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【暑い夏18】鏡を通して新しい自分に出会う –今まで目にした事のない「学び」–
2018年06月27日
〈こどもとおとな:秋津さやか〉ワークショップレポート(取材日4/21)
「こどもの集中力を高めるため、レッスン開始40分後に入って下さい」
秋津先生からのメッセージを受け、ドキドキワクワクしながら教室の扉を開けたところから私のドキュメントアクションの活動は始まった。
このワークの柱になっていたのは「鏡」と「へんな鏡」この二つ。
まず、2人ペアになって向かい合い、お互いに相手が「鏡」だとイメージする。
そこからワークに入っていくのだが、“一方は自由に動く”“もう一方は鏡になりきる”出されたお題はただそれだけだ。
そして、「さぁやってみよう!」先生の合図に合わせ、音楽に乗せて勢いよくスタートした。
ああ、うん、簡単だな……
見学の身の私は単純にそう思った。
(撮影:下野優希)
だけど、あれ? なんだろう?
最初そこには、何だかぎこちなく緊張した空気が流れているように感じた。
互いをじっと集中して見つめる参加者たち。恐らく、相手が初めましての人であったり、おとなは、相手がこどもだったりしたからだろうか、どれだけ動けるかな?単純な動きの方が相手に優しい?
そんな風に探りながら、様子を見ながら動いているようだった。
意外にも《自由に動く》とは難しいことなのか。
しかし、何度か同じことを繰り返すうちに、大きく空気が変わったのを感じた。
こどもたちが本来の姿を現し、相手を気にせず、直感で思いのままに動き始めたのだ!
舞台いっぱいに走り抜けるこども、ひたすらその場でぐるぐる回り続けるこども、その動きはどんどん大きく大胆になって行く。
そうすると、おとなもこどもに強く突き動かされ、こっちも負けていられない!もっと大胆に動いてやろう!という勢いを見せ始める。
するとそのうち、こどもの中には、テクニックを使ったおとなの動きに反応したのか、勢いだけでなく、上手く、大人っぽく踊ろうという新しい動きも見えてきたのには驚いた。
立派に鏡を演じ、みんなの勢いがついたところで、次は「へんな鏡」のワークが始まった。
これは、「鏡」のワークで得た動きをもとに、今度は相手と向かい合いながらもあえて違う動きをするというもの。
ワークが始まったその瞬間に、おとなもこどもも表情に更に輝きが増し、どんどん自分を開放して、まるで見えない殻を突き破るかのような動きを見せる。
もうみんな自由だ!自由に空間を操っている!一気にワークショップの熱気が最高潮を迎えた。
(撮影:下野優希)
そしてレッスン後半、この「鏡」と「へんな鏡」は、その表現方法の手段を、身体から《ペンで線を描く》という形に変えて行われた。
突如、舞台を二つに分けるかのようにサーっとロールが広げられ、長く真っ白な紙が敷かれた。
これは確かに《ダンス》のワークショップであるが、そこに、紙に《ペンを使って表現する》という美術的要素が加わった。これは本当に興味深かった。
参加者それぞれの表現が、一瞬のものではなく、確かに目に見える形となって残るのだ。
相手と向かい合って、思い思いのペンを手に、真っ白の紙に長い線を描いて行く。
1本、2本……どんどんみんなの表現が重なっていく。
最後は、参加者全員で場を作り上げた達成感や一体感、そして喜びで会場が包まれた。
(撮影:相川敦子)
思えば、「こどもとおとな」のワークショップ=おとながこどもを導きながら手を取り合って踊る。
いわゆるお遊戯のようなものだろうか? そんな風に私は、これから始まるクラスに思いを馳せ、扉の外で待機していた。
ところが終わってみると、良い意味で予想を全く裏切るものだったではないか。
終始、秋津先生の指導には「ああしなさい」「こうしなさい」という型は一切ない。
おとながこどもに指導するという構図も全くない。
しかし、そこには言葉を介さないコミュニケーションが確かにあり、向かい合った相手を通して、それぞれが新しい自分に出会えたのではないかと感じた。
私はこのワークショップを通して、今まで目にした事のない、全く新しい「学び」の形を見つけることができた。
ワークショップ終了後、会場ではリラックスして大の字になって寝ころぶこどもたちや、興奮して走り廻るこどもたち。その周りには笑顔で談笑するおとなたち。
そこには、みんなで自由に空間を泳いだ心地よさと余韻がいつまでも残っていた。
(撮影:相川敦子)
親子参加の方に感想を尋ねてみると「日頃は人見知りや場所見知りがあってモジモジしている息子が、大好きなダンスだと自分を表現できるようだ。
自分でこれがやりたいと言ってくれるのが嬉しい。おとなも周りを気にすることなく、自由に踊れるきっかけをもらえて良かった。来年も絶対参加したい」と話してくれた。
こどもとおとなが同じ舞台で踊ったこの日、ダンスの未来に繋ぐ小さな芽が、一つ開いたかもしれない。
秋津さやか(スペイン/マドリード)
SAYAKA AKITSU(Spain/Madrid)立命館大学産業社会学部卒業。京都、滋賀を中心にバレエ、コンテンポラリーダンサーとして活動した後、2008年にアムステルダムに拠点を移し、即興ではKatie Duck と活動を共にする。2009年より創作活動を開始し、自作をヨーロッパ各国、イスラエル、日本で上演する。2011年ロッテルダムのDansateliersにて『A bite』を発表し、横浜ダンスコレクションEXのファイナリストとなる。2015年JCDN主催「踊りに行くぜ!!」2(セカンド)vol.5にて『Blind piece』をアートシアターdB Kobeで発表し、現在インタラクティブ版として発展させている。2015-2016年、ダンスの楽しさや利点をコミュニティで共有する手法を学ぶため、英国トリニティラバンのコミュニティダンス準修士コースで学ぶ。優の成績で卒業時、ラバン方法論の最優秀研究賞を受賞。卒業後はダンス教師としてダンス経験や年齢、障害の有無等を問わない幅広い層を対象に、クリティブダンスクラスをヨーロッパ各国と日本で提供している。2016-2017年、カスティーリャラマンチャ大学ビジュアルアーツ&パフォーミングアーツのマスターを終了し、マドリードと京都を拠点に活動している。
相川敦子
今回のドキュメントアクションで初めてコンテンポラリーダンスに出会う。
自分の知らない世界に触れ、出会った「もの」「ひと」のストーリーを知ることに情熱をかけるライター1年生。
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