2019年07月3日

〈C-3:ホラシオ・マクアクア〉

〈Dビギナー:ホラシオ・マクアクア〉

 参加日2019年4月27日〜5月4日

 私は、1.自分を解放すること、2.体内からの衝動で動くこと、3.敏捷に動くことを必要とし、ホラシオクラスを選びました。雷に打たれたような衝撃を、ホラシオの言葉と共にお伝えできたらと思います。

○「人はどれくらいの時間動ける?」

 初回のウォーミングアップは、講堂の中を自由に動き回ることでした。

 音楽に合わせて15分踊った後へとへとになって休もうとすると、「15分経って踊ったら休憩するの?本番で途中に休むの?」と言われました。続けて、「人ってどれくらいの時間動けるか知ってる?」と質問がありました。

その答えは、

 「いや永遠だよ。ピナ・バウシュは亡くなった今でも踊っている。

 なぜなら、人は永遠に踊れるからだ。」

 このクラスで受けた1つ目の衝撃でした。

 本当に踊りが好きなら、精神力と体力を鍛え、踊り続けることができるんだと感じました。

○「私から学ぶのではなく、このクラス全員から学ぼう。」

 最初は、身体の線を手でなぞる「スキャニング」、両手でボールを作り身体の周りを回す「ボール」といった動きを学びました。そうした手の動きに、前歩き、後ろ歩き、左右の移動といった足の動きを組み合わせて、動きをより複雑に面白く作っていきました。

 手だけ、足だけ動かすのは何とかできます。けれど、いざ手と足の動きが組み合わさると、意識が分散して上手く動けなくなります。さらに、曲のテンポが速くなると上手くリズムに乗れず、「音楽を聞いて、リズムを感じて」と言われていました。

 そんなとき、「私から学ぶのではなく、このクラス全員から学ぼう。」と言われたことが第2の衝撃でした。私は知らず知らずのうちに、ホラシオの方ばかり見ていたのです。

「学校では、先生の言うとおりにしたらいいけど、ここはそういう場所ではない。私は、先生の真似をして教えるのが好きではない。クラス全員の動きをまねして、自分のものにしていってほしい。」とのことでした。

それから、一緒に学んでいる参加者の人たちからも学ぼうとし始めました。

○”Take it out.”

 周りの人に目を向け始めると、自分1人の世界で踊ってしまっていることに気がつきました。そんな時にアドバイスとして言われたのが”Take it out.”です。”Take it out.”とは、「手、足を身体の外側に動かし、身体のエネルギーを外に出すこと」とクラスの中では言っていました。手をこうやって、次に足をこうやってと一つ一つ考えていては追いつきません。頭の中で解釈し考える前に、動いてみる。自分が動けたことに驚くくらい敏捷に動き、エネルギーを出すことが求められました。言葉では理解できても、実践することは難しかったです。

○「飛行機のイメージがないと想像力が失われてしまう。」

 さらに、自分を解放するために飛行機の例えを教えてもらいました。

 「飛行機の中は、乗客が食事を取り、音楽や映画を楽しむ一方で、飛行機の外はエンジンが力強く動いている。それと同じで身体の内側で冷静にいろいろな動きを作りながら、体の外側で強いエネルギーを発しないといけない。そうでないと、ただ動いているだけになってしまう。いろいろなことをもっと想像して、ダンスを創造していくんだよ。」

 また、心電図のイラストを示しながら、「常に動きが一定にならないように、天国や地獄、その中間を行き来するように、常に新しい動きを生み出していきましょう。」との言葉もありました。

 この2つの例えを聞いてから自分の動きを振り返ると、踊りはじめがいつも同じになっていることに気づきました。教わったことをヒントに、身体の違う部位からはじめる、身体を動かすスピードを変える、自信がなくても動いてみるなど、自分なりに試しました。

○「ビギナーからも、プロからも学んでいる。だから私は両者を同じクラスに入れる。」

 ダンス初心者の私は、他に参加されているダンサーの方を見ているとどうしても、このクラスに参加して良かったのか?と不安になることが多くありました。

ビギナークラスのアフタートークで、

「ビギナーからも、プロからも学ぶことができる。だから私は両者を同じクラスに入れる。ダンスの技術も大切であるけれども、(経験に関係なく)動くことが好きであれば、いろいろ動いていけるようになる。」

と言われてからは、せっかくプロの方と一緒に参加したのだから、少しでもエネルギー、動き方を吸収しようという意識に変わりました。

○クラスを終えて

 身体を動かすことの難しさを改めて気づかされたワークショップでした。今回を機にダンスに向き合う姿勢や考え方は、変えることができたと思います。自分の思う様に身体は動かせなかったことはもどかしかったですが、「人は100万通りの動きに出会う」と言われたので、これからも自分の身体に向き合っていきたいです。

ホラシオ・マクアクア(マドリード/スペイン)

モザンビーク出身のダンサー・振付家。彼自身の名を冠するダンス・カンパニーのアーティスティック・ディレクターを務める。ホラシオ・マクアクア・カンパニーは美学的な制限をもたず、誰もが自分自身の振付的宇宙を探求する余地があるという意図のもと、すべてのコラボレーターとの創造性に開かれた数々のプロジェクトを展開している。

ホラシオは、モザンビークでは初めてのダンス・カンパニー Culurarte の創立メンバーの一人であり、ヨーロッパの数多くのフェスティバルを席巻している。ダンサー、クリエーターとして、自身が師と仰ぐ David Zambrano をはじめとして多くの振付家とのコラボレーションを行ってきた。待望の初来日!!

あさだ まこと

フェスティバルおよびドキュメント・アクションに初参加。

 

 

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