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【暑い夏14】A-1・2「新しい風を取り入れたい…」インタビュー

2014年08月5日

 ここ数年、私はフェスティバル会場で出会った方とのご縁をもとにインタビューしていく「わらしべ長者インタビュー」ということを続けてきました。今年はドキュメントチームの体制が変わったこともあって、“何となくお休みモード”だったのですが、印象的な出会いをきっかけに「メールでインタビュー」という新たなアプローチを試みようと思いつきました。出会いはいつも私に新たなチャレンジのきっかけを与えてくれます。ダンスのあるところに出会いあり…そんな言葉が浮かんできますね!

<ダンサーと俳優という2 つの表現ベースを持つ松村さん>

松村律子さん(32 歳)は、東京世田谷区在住。俳優とダンサーという2つの活動ベースを持つ彼女はA-1・A-2のアビゲイル・イエーガーのクラスに通しで参加した。普段は俳優とダンサーが混ざり合っているような作品に多く出演するという松村さんは「演劇作品では身体への意識が必要なもの」や「ダンス作品では身体だけでなく声も発するような」演劇とダンスがクロスオーバーする場に身を置くことが多い。ご自身が主催するダンスユニットでは「異ジャンルを組み合わせた作品作り」や「音楽ライブへのパフォーマンス参加」「振付」「ワークショップ」を行うなど多彩な活動を繰り広げている。そんな彼女がこのフェスティバルに参加したきっかけとは何だったのだろうか。

<新しい風を取り入れたい…>
「以前からフェスティバルのことは知っていたのですが、機会に恵まれず今回ようやく参加することが出来ました。普段は舞台に立つ仕事をしているのですが、なかなかレッスンに通う時間もなく、自分のパフォーマンスや身体について初心に戻って見直したいとの思いと、新しい風を取り入れたく参加を希望しました。また、10 日間という集中した時間も魅力的でした。」
舞台人として活躍する彼女だが、表現者としての自身とじっくりと向き合うことは時間的な制約もあって難しいという。彼女のいう“新しい風”とは、どんなものだろうか?ワークショップの前後で感じた変化には、どんなものがあったのだろうか。
 「今回受けたアビーのクラスは、とにかく丁寧に解析するように身体の使い方を知りたかった私にとってまさに希望通りの内容でした。A-1、A-2 と共に受講したことで、反復も含めより深く身体の些細な部分を感じることができました。3 日目あたりから歩く時の身体への意識の違いを感じ始めたことにも驚き楽しい発見でした。
 10 日間という期間は、集中できた時間ではありましたがとてもあっという間で、身体の使い方のセンスが足りない自分にとっては短いほどでした。それでも少しでも、特に普段パワーのみで押しがちなパフォーマンスをしてしまうので、そこにこの先言い聞かせることのできる方法に触れられたのは本当に良かったです。また場所もとても素晴らしかったです。自分の暮らしているところと離れていることもありましたが、開放的な空間で学べることはより自由に意識を向けることが出来ました。クラスに様々な目的で参加されている方がいることもよい刺激となりました。ステージ上ではなく、様々なバックグラウンドを持つ人の身体を見ることができる機会は少ないので、視野を広げる機会ともなりよき出会いとなりました。自分の身体と向き合う大切さとともに、身体とそこから生まれる動きが本当にひとりひとり違いその素敵さも改めて感じることができました。」

<普段とは違う環境に身を置くことの大切さを実感>  
フェスティバルへの参加を振りかえる松村さんは、身体そのものへの意識の変化やワークの進め方などに気づきを得る一方で、ダンスする環境についても気づきを得たようだ。

「今回の経験は、まず身体に関しては、使い方への意識を増やすことができたと思っております。また自身でワークショップを行うこともあるのでその進行の参考にもなりました。レッスン内容に関わらず経験したこととして、普段とは違う環境の中に身を置くことが自分にとっては大切なこととだと実感しました。いつの間にか視野を狭めがちなので頭の中をシェイクすることができ、具体的に活かしていくというよりは今回体験したことが自分の中で熟成されて今後のパフォーマンスに滲みだせればと思っております。」

<ダンスのための環境が整うフェスティバルに感激!>  

普段暮らす場所とは異なる環境で集中的に身体と向き合う時間は、松村さんにはとても有意義だったようだ。俳優にとってもダンサーにとっても基盤となるのは身体だが、それと同じくらい大切なのは自身を取り巻く環境や他者の存在だろう。

「ダンスのクラス以外にも、ダンサーを育てたり出会う場となる機会が用意されていたり、ただクラスを受けておしまいではなく記録などに残すことで自分が10 日間何をしてきたか振り返ることができることも魅力に思います。 何回もこのフェスティバルに参加している方もいるのが納得で、どのクラスを受けている方も刺激を受けているのを感じ、さらに多くのクラスを受講したくなると共にぜひまた次回も参加したいと思ったフェスティバルでした。」  
 松村さんの言葉からは、このフェスティバルでの体験が自身のパフォーマンスに大きな糧となったことだけでなく、「自分にとって大切なこと」を発見する機会にもなっていることがわかる。クルンとした瞳が印象的な彼女が生き生きとダンスや演劇のことを話して下さった表情は、彼女の体験した数日間を雄弁に語っていたように思う。言葉にならない想いが滲み出す・・・『これってまさにダンスそのものなんじゃない?!』そんなことを感じたインタビューだった。

 

撮影:下野優希
撮影:下野優希

jpgArts&Theatre→Literacy 亀田恵子(かめだけいこ) 大阪府出身。2005 年、日本ダンス評論賞での第1 席受賞をきっかけにダンス、アートに関する評論活動を開始。会社 員を続けつつ、時々ワークショップに参加。アートやダンスを社会とリンクしたいと模索する日々。

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