2013年09月29日
ダンスのうちそと
京都のアンダーグラウンドシーンを支えるライブハウスUrBANGUILD。音楽だけでなく、ダンス、パフォーマンス、映像、演劇もファイアーダンスも見れる稀有なハコ。そこで面白い企画を次々にうみだしていくミュージシャンでもあり、ブッキングスタッフでもあるryotaro氏は、「FOuR Dancers」なるダンスの企画も手掛けている。どういう視点でダンスを見て、そしてアートを見ているのか、つれづれなるままに聞いてみた。
何かが生れそうになる瞬間が一番面白い
伴戸:まずはryotaroの紹介から。
ryotaro:京都のライブハウス、アバンギルド(「UrBANGUILD」)でブッキングを担当しております。アバンギルドに出演してくれる人を探してきて、この人とこの人をこの日に合わせたら面白いんじゃないかという。
伴戸:ryotaro企画の中に、ダンサーが出演するものもあって、私も時々お世話になってます。
ryotaro:FOuR DancersとVelvet moon、Living Artsというタイトルの企画に、ダンサーが出演している。Living Artsはどっちかって言うとアカデミックなイメージでやっていて、Velvet Moonはもっと実験的。下手したら大ハズレもあるかな。でも大当たりもある。
伴戸:Velvet Moonのコンセプトは?
ryotaro:ローリングストーンズの「ロックンロールサーカス」っていう、サーカス小屋みたいな感じのテレビの番組が昔あって。それをやりたいと思ったのが、15,6年前。メトロ(京都丸太町にあるクラブ「Metro」)でちょっとやっていて。その後、アンデパンダン(京都三条にあるカフェ「café Independants」=アバンギルド店主の福西次郎氏がかつて店長をやっていた)とか、ここでブッキング始めるようになってから、コンスタントにやっている。
伴戸:ストーンズがいろんな人を集めてきて何かやるの?
ryotaro:うん。音楽だけじゃないイベントをやりたかったんや。最初は、メトロに企画を持ち込んで、その当時、自分がメンバーやった「雑種」っていうパンクバンドがホストバンドになって、ゲストをいろいろ集めて。その後、アンデパンダンでもやったけど、その当時のアンデパンダンの、何もないけど、何かやりたい人が集まってくるというシチュエーションがすごく好きで。
伴戸:何もないって、機材的なこと?
ryotaro:機材もそやし、ステージもなくてフラットで。自由な雰囲気で、カンパ制のライブも多かったし。その頃、僕はアンデパンダンのキッチンで働いていて、平日の夜やったら飲食で稼げるし、ノーチャージのライブやってもいいなって。いろんな人がいろんなこと持ち込んで、すごい面白かった。
3年くらい前から、アバンギルドで働き始めたんやけど、音響機材がすごくよくなった分、敷居がちょっと高くなってしまって。ここでライブに出るときは、音響使用費がチャージから取られる。うちはノルマがないから、使用費を出すと、10人20人のお客さんでは赤字がでる。出演者もリハーサルやったり、モノ作ったり、経費はかかってるわけやし、少しでもいいからギャラを出したいというのがあって。ここで始めたVelvet Moonは、音響を僕がやって、音響使用費をうかせて少しでもギャラを払ってる。
もう一つは、海外から来たアーティストに、少しでも払ってあげたいという気持ちがある。自分がヨーロッパに行った時にすごく思ったのは、音響がきちんとしているハコ(ライブハウスの意味)って、まぁないんだわ。よっぽどのところじゃない限り。それに、僕が関わっているインプロバイザーは「別にそんなの必要ないよ」って感じ。
伴戸:PAが?
ryotaro:そう。ナマ音で出来る人もいるし。実際やってみたら、みんな出来るやんって。ダンサーの場合は音を流すだけの人もおるし。そういう環境でも全然問題ないなって。それ以上に、面白いアイデアが浮かんで、そこからパフォーマンスする間に、お金のからみがありすぎるのは…。もっとすっと出来るようなこと。
ガチッと公演する時はきちんとやってくれたらいいと思うけど、うちのVelvet Moonでやる時は、いろんなこと試してほしい。次郎さん(アバンギルド店主、福西次郎氏)とよく話をするんやけど、何かが生れそうになる瞬間が一番きれい、一番面白い。出来あがった段階で、もう過去のものになっちゃう。作ろうとしている時の、ギリギリの段階が見れたらいいなと思って。もちろんそれが良かったら、本格的に作品としてやってくれたらいい。その段階では、ブッキングの立場で言えば、終わっている。
うちに出てくれるアーティストが常に何かを求めていて、そのサイクルとシンクロしたい。ハコが敷居を上げたら、シンクロしないのと違うかな。それは面白いハコじゃないよね。出来あがったものだけを発表する場、だけでは。
面白いダンサーと面白いバンド
伴戸:ダンサーが参加する企画でFOuR Dancersというのもあるよね。
ryotaro: Velvetは、音楽やパフォーマンス、ダンスいろんな出演者がいるけど、FOuR Dancersはダンスパフォーマンスだけでやりたいなというのがあって。
伴戸:それはなぜ?
ryotaro:Velvetとかっちりした公演の間みたいなもの、作れないかなと思って。一組30分。ダンサーさんに30分踊れって結構キツイよなって思ったりするけど、ダンサーは30分をどういう風に使うか、それぞれいろんなこと考えてくるところが、また面白い。踊るだけじゃなくて、歌う人もおれば、演奏も一つの動きである、みたいなことする人もいて、面白いこと考えてくれるなって。実験的になりすぎてもないし、きっちりかっちりしてる訳でもない。
もう一つ思うのは、面白いダンサーが多い。僕がミュージシャンやということもあると思うけど、面白いバンドは少ない。「昔見たよな、こういうの」みたいな、新鮮さを感じない。僕がダンサーやったら、ダンサーさんに対してそういう風に思うのかもしれないけど。
30分の枠を、ダンサーはきちんと考えてきて、何かをやろうとする。ミュージシャンは曲順変えるとか、それだけ。「よっぽどええもんやないとオモシロないで」って思う。FOuR Dancersは、uを小さくして、「ダンサーのためのイベント」というのもあって、それをかけてるんやけど。
伴戸:ダンサーのために。
ryotaro:4人のダンサーのためでもあるし、他のダンサーのためでもあるし。そういうイメージ。
伴戸:面白いダンサーがいる、というのは、何か新しいことをやろうとしているのを感じるってこと?
ryotaro:新しいのかどうかは、僕はダンサーじゃないから分からんけど、飽きひんというのがあるかな。人に「見られている」という意識が全然違う。ミュージシャンにしても、ライブなんやから人に「見られている」っていう意識を持ってほしいな。そういう意味で言ったら両方一緒なんやけどね。過剰に意識する必要性はないけど、あるか、ないかは全然違うし、センスもあるやろうし。単に化粧すりゃいいってもんでもない。そんなもん最初の5分くらいで飽きてしまうから。
前に見たパフォーマンスで面白かったのが、スイスのアーティストが、ターンテーブルを2台並べて、ゴムでつないで、ベロンベロンって音を増幅させるだけ、なんやけど、最初きちんとしたスーツを着て、やりながら徐々に脱いでいく。その人は自分がやってることが、すごく地味なことをよく分かってる。だけど、視覚的にも楽しませようとする意識があるから、そういうことやる訳やんか。めっちゃ面白かった。
伴戸:音楽とかダンスとか、狭い枠組みじゃなく、もっと広い視点で考えてる。
ryotaro:もちろん。一晩をどういう風に楽しむか、楽しませるか。ダンサーが使う音源がいいかどうか、すごく大きい。音楽であろうが、ノイズであろうが、いいか悪いか全然違うし、ミュージシャンの音が良くても、パフォーマンスとしていいかというところもあるやろうし。良い音楽やったら、いいパフォーマンスにはなると思うけどね。
面白いことが人を呼ぶ
伴戸:昔からどういうモノが好きやったん?
ryotaro:どこまでさかのぼるん?
伴戸:根源的なとこ?
ryotaro:昔から映画がすごく好きで、中学、高校生の時は、ベトナム戦争モンが多くて、「プラトーン」とか「フルメタルジャケット」とか。その辺の映画に70年代、80年代のロックがあって、好きになった。「コットンクラブ」って映画に、グレゴリー・ハインズっていうタップダンサーが3人の黒人のおじいちゃんとタップをするシーンがあって、めちゃくちゃかっこよくて、タップダンスを習いにいった。でも、僕が行った川西のカルチャーセンターは、生徒が宝塚(音楽学校)目指してる女の子ばっかりで、恥ずかしくてやめた(笑)。
学生時代にエスニック音楽が流行りだして、お寺で民俗音楽の演奏会をやるイベントのバイトをやって。その流れもあって、舞踏家の玉野黄一さんや栗太郎さんの公演を手伝ったり。その当時、僕はロックバンドしかやってなくて、舞踏も知らんかったけど、そういうものにすごく興味を持った。
だから、アンデパンダンがすごく好きになったんやろうけど。
それまでは、いわゆるライブハウスしかなかった。ライブやるんやったら、磔磔(京都の老舗のライブハウス)かメトロか。でも、メトロはクラブやから、基本真っ暗。パフォーマンスが見づらい。
アンデパンダンで遊びだした時は、機材も何もない。小さいミキサーくらいはあったのかな。その当時、elementsというバンドをやっていて、アルバムが出る時に「フルメンバーでやりたい」ってわがまま言って。そしたら次郎さんが「分かった」って。PA機材やドラムセットをみんな運んでやった。
伴戸:私もホールじゃなくて、もっと面白い場所で踊りたいと思っていた時にアンデパンダンに出会った。なんで、そういう場所って出来ないのかな。
ryotaro:それで言うと、僕は次郎さんの存在が大きいと思うよね。あの人はいろんなことに興味を持って、知識もある。いろんなアートに対して。音楽はパンクからクラッシックまで詳しいし。画家やから、美術に対してもすごく見識があるし。それでいて、知識をさらけ出したり、押しつけたりする人でもないし。あ、噂をすれば次郎さんや(と、ここで福西氏が偶然、表れる)
伴戸:そういう人がいるのは大きいな。しかも実際に場所を作ったはるわけやし。
ryotaro:本人を前にして話しづらい。(笑)
伴戸:音楽やそれぞれの分野の中だけで終わっているのは「いや」と思う人が、結構いたんやろうね。
ryotaro:次郎さんは、もう一つ、それを外に打ち出そうとしている。例えば、自主レーベルを作って、京都にアンデパンダンというハコがあることを、世界中に知らせるようになってたし。アバンギルドに移って、海外のアーティストもここを楽しんで、心地いいって言ってくれる。僕もそれは自信を持って言える。僕も海外に行ったりするけど、ここはやっぱり心地いい。何か生まれる要素がたくさんあるんじゃないかな。出来合いのモンじゃないやんか。全部、作ってるし。
伴戸:空間的にもね。(※大工の福西次郎氏とスタッフが手作りでアバンギルドの内装を手がけた)
ryotaro:そう。それはすごいなって思う。だから、面白い人が集まってくるやん。もちろん経営は大変やけど、僕は面白いことやってたら、人は勝手に集まってくると思ってる。だからいかに面白いことをするか、しつづけるか。そういう意味では、自分をさておいて、出る人には、「次こんなんやってみぃひん?」「こんなん見てみたいねん」とか、いろいろ言ってる。それが楽しくて仕方ない。それがバッとはまることもあるやろうし。無茶ぶりはするけど、やってみたら結構面白かったってこともある。
伴戸:好きなんやね。
ryotaro:そやな。
伴戸:音楽だけじゃなくて、全体的なものが。
ryotaro:うん。ここで、お芝居する人もいるけど、それも面白い。空間の使い方とか。いろんな人のいろんな視点が面白い。うちは、それにフレキシブルに対応できなかったらあかんと思う。例えば、音響にストイックになる人いるし、ステージ以外の空間を使いたい人もいる。それを「うちはステージだけで、音響ありでしか出来ません」ってやったところで、なんも面白いこと生まれへん。
あとはバランス、うちも家賃を払わなあかんし、お客さん5人で二日間おさえてたら「何を考えてんねん」って。内容が面白かったとしても。「こいつら続けたら絶対面白いな」ということも考えるけど、同時に、日銭も稼がなあかん。ここが経営なりたたへんかったら、僕も食っていかれへんし、僕がやりたいことも出来ひん。ブッキングについて次郎さんに言われたのは、「クオリティだけは絶対落とすな」ってこと。
伴戸:アバンギルド主催の企画と持ち込み企画で、毎日何かやってるの?
ryotaro:毎日何かある。食事を楽しんでもらうUr食堂もある(食堂の日に、無料のライブが行われることもある)。今度、Ur食堂で京響のファーストヴィオリンの人がバッハを弾いて、演奏の合間に次郎さんがクラッシックのDJをやる。次郎さんがクラッシックも詳しいから成り立つ。
伴戸:毎日やるってすごいなあ。ライブハウスってそういうもん?
ryotaro:毎日やりたいんとちゃうかな。京都は小さいハコが増えて、前からあるところもつぶれてへん。ある種過剰になってる。アーティストの取り合いみたいになってるとこ、あるんちゃうかな。
韓国や中国のアーティストとも関係を作っていきたい
伴戸:京都、日本の中にこういう面白い場所作っていかなあかん、っていう使命感みたいなものある?
ryotaro:使命感というか、そこまで野心的ではないけど。次郎さんがおっての話やから。でも、こんな場所を与えてもらって、面白いことしなあかんやろって。
好きっていうのもあるし、次郎さんとの関係性もあるし。自分が海外に行った時、いろんな人に迎えてもらって、すごい楽しいんやんか。海外の人がこっちに来たときに、きちんと迎えられるシチュエーションを作っておきたい。
もう一つあるのは、国際交流というか。韓国、中国、台湾のアーティストにもっと出てほしい。うちでやる海外からの出演者は、西洋人が多いやん。もっと韓国や中国のアーティストに来てもらいたい。それやったら、まず自分が行って、アジアでライブしようというのが今年の目標。
政治的にはもめてるやんか。そういう時にその国に友達がいるかどうか、すごい大きい。パフォーマンス・アートは、面白いか面白くないか、まずそこが重要。その後で歴史の話をしてもいいと思うし、だけど、それはみんなそれぞれの考え方があると思う。環境もあるから。その時に真摯に会話をすればいいと思うけど。会話すらないのはおかしいなと思って。
中国に住む日本人のダンサーさんが来たときに、中国のパフォーマンス・アートを見せてもらったら、面白い。韓国のアーティストも一度出てもらったけど、面白かった。それが普通になってほしい。そこで仲良くなりたいなって。それで初めてインターナショナルやと思うし。将来的には、アフリカぐらいまで行きたいと思う。日本のアバンギルドじゃなくて、アジアのアバンギルドになりたい、という野心はあるかな。
3日に1回くらい海外からメールが届く。ヨーロッパ、オーストラリア、時々アメリカ、カナダ、ニュージーランド。出演した人に聞いたとか、その友達に聞いたとかで、どんどん広まってる。内容がどうかはあるけど、海外からわざわざ来てさ、やらしてあげたいなというのはある。当然、たいしたギャラも払えへん。「それでもいい」って言うなら、組んであげたい。それで楽しんでもらえたらこっちもうれしいし。また、日本のアーティストがその人たちと仲良くなって、ヨーロッパやアメリカやオーストラリア行ったりすることもある。出会い系クラブというか。出会いの場にはなってほしいな。
海外との違いはお客さん
伴戸:私も海外行ったとき、よくしてもらって、この人たちが日本来たとき、これだけできひんなって思う。
ryotaro:日本はそこらへんな。まず、家が狭い。ドイツ行ったとき、笑えたわ。トイレが俺の家より広いやんって。
伴戸:気軽にやれるところもあるしね。来るなら、いくつか聞いてみるわって。
ryotaro:それで、人も来るやん。
伴戸:そうそう、来るよね。
ryotaro:根本的に違うのは、オーディエンスやと思う。昔は、「海外は絶対面白い」って錯覚を持ってて、24歳のときにNYに1人で行って、ライブハウスまわった。でもそれほど、面白くない。「なんや、たいしたことないんや」って。でも、こっち帰ってきて、お客さんの数が全然違う。
ベルリンにアメリカ人のダンサーと行ったときも、内容はアバンギルドで普段やってることと変わらへんけど、お客さんの数が違う。それに、お客さんがすごい楽しんでる。そこが大きい違いやと思って。向こうはチャージも安い。アバンギルドでもチャージを下げることを考えたんやけど、下げすぎてもどうかなと思って。もちろんギャラも払えなくなるし。それやったらクオリティを上げる方がいいなと思う。
伴戸:オーディエンスというところで、ブッキングを始めてから今まで、量的にも質的にも変わってきたと感じるところはありますか?
ryotaro:ちょっとずつやけど、お客さんの数も増えてる。出演してる人が「前に一緒に出てた人が、今日はどんなことするんやろう」って見に来てくれることもあるし。でも、あんまり身内だけで回したくないっていうのもある。
一般のお客さん、「一般の」って差別化をしていいのかどうか分からんけど。普段そういうのに接してない人が、もうちょっと増えてほしいなと思う。それに関して言えば、店ももっと門戸を開かなあかんというか。マニアックな店と思われるのはよくないし。普通に働いて、表現も何もしてない人が、もうちょっと増えてくれたらな。そこは大きな課題でもあるんやけどね。
伴戸:1月にここでやったとき、作品づくりを手伝ってくれたママ友が3人来てくれて。久しぶりの夜のお出かけ。この空間を見て「外国みたいやなあ」って言ってはりましたわ。
ryotaro:日本っぽくはないもんね。
伴戸:すごくドキドキして、新鮮な気持ちで楽しんでくれはりました。
ryotaro:僕は慣れすぎて。普通の人が来たときに、ある程度の違和感はあると思うけど、それを楽しんでもらえるようにしたい。例えば、受付の受け答えが、独特である必要はない。「来てくれてありがとう」って気持ちで、きっちりやらなあかんと思う。
面白いことをやり続けること。ryotaro:イベントが終わった後に、何かしらの会話ができてほしいなと思う。
伴戸:お客さんと?
ryotaro:お客さんと出演者、出演者同志とか。そういうのってすごく重要。いいイベントの後は、楽しいし。うちは飲み屋でもあるから、みんなお酒飲んで。「次何しようか?」って話が生まれる感じが、好きでたまらん。計画するときが一番楽しい。
アイデアって尽きないやん。しかも、いろんなパフォーマンス・アートやってると選択肢が増えてきて。これが音楽だけやったら、音の中だけで考えなあかんけど。そうじゃなくて、見られてるという意識があれば、何かしらのアイデアが浮かんでくるのよ。
マーケティングというか、今こんなんしたらウケるやろうという意識はゼロなんやけど、とりあえず面白い、ものすごい主観ではあるんやけど、なるべくアンテナは広げておきたい。なるべくね。広げられるだけ広げて、広げた上での主観という方が説得力はある。次郎さんがすごいのは、客観的なものを持ちつつ、だから、主観の説得力がすごいねん。これむちゃくちゃ面白いやろ、というところが追及していきたいところかな(笑)。
伴戸:ryotaroくんが表現者として大事にしてるもんって何?
ryotaro:自分しか出せないものを出したいってことかな。他の人が出せるんやったら、他の人にまかせたらいい。
ブッキングに関しても、僕じゃないと出来ないことをやりたい。もちろん次郎さん、アバンギルドというものがバックにあっての自分で、出来ることをやりたい。他のやつで出来るんであれば、他のやつがやったらええやん。…出来たりして(笑)。
伴戸:アートって、別の違う時点から出てくると思ってる人もいるけど、こういう場所で化学反応が起こりつつ、面白いことを試してみた、あかんかった、やっぱり面白しろかった、そういうものの積み重ねがあるはず。でもそういう人が、こっちを見たら「あやしい」とか思う。あやしいこと積み重ねて、生まれていくこともあるし。まあ、あやしいまんまの人もいるけど。あやしいのも突き詰めればさあ。
ryotaro:今、いい時代になってきた。多様性の時代。テレビっていう影響力が無くなって、自分が見たいと思うものがYOUTUBEで何でも見れる。あやしいものでもすっと見れる時代になってきてるから。僕は悲観してなくて。かといってアーティストが大金持ちにはなれないけど、小金持ちくらいには、どんどんなっていくやろう。
伴戸:世の中、ノリで貼ったみたいにきれいにできてないってことを知ることで、楽な気持ちになれる人って、いるんちゃうかな。
ryotaro:そうそう、いっぱいいるよ。
伴戸:こんな変な人がいるのかー!ってところで楽になる人がねえ。
ryotaro:面白かったら笑ったらいい。
伴戸:ため息があってもいいし、コップを置く音があってもいいし。
ryotaro:そういうところから入りこんでほしいなというところがあって。完全暗転が出来ないとか、冷蔵庫のノイズがうるさいとか、そういうシチュエーションやから、それほどストイックにならへんし、そこを逆手にとるというか。お客さんが時々、ガシャーンって何かこぼしたりしても、そこに気を取られるようなところじゃないやん。ダンサーもほんま、時々、訳わからんようなことやってたりする。そんな時は笑っていいと思うし。
目標というか、やり続けることちゃうかな。やり続けたら結果は出ると思うし。やっぱり続けるってことが一番難しい。始めるってことはそんなに難しくないけど。
伴戸:やっぱり良い場所だなとつくづく。場所もいいけど、いい人が支えてくれてはるから。面白いものを作ろうという人がいるからこそ、気持ちよく出来るって。
ryotaro:そういう意味では、次郎さんに本当に感謝してる。
伴戸:やっぱり人が場所を作るんやね。
(インタビュー:2013年2月21日@アバンギルド 聞き手:伴戸千雅子)
ryotaroが聞き手になって、アバンギルド出演者たちにインタビューしています。
UrBANGUILDのブッキング担当。早朝の三条大橋と猫をこよなく愛する。www.ryotaro.info
伴戸千雅子(ばんど・ちかこ)
演劇、バリダンスを経て、舞踏を始める。1998年からはダンスグループ「花嵐」のメンバーとして活動(現在は休止中)。近年はソロで、ミュージシャンや映像作家とのコラボレーションを行う一方、障害を持つ人、親子などを対象としたWSのナビゲーターをつとめ、様々な身体との出会いを通じて、ダンスの可能性を探求中。http://chikakobando.jimdo.com/
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