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【暑い夏15】 all「ダンスとは」インタビュー

2015年07月1日

 私は言い方によっては、「運動をすることを拒否して生きてきた」。例えば「自転車で冒険にいこう」と言われれば嬉々として出かけるが、「サイクリングに行こう」と誘われたらたちまち苦手意識が芽生えてくるのである。つまり、体を動かすのは苦痛ではないが、その目的が体を動かすこと自体であることを受け入れにくいのである。そんな中でもダンスには特に苦手意識を持っていた。自分で踊ることはもちろんだが、ダンスを見るということにおいても、どんな視点でどんなことを見ればいいか分からなかった。神戸のKIITOで「第20回 京都国際ダンスワークショップフェスティバル」のパンフレットを手に取った時はダンスの好きなともだちに教えてあげようと思って持ち帰った。でもなぜかパンフレットを読んだ時に、ふと参加しようと思いたった。ビギナークラスがあったせいなのか、または身体の捉え方についての文章にひかれるところを感じたのか今になってもはっきりとは分からないが、何かピンと来るものがあった。パンフレットの隅に「暑い夏ドキュメント・アクションメンバー募集」の記事を見つけて応募したのは、私にはいまいちよくわからないダンスというものを人はなぜするのか、どういった経緯でこのイベントに参加しにくるのか、そしてこれからどのように関わっていくつもりなのか聞いてみたくなったからである。
 インタビューは前述のように3つの質問だけが決まっており、どんな人に話をきくかやいつきくかなどは何も決めずに参加者であればランダムに声をかけてみる形式をとった。声をかけたらみんな少し躊躇するような、警戒するような表情なのだが、話をきいていくうちに3つの質問以外の話を聞かせてくれたりして心を開いてくれる感じがした。10人の人に話を聞くことができたが、時系列に記すことにする。

質問1 あなたはなぜダンスをするのですか。どのようにしてダンスをするようになりましたか。
質問2 なぜ今回のワークショップに参加することになったのですか。
質問3 これからのダンスとのつきあいかたについて教えてください。

サノさん
5月2日 マタン・エシュカー ビギナークラス前
京都在住の会社員サノさんのダンス歴は3、4年で普段はコミュニティダンスをしてます。
50歳を過ぎた頃、となりの奥さんが太極拳を始めたと聞いた時に年を取る前に準備として何か身体を使うことをして行きたいと思ってコミュンティダンスを始めました。京都国際ダンスワークショップフェスティバルのワークショップは3年目の参加です。普段続けてるダンスだけでなく、自分を高めるために参加しているそうです。今年はビギナークラスのみ受講しているため、気楽に参加できているとのこと。ビギナークラスは毎回担当講師がかわり、1回2時間で完結する形のクラスになっています。内容がビギナー向けということに加えて、前日のクラスを踏まえて進んで行く形ではないのでプレッシャーが少ないのです。踊ることが好きで楽しいと思っているのか自分でも分からないけど何年も続けられているということはダンスが好きなのだと思うし、これからも続けたいと答えられたのが心に残りました。
 
 誰かが何かを「好き」と言うのを聞いたとき、そこには強い気持ちがあるように感じる。「自分でも分からない」という表現を聞いたとき思い浮かんだのは、ある整体師さんに以前聞いた言葉だ。「どこかが痛かったり調子が悪い時には、それを感じるけれど、忙しい毎日の中で体調に問題がない時は自分のからだにあまり注意を払わない。身体の不調に関して何も思わずにすごせているということは快調な証拠です。」サノさんの場合には踊るということが生活の中に組み込まれていて自然なものなのだろうと思った。

トゥーザ
5月2日 マタン・エシュカー ビギナークラス後の飲み会にて
トゥーザは京都の大学生。ダンス歴はタップダンスは4年、またこのフェスティバルのプロデューサーである森裕子さんのクラスには1年程通っています。現在おつきあい中の方が昨年のワークショップに参加した際にチラシを見せてもらってこのフェスティバルについて知ったそうです。自分のカラダに対するコンプレックスや苦手意識があり、それを克服しようと色々なダンスのワークショップに参加してきました。裕子さんのクラスにも参加していて、今回のワークショップに参加しています。コンタクト・インプロビゼーションをやってみて自分の身体への無頓着さに気付き、続けて行くにつれて自分の身体をよりよく意識できるようになったといいます。コンタクト・インプロビゼーションは形から何かを知るのではなく、逆に知ることから始まるダンスだと思うと教えてくれました。普段参加しているクラスは雰囲気や一緒に参加している周りの人がすごく心地よいし、また身体についてもっと丁寧に向き合っていけるのではないかとの思いから続けて行きたいとのこと。

 インタビューさせてもらった時は飲み会前にすでに飲んでから来ていたためご機嫌なムードを漂わせていたが、いざ話をきいてみるととてもまじめに丁寧に答えてくれた。後で知ったのだが、ワークショップは予約をせずにその日来てキャンセル待ちなどしながら受講していたようだ。話し方などから周りの人に気配りのできる人であることは感じたが、真摯に自分自身と向き合っているのがとても印象的だった。

ヒナコさん
5月3日 ノアム・カルメリクラス前
ヒナコさんは私がビギナークラス以外に受講していたマタン・エシュカーのボディコンディショニングのクラスでも通訳をしてくださっていました。東京からの参加で普段は俳優さんです。ダンス歴は2年で主にコンタクト・インプロビゼーションをしているとのこと。以前ダンサーと仕事をすることがあり、いつかダンサーのように動けるようになりたいと思ってダンスを始めました。このイベントへの参加は2回目でコンタクト・インプロビセーションのワークショップを受けたいと思って参加するようになりました。ダンスを始めてみると健康になったと感じたそうです。自分の身体を前より深く理解していると感じるし、問題が解決できるようになってきました。「今後も勉強を続けていきたい。ダンスを通じて自分のこと、人生のことを学べる。また素敵な人に出会える。今後はコンテンポラリーや違う種類のダンスのワークショップにも参加してみたい。」と語ってくれました。
 
 ヒナコさんに関して印象に残ったのは、トム・ウェクスレールのビギナークラス後のトークイベントで、「どうやったら、何をしたらあなたのような強さを身につけられますか?」という質問をしていたときである。このレポートでは割愛しているが、ヒナコさんにはいろいろと質問をしてみて、行動派でなおかつまっすぐな心をもった人だな、という印象を受けた。その印象のままの彼女の魅力がこの質問でも感じられた。

富松さん
5月4日 チョン・ヨンドゥクラス前
京都のダンサー富松さんのダンス歴は高校の時に遡ります。小学生の時にミュージカルに出演したことがきっかけで舞台にたつことを意識したそうです。近くに演劇を学ぶところがなかったのでダンスを学び始めました。痩せたい、身体を鍛えたいというのも理由の一つで、ジャズダンス、ブトウ系、コンテンポラリーダンスなどを学んできました。このワークショップには2009年から参加して、今回で5回目の参加です。以前ヨンドゥ氏の舞台を見学をかねてお手伝いしたことがあり、その作り方に興味があったのと、またアジアのダンス関係の人とあまり会うことがないので、ヨンドゥ氏のクラスをとるために参加していました。今後は出演するだけでなく、アカデミックな形でやっていきたいので、色々と勉強したいと語ってくれました。ダンスの動きを見せることに重点を置くのではなく、空間も含めた舞台作り、広義的なアートのようなパフォーマンスをやりたいという目標を話してくれました。
 
 富松さんにインタビューしようと話しかけた時、ちょっとだけならという返答に手短に話をきこうと思っていた。話をきつにつれ、彼女のダンスへの熱い思いが溢れ出してくるのを感じた。私のほうにはダンスとは何だろうという疑問を解決したい気持ちがあったので、長々と熱く語り合って、とても楽しい時間を過ごすことができた。彼女の場合には、「自分とダンス」の先にある「パブリックに向けてのダンス」のために自分はどうすべきか、という視点が確かにある。次に会う機会があったらそこに重点をあてて話をきいてみたいと思った。

カンノミツコさん
5月4日 15:30ころ大広間にて
仙台から来ていた菅野さんは会社員をしながら作品を作ったり、出演したりしながら演劇にかかわっています。ダンスのことはよくわからないけれど、色々やってみて興味のあるものを続けていこうという気持ちで、ダンスとの付き合いは4年になります。今回の参加は、仙台で作品作りをされていた時に関わるようになった村本すみれさんのスタジオを訪ねていた時に話題になったのがきっかけです。カンノさんはダンスをしていくことによって身体を鍛え上げられたといいます。今までのダンスと全く違い、やればやるほど身体がかわっていくのが面白いのだというこです。また力をいれなくても色々な動きができるのが面白いといいます。今のダンスとの関わり方は「実際に自分で踊ることとしてのダンス」と「自分の作品に取り入れる要素としてのダンス」があり、それを交互に繰り返しているかたち。今後はどちらがどう行き着くのか分からないけれど、作品を作るために「体」や「動き」を感じることが必要と感じるとともに、自分自身の身体がどこまで変わるのか知りたいと話してくれました。

 カンノさんとは彼女がノアムのクリニックを受けるか迷っていた時に会話して、そのままインタビューさせてもらった。自然体でソフトな物腰はインタビューして返ってくる言葉からも感じられた。そんなナチュラルな彼女がどんな作品を創っているのか、いつか是非見てみたい。

ケンタロウさん
5月5日 ノアム・カルメリクラス前
大阪の会社員、ケンタロウさんのことはインタビューの前から何度か見かけていました。クラスの前にヘッドホンで音楽を聴きながら小刻みにダンスを踊っているのが印象的でした。どういったジャンルのダンスだろうというのも気になっていましたが、何となく話しかけにくい雰囲気があり、躊躇していました。前日のトム・ヴェクスレールのクラスを見学に行った時、ケンタロウさんの姿がありました。このクラスは特に激しい動きがあったり、ジャンプなどもあって見ているだけでも興奮が伝わってきました。クラスが終わった後、そんな雰囲気もあり、ケンタロウさんに声をかてインタビューのお願いをしたのでした。ケンタロウさんはもう10年以上ロッキングダンスを続けていて、コンタクト・インプロビゼーションは昨年から始めたそうです。もともと音楽を聴くことと体を動かすのが好きで、ダンスは身体が変わってより繊細に自分の体を意識し、動けるようになるのが心地よいそうです。このフェスティバルのプロデューサーである坂本公成さんと森裕子さんの大阪でのイベントに参加したことがあり、それからは普段のクラスも受講しています。イベントではノアムさんのクラスは特に刺激を受けているといいます。コンタクト・インプロビゼーションは体の感覚をきいて、また相手があってこそのダンス。やってみて自分の知りたいことが少しずつ分かって来たので今後はより深く掘り下げて行きたいと話してくれました。

イトウアヤさん
5月5日 トム・ヴェクスレール ビギナークラス前
普段は会場のひとつである京都芸術センターのごく近くで働くアヤさんはジャズダンス歴10年。知り合いの子供がダンスを習っていたことから誘われ,やってみようかなという気持ちでダンスを始めたそうです。2年前からはヒップホップも始め、細かな動きや考え方の違いで全く違うものになるんだなと気づいたといいます。ワークショップへの参加は今回で3回目です。会社が近いので他の公演を見に来た時にチラシをみて、ダンスをする時間が制限されて来たなと思っていた時期でもあったのでもっと踊るために自分からどんどん動き始めたいと思い参加したのが初めです。このワークショップへの参加はとても勉強になっているということです。振り付けにあわせて体を動かすダンスばかりをしてきたけど、体の使い方や自分の体を自分で探る方法があるということを知って、体の使い方を普段から意識するようになったといいます。体を分析する方法を知ることができたと生き生きと話してくれました。今後のダンスとの付き合いを聞いたところ、自分がどのような状況になったとしても踊ることは続けていきたいとのこと。心身ともに何かにとらわれることなく自由に踊れるようになりたい…。ダンスを通じていろいろな人とつながれるような気がして、ワークショップに参加したことは新しい発見をもたらしてくれたと教えてくれました。
 アヤさんとはマタンのクラスで度々一緒になることがあったのでダンスに関係のない話もいろいろ聞いてみた。自分よりひとまわり以上年下の人と話すことはこれまでほとんどなかったので、感慨深いところがあった。職業も年齢も様々な人たちと知り合い、話をする機会はこのワークショプの素晴らしいところだと感じる。

まどかさん
5月9日 ノアム・カルメリ ビギナークラス後飲み会
私のこのイベントへの参加は4月の「英語でダンス」クラスをのぞいては5月2日にマタンのクラスが最初になりますが、そのクラスの前に話しかけたのがまどかさんでした。その時にはまどかさんが普段ベリーダンサーをしていること、鹿児島から参加していることなど聞けただけでクラスが始まってしまったので、またの機会にインタビューさせてほしいとお願いしてからこの日まで話をする機会がありませんでした。この日は飲み会に参加するか迷っていましたが、まどかさんのお話をききたかったので、まどかさんも誘ってお話を聞くことができました。飲み会に参加していたメンバーとの話の中でまどかさんとは出身の大学が同じであること、年齢も1歳違いであることがわかりました。そんなまどかさんは福岡のある美術館にあったフライヤーを見て今回のフェスティバルに参加しました。複数のクラスに参加しましたが、講師の先生たちが教えるプリンシパルは一緒なのかなと感じているとのことでした。10日間とても色々なことが勉強できて、来てよかったと充実を伝えてくれました。飲み会でも積極的にノアムと話をしているのが印象的でした。自分でもジャンルレスなダンスをやっていたけど、体から生まれる動きに繊細になれたのでそれを追求したダンスをやっていきたいとのことです。
 自分がやりたいことに素直になって、それを追求することの幸せを彼女からは感じた。それによってもたらされる結果からではなく、自分の決めた道を進むことが彼女の内なる自信を生んでいるように感じた。

イダユウコさん
5月9日 ノアム・カルメリ ビギナークラス後飲み会
転職したばかりというイダさんは会社に勤めながら、フィギュアスケートも教えています。愛知からの参加です。イダさんからはなぜダンスをするのかという質問に、ダンスすることでストレスから解放され、心地の良いリセットされた状態になるからという回答がありました。このファスティバルには5~6年前からとびとびに参加しているとのこと。ダンスを長らく休んでいた時期、体が動けない、いごごちの悪さを感じたといいます。そんな経緯からも今後もとぎれることなく長く続けていきたいと思っています。今はベリーダンスもしていて、男性のいない空間で女性であることを感じることの喜びでや、コンタクト・インプロビゼーションとは違った角度での自由さ、ルールにしばられないことを楽しんでいるそうです。

板倉佳奈美さん
5月9日 ノアム・カルメリ ビギナークラス後飲み会
京都在住の佳奈美さんは看護士さんです。ダンスは10代後半から20代にわたってジャズダンスやモダンバレーをしていましたが、20年のブランクを経て4年前から再開し、今はエアロビクスの指導もしています。小さい時からバレエを習いたかったのですが、大学生の時にフィットネスクラブでダンスのレッスンに通うようになりました。子育てなどのためダンスからは離れていた時期がありましたが、ダンスの楽しさが忘れられなかったのと、子供が成長してきたので自分の楽しみも育ていきたいと思って再開しました。自分の好きなことをしていると家のなかもうまくまわり、子供との距離感もうまくとれるようになったといいます。仕事柄、健康でいられることは当たり前のことではないということを目の当たりにし、やりたいことをやっていくことが大切なのだと感じています。このワークショップには初めての参加ですが、以前ダンスを習っていた森裕子先生との再会がありました。ダンスを再開して舞台に出るチャンスもあり、色々な先生が教えていることを改めて聞いてみたいと思って参加すること決めたそうです。ダンスは死ぬ間際までできるだけ長く続けたい、続けていくことで少しずつでも成長して行ける部分があると思うと話してくれました。
 
とてもチャーミングな印象の佳奈美さんは、さらりとした口調だが熱い思いを語ってくれた。

 インタビューをしてみて思ったのは、みんなダンスするためにダンスしているのではなく、自分と向き合うためにダンスをしているのかなということである。それは自分の身体への意識であったり、続けることによって得た成長であったり、また自分の身体や意識の先にある他人の身体や意識であったりするのであろう。ダンスは、自分や他人の存在とのコミュニケーションのひとつの方法なのである。私はマタン・エシュカーのヨガのクラスに続けて参加したが、そのなかでも心に残ったのは、意思で身体を動かそうとするのではなく、身体の状態を観察するということである。また呼吸を通してヴァーユを意識することである。このメソッドによって驚くような発見があった。自分の身体への意識の仕方がかわり、無意識に自分の身体に変にかけている力に気付くことができた。またそれを取り除く術を知ることができたように思う。そしてもっとも興奮したのは、パートナーワークの時に得た発見である。戦士のポーズをするのだが、このとき足は地面を強く押しプラナバーユ(みぞおち付近にあるエネルギーのポイント)を意識して呼吸する。そろえて上に伸ばした手の指をパートナーと組んで下向きに押してもらう。すると本当に不思議な現象なのだが、自分の身体の中を何かがまっすぐに通って行くのを感じることができた。これがいわゆ「気」と呼ばれるものなのかもしれない。さらに驚くことは、自分がポーズしている時のみならず、パートナーとして補助している時にも、パートナーの身体をこの気が通っていくのを感じることができたことである。確かに「来た!」という実感がある。ヨガとダンスではジャンルは異なるが,このようなコミュニケーションの中での感動のために人はダンスするのかもしれない。

撮影:すやまあつし
撮影:すやまあつし

 

 忙しいスケジュールのなかで時間をくださったみなさんに、またこのスタッフの役割をする機会を与えてくださったフェスティバル実行委員会の皆さんにこころより感謝します。色々な人との素晴らしい出会いと、また多くの気付きのある充実した時間でした。本当にありがとうございました。

kanako_sone曽根加菜子(そね・かなこ)ダンスは今回のワークショップに参加したことでやっとビギナーに。スポーツ全般において疎遠であったが、1年前からヨガとエアリアルティシューを始め、まばらに続けてい          る。普段は神戸で会社員をしている。

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