆さんが、「空間と身体との関係性」についてどのような考えをお持ちなのか、ぜひお聞きしてみたいと思い立ち、この一問多答インタビューが生まれました。
一問多答インタビューとは、一つの同じ質問をそれぞれの講師の方々に投げかけ、それぞれの異なった回答をいただき、それらを比較してみるというインタビューの形式です。
そして今回の質問内容はこちら
「あなたは振り付けあるいはボディワークをする時にどのように空間を感じますか?
または、利用されますか?
あるいは、空間のなかでどの範囲までを自分自身の空間だと思いますか?」
回答してくださった講師の方々が、それぞれに異なった背景をお持ちの方々でしたので、多角的で興味深い回答を頂くことができました。また私の言語力不足により、質問の回答をお聞きした上で、より深く話を進めていくことはできませんでしたが、講師の方々の直感的な回答をお楽しみ頂ければと思います。それでは、それぞれの講師の方々の回答をお楽しみください。
私達は多くの場合空間の中で身体を動かすという考え方をしますが、私はその考え方よりも身体の動きを使って空間を動かすという考え方のほうが好きです。ですから、“空間が身体を含んでいる”というように考えますし、それと同時に、空間と身体とが相互作用的な関係であることも感じています。例えば、私はある空間を走る時、自分が走る事によって生じる風を感じます。その感覚は私の動きに大きな影響を及ぼします。そして同時に私の動きによって生じた風は、私の動きが終わってもその空間には未だ動きがあるかのように我々に感じさせるのです。フランチェスコ・スカベッタ「空間を旅する」
また別の例を挙げると、私の作品の中で舞台上に木の床を設置したものがありました。長い長方形を利用して沢山の“角”を舞台上に作ったのです。そうすることによって沢山の空間が舞台上に生まれました。木の床の長方形の中にも外にも空間が生まれ、その空間からダンサーの位置は影響を受けました。また身体の動きからの空間への影響としては、床の上で身体を滑らせて床の角に到達する動きから、長方形の中と外とで緊張感を生み出す事が出来ました。他にも、木の床から片手だけを出す動きから、長方形の中と外との明確な違いを見ている人に感じさせることができました。
(参考動画)
今私が話した、人々の感覚を操るような現象は「写真」にも見られる現象だと思います。フレームの中に注目を作ることが大切であり、またその注目をどこに集めるか、そして空間のどこ導くか。その方法は多岐にわたりますし、作品によっても様々です。
ダンスの振り付けも写真と同様に、パフォーマーの動きで注目を作り出し、どこに、あるいはどれだけの注目を集めたいかによって、動きが決定されます。写真でもダンスでも、前景から背景のとても遠いところにピントがシフトしていく感じは凄くいいですよね。そんな風に人々の注目を空間の中で移り変わらせていくことで、作品を進行させていきます。言い換えるならば、作品の進行の中で、観客達は空間を旅するのです。ですから空間は作品の進行を演出する役割を担っていると言えます。特に野外のようなサイトスペシフィックな状況でのパフォーマンスではその事が顕著に現れます。野外空間は作品の演出を助ける自然な景色を作ることができますからね。
ダンスにおいて空間は永遠のテーマですね。研究を重ね、より様々な空間効果を見つけるために挑戦し続けなければいけないテーマだと思います。
フランチェスコ・スカベッタ (ノルウェー/オスロ)FRANCESCO SCAVETTA
イタリア生まれ。IMPULSTANZ(オーストリア)や、P.A.R.T.S(ベルギー)、MTD(オランダ)など、コンテンポラリー・ダンスの主要なフェスティバル、大学、ダンス機関等で引っ張りだこのカッティング・エッジな振付家。ノルウェーとスウェーデンを拠点にダンスカンパニーWeeを率い、これまでアメリカ、ヨーロッパなど27 カ国をツアーしノルウェーを代表するカンパニーとなる。ヴェネチア・ビエンナーレで初演されたミクストメディア作品『Live』から、アブストラクトで即興的な『Surprised Body』まで幅広い作品群を誇る。そのムーブメントは、リリーシング・テクニックやコンタクト・インプロヴィゼーション、そして太極拳などをバックボーンに独自の言語を開発している。北欧の風雲児来日!!(KIDFホームページより)
空間は私にとってとても重要なものです。動く時やヨガをする時はいつでも自分の周りの空間を感じようと努力していますし、同時に空間も私自身や身体に影響を与えています。マタン・エシュカー「空間を利用し、感じる。」
空間の中で見えない力を受け、その力が私の動きを助けてくれているのか、あるいは邪魔をしているのかを感じながら動いていますね。そしてその事を感じる事を楽しんでいます。また私は自分が動いている時に、自分の能力が私の身体に働いている見えない力に対して、どのように反応するかにも注目しています。
また少し話は変わりますが、パートナーを組むかソロでやるかという問題や、その空間が制限のある空間か、あるいは制限のある中でのオープンな空間かという問題によって、空間における自分と他人との関係は常に変化するということも感じています。
また私にとって空間の中で一番重要であるのは、地面との関係です。アクションとリアクション、そして空間が変化すると自分の動きはどのように変化するのか、またどんな新しい楽しみに出会えるのか・・・。私は特に「反作用の力」に興味があります。「反作用の力」とはつまり反動する力、自分を動かす力ではなくある力に対して反対方向に反応して生み出される力のことです。私は空間を使ってその力を感じ取ろうとしています。
マタン・エシュカー (イスラエル/テルアビブ)MATAN ESHKAR
ヨガ指導者。ニューヨークのDNA(Dance New Amsterdam)やNewYork Yoga にて講師として活躍。現在はイスラエルで、インバル・ピント・ダンスカンパニーや、バットシェバなどのプロフェッショナル・ダンサーへの指導を行っている。彼のヨガは古くからあるヨガの知恵を現代生活に適応する言語に置き換えた革新的で独創的なもので、ヨガ指導者のための教育や、アメリカ、ヨーロッパ、メキシコなど世界各地での指導を行う。ダンスやスポーツでの負傷や再訓練、痛みのケアなどに特化したクリニックも行っている。大きな支持を得て再来日。(KIDFホームページより)
私の場合、仕事柄あまり振付をしないので、教える事とダンサーの特徴の関係で考える事が多いですね。なので、振付の観点からではなく私の観点から回答しますね。アビゲイル・イェーガー「空間を生み出す」
私が自分の時間をどのように使っているのかというと、ダンサー達が彼ら自身の空間との関係を見つける事の手伝いをしているのです。空間に入る時、私たちは空間を作り、空間に存在する様々な要素を提示しています。私達のいる空間は“空っぽ“ではありませんし、私達はそのような様々な要素を持つ空間と影響を及ぼし合っているのです。そして、私達が空間を意識する事によって空間はより”見える“ようになり、同時に私達の身体も空間の中でより見えるようになります。ですから、もし私達が空間とのつながりを断ってしまえば、空間も私達の身体も見えなくなってしまいます。
別の観点から話しましょう。もし普通にただ立っているだけなら地面に直立している線しか見えません。けれどその立っている人が、自分自身の上下方向や前後方向に対しての感覚をより開いて意識したならば、そこには空間が広がりますよね。ですから、もし同時に様々な事に気付くことができれば、私たちは空間の中でより内在的に可視的に活き活きと存在できるようになるでしょう。面白いのは、自分の”考える”という機能により、それらを変えられるという事ですね。この話に関しては面白い経験があって、あるダンスを見に行った時の話なのですが、同じ振り付けを踊る2人のダンサーを見たのです。その時に、2人とも同じ動きをしているのに、なぜか片方の人だけがよりその場所に”存在している”ように見えたのです。どれだけ高く飛べるかとか、どれだけ高く脚が上がるかとか、そのような事は関係ないのです。ただどれだけその場所との関係を築けるかという問題なのです。
そして私はダンスにおける全ての事柄は、空間との関係性と深く関わっていると思います。空間とはステージだとか抽象的な空間ではなく本当の場所との関係です。あなたの質問に合わせて振付をする場合を考えてみるならば、振付をどのように空間に配置するのかという事を考えますよね。私達の動きがどのように空間の中を動くのか。さらに言えば、空間を生み出す行為自体がダンスなのだと思うのです。
アビゲイル・イェーガー (U.S.A/North Carolina)ABIGAIL YAGER
アビーの小柄で知的な雰囲気とウィットに富んだムーブメントには誰もが魅了される。NYポストモダンダンスを代表するトリシャ・ブラウン・ダンスカンパニーにて’95 年~’02 年ダンサーと音楽アシスタントを務める。また、トリシャ作品の振付・再構成をリヨン・オペラ・バレエなどの国際的なカンパニーで務める他、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの主宰するP.A.R.T.S.(ベルギー)や、アメリカンダンスフェスティバルなど、名だたるアカデミーで同様のプロジェクトをディレクションしてきた。また、韓国国立芸術大学、フランス国立振付センター(CCN)での指導など、ワールドワイドに活躍している。(KIDFホームページより)
空間と身体との関係はどこで踊るかによって異なりますね。大抵、劇場などのブラックボックスで踊るので、空間との関係はとても複雑です。ですから時には、空間に何かを配置したりして故意的に空間を制御したりもします。エリック・ラムルー「空間からの身体へのアプローチ」
ブラックボックス以外では、野外やその他の施設で踊る事があります。その場合、身体が空間に入り、何かを感じ、それに反応するので、場所によって身体の動きにかなり違いがみられます。例えば大きな街、路上、芝生の上で踊る場合、それぞれの場合で身体の動きは全く違います。空間は身体に情報を与え、身体を変化させるのです。身体は空間を変える事ができますが、同時に空間も身体を変える事ができると考えています。
例えば、2年前に大きな美術館でパフォーマンスをしましたが、それは凄く不思議な体験でしたね。パフォーマンス中、身体と彫刻との距離がとても近かったので、彫刻特有のテイストや質などに無意識的に身体が影響をうけていました。決して意識的ではなかったのですが、彫刻の近くで踊る事により自然とそのように身体が変化した事は興味深かったですね。
このように空間は身体に影響を与えます。ですから、身体を異なる空間の中に置くことは凄く面白い事だといつも思っています。そのような事ができない場合でも、私は身体に想像上の空間を与える事にしています。そして、2つの身体の間にどのような空間を作るのかという、身体と身体との間の関係性もとても大事ですね。例えば、2つの身体をすごく近くに配置してみたり、あるいは遠くに配置してみたり・・・。そしてその関係性は、建築物と身体との関係性とも同じだと思います。
エリック・ラムルー (フランス/カーン)ERIC LAMOUREUX
カーン国立振付センター芸術監督。カンパニー・ファトゥミラムルーをエラ・ファトゥミと主宰。優れた身体能力に裏付けられた大胆なムーブメントと、高い音楽性に支えられたロマンティシズム、実験精神に富んだオリジナリティーの高い振付で、’90年バニョレ振付家コンクールをはじめ、アヴィニヨン演劇祭、リヨンビエンナーレなど一躍注目を浴びる。’99年フランス政府派遣アーティストとしてヴィラ九条山に滞在。「芸術祭典・京」(’99)「コーチング・プロジェクト」(’04/京都芸術センター)など日本にも縁が深い。本フェスティバルでオーディションを行った日、仏、コンゴ3カ国共同製作作品『just to dance…』は現在も世界各国で上演中。 フェスティバルやレジデンス活動を通じて、アジアやアフリカの若手育成も行っている。(KIDFホームページより)
私たちの身体がある空間に入る時、その身体を用いて空間を生み出したり、変化させたりします。身体の動きが全ての空間の動きと変化を生み出す訳です。ですから、ダンサーが身体を用いて空間を提示し、注目させることができるという事はとても感じますね。さらに、私達ダンサーは人間同士の距離についても考えていて、それは建築家が社会の中の建築について考えていることでもあるでしょう。そう考えると私達ダンサーの持つ身体の能力、身体の知識に関するスキルは様々な状況や分野で活かせる事が分かりますね。エマニュエル・ユイン「芸術における建築家」
今私が話している「空間」というのは、建築の中に存在する空間であり、抽象的ないしは幾何学的なものではありません。今話しているのは、人間にとって役に立つように、人間が利用することを考慮した空間です。つまり、空間と身体との関係性について考慮されている空間のことですね。私はそのような空間をもつ建物を建築として考えています。そのように建築を考えるのであれば、建築もダンスも、空間と身体の関係性について深く考えるという点で共通していると言えます。
建築では、距離、方向、人間の関係などに働きかけ、操作するように空間を構成します。これが建築の持つ力だと思います。最初に身体は空間を提示し注目させると言ったけれど、実は一方的なものではないのです。空間が身体に対して動きや振る舞いを提示するのです。ですから、ダンサーとして私たちは空間に対して敏感であり意識的であるべきです。また建築空間は人間に振る舞いを提示するように構成されていますが、そのような概念が全く存在しないサイトスペシフィックな場もステージとなり得るでしょうね。
またダンサーである私達は、ダンサーでない人たちとより政治的・市民的な面白い機会でも働けるでしょう。フランスでは「アクションカルチャー」と呼ばれているのだけど、アーティストが子供、教師、囚人、入院している病人だとかの、アーティストと知識を共有したいという特定の公衆と、関係を築いています。つまり、市民社会でアーティストやダンサーでない彼らの身体や互いの人間の関係に変化を与えようとするのです。だからその様なアーティストやダンサーは、芸術性に関してある意味建築家として振舞っていると言えますね。
エマニュエル・ユイン (フランス/アンジェ)EMMANUELLE HUYNH
元フランス・アンジェ国立振付センター(CNDC)芸術監督。造形作家や音楽家など異分野のアーティストとの共同作業を開始し継続的に行うなど、鋭い批評的まなざしでダンスの再構築を進める彼女は、ドミニク・バグエ、トリシャ・ブラウンなど多くの著名な振付家の下で踊る。’01 年フランス政府派遣アーティストとしてヴィラ九条山に滞在。『AVida Enorme』(’08) 、『CRIBLES』(’10)を本フェスティバルでも上演。笠井叡とのデュエット『SPIEL』(’11)を発表するなど、日本との交流も深い。待望の再来日。(KIDFホームページより)
身体が空間に入った時に感じる雰囲気は、身体が入る前とは全く変わりますよね。でもその変化は空間にもよる気がします。例えば直線で構成された抽象的な空間であれば冷たい感覚を感じるし、反対にガウディーの建築のような曲線で構成された具体的な空間であれば暖かい感覚を感じます。さらに言えば、抽象的な空間に身体が入る場合の方が具体的な空間に入るよりもより顕著に違いを感じ取れます。やはり人間の身体は呼吸をしていますし、100%の停止はできない訳ですから、そのような身体と抽象的な空間を比較しやすいということが要因でしょうね。森井淳「空間のうねり」
それと、人間誰しも人生で経験してきた苦労や喜びなどが必ず身体のどこかから滲み出ている訳だけれども、その滲み出てくるオーラのような物が、ダンサーや役者などのパフォーマーにおける表現力に繋がっていると思うのです。そのオーラをある動作によって上手く表すことができれば、見ている人達に空間の広がりをみせることができ、そのパフォーマーの身体の形以上の物を見せる事ができる訳です。このことが、空間のどの範囲までを意識しているかという質問の回答に関係しているように思えますね。僕も若い時は、舞台の天井の高さや照明の位置など、物理的に空間を捉えることを意識したけれど、今はあまり意識しません。踊りの動きに関しても、身体が自然に動くように練習を重ねているので舞台上ではあまり意識しません。ですから舞台上では、デュオで踊る場合であれば、パートナーとの関係性を意識しますし、どのような場合であれ、お客さんの事はとても意識します。お客さんと会話するようなイメージで、どのように見てくださっているのかを感じる事でその空間の雰囲気を感じ取ります。そういった意味で、舞台上にいる時でもお客さんのいる空間まで意識が飛んでいると言えます。
また僕の出演するダンス作品は物語的な要素が強い物が多いので、そういった場合、景色や色といった物を重要視する傾向がありますね。逆に踊る空間の大きさなどを意識することはあまりありません。そこを意識するとスタジオで練習する意味が薄れてきますからね。ですから、どのような空間で踊るにしても、見ている人達を、その空間ではない所に連れて行きたいという意識を持って踊るようにしています。ダンサーがしっかりとイメージをもって舞台で動くことにより、空間が広がっていき、そしてさらにその広がりの範囲がお客さんにまで広がっていくと、劇場全体の空間のうねりが生じるのです。僕はその瞬間に作品に入り込めたように感じ、胸が踊りますね。空間というのはそうやって作られていく物だと思います。
森井淳 (日本/大阪)JUN MORII
ラバン・センターにてコンテンポラリーダンスを学び、ヨーロッパ各国にて公演&ワークショップを行う。帰国後、演出・振付の相原マユコらと共にj.a.m.DanceTheatreを結成。国内外で様々な公演&ワークショップを行う。またMonochromeCircusやじゅんじゅん scienceなど様々な振付家・ダンサーと活動する傍ら関西を中心にコンテンポラリーダンスクラスやワークショップの指導・振付にも積極的に取り組む。近畿大学文芸学部非常勤講師。(KIDFホームページより)
もちろん空間と動きと身体には密接な繋がりがあります。空間の中で歩いている時、私達は何かを生み出していると感じます。そして身体の動きは空間に影響を与え、さらにその空間を強調することができます。例えば、身体によって空間の中にある線や形や物体などを強調することが可能ですね。ノアム・カルメリ「空間とダンスの関係性から」
違う角度から考えてみると、“動く”という行為には、様々なアプローチがあります。目で見たままをなぞる事もできますし、感情からも想像からも動く事ができます。そしてもっと抽象的なアプローチもあり近い/遠い、前/後ろなどの位置関係から動く事もできますね。これが、空間と最も親密な関係にある動き方だと思います。その中で、私のスタイルは自然の力を使って空間を利用するのですが、コンタクトをする時やグループインプロヴィゼーションをする時も位置関係を感じる事が多いですね。つまり、私達が話しているのは感情表現と言うよりも抽象的な関係についてですね。ですから、多くの人が劇場で行うようなイメージではありません。
空間と身体は抽象的な関係だと思います。抽象が好きな人もそうでない人もいるでしょうが、一般に日本人は好きなのでは? 空間と繋がる事がとても得意なように見えますから。おそらく空間には、日本人の身体と親しみやすい抽象性があるのでしょうね。あなたがたはダンスにおいても、空間を感情や想像力の器とみなすのではなく、抽象的な関係を結ぶ対象として感じているのではないでしょうか。
ノアム・カルメリ (イスラエル/テルアビブ)NOAM CARMELI
コンタクト・インプロヴァイザー、武術家(合気道)、ボディーワーカー、そして建築家としても活動している。イスラエルの即興グループOktet の創設メンバーで、北アイルランドEcho Echodance company でも踊る他、ヨーロッパでの活動も精力的に行っている。現在イスラエルのCI アソシエーションの総監督、及びイスラエルコンタクト・インプロヴィゼーションフェスティバルのオーガナイザーを務める。CI、合気道、GAGA を学び続けるなか、ムーブメントの探求と融合、そしてコミュニティーの形成に積極的に臨んでいる。(KIDFホームページより)
森下瑶(もりした・よう)
幼少期にクラシックバレエ、高校時代に創作ダンスを経験し、コンテンポラリーダンスと出会う。その後大学にて建築を学びながら、Monochrome Circs主催のワークショップに参加。空間と身体の関係性について興味を持つ。小倉笑とユニット「何かの人」を結成。また、制作の勉強中。
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