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「踊りに行くぜ!! IIセカンド」の挑戦 <再掲載>
2011年02月20日
よりによって巡回公演の締めくくり、意気込んで臨んだ東京公演がそのままお流れになるはずがないと思っていたら、やはりやってくれました。
中止となった東京公演の、振り替え公演が、5月13日、14日に行われます。その間のことは、スタッフブログ「うろうろ日記」にて。
そして、お見逃しの方も、そうでない方も、どうぞ足をお運びください。
「踊りに行くぜ!! II」東京公演 振替公演
日時:2011年5月13日(金)~14日(土)
会場: アサヒアートスクエア
URL:「踊りに行くぜ!! II(セカンド)」
■ 上演作品
「終わりの予兆」
作・演出・構成:上本竜平/AAPA
「CANARY-”S”の様相」
作・演出・構成・振付:前納依里子
「カレイなる家族の食卓」 作・構成・演出:村山華子
※ 以下の記事は、伊丹公演に先立ちリリースされたものです。
コンテンポラリーダンスは今、日本に入って来て以来の移行期に入っているのかも知れない。日本でコンテンポラリーダンスを牽引してきた機関が、10年を迎えるのと前後して方向性を変え、昨年10周年を迎えた「踊りに行くぜ!!」も「IIセカンド」と称して、次の試みを始めている。3月4日、5日にアイホールで行われる伊丹公演を控え、ディレクターの水野立子氏に、IからIIへの移行と制作プロセスについて話を聞いた。+「IIセカンド」へのリニューアル、あるいはバージョンアップは、どのような状況を踏まえて、考えられたのですか。
水野:IIでは、完成した作品を選ぶのでなく、作品づくりを支援します。創作をアーティストだけの責任とするのでなく、地域の劇場、主催者、製作者などが協力してサポートしてゆくことができないかと考えたからです。
数の上でも実感としても、「踊りに行くぜ!!」は「コンテンポラリーダンス」の日本での普及に一役買ったと、自負してはいます。一方で、危機感を感じていることもあって、一番わかりやすいのは、お客さんが減ったことですね。
+「コンテンポラリーダンス」の催し全般で、そうでした。なぜだと?
水野:私なりに考えると、一つには「王様は裸だ」と言えるようになったのだと思います。初期のコンテンポラリーダンスは、難解でも理解すべきものだと思われていました。それが、全体量とともに質が伴わない作品も増えていった結果、化けの皮がはがれたのではないかと。正直言うと、初めて観に来て、「つまらないからもういい」って来なくなった人も多かった。これは関係者として、きちんと受けとめなければならなりません。では面白くするためにできることはと考えた時、創作からの支援をと。というのも、創作に関して、日本はかなり厳しい環境なんです。特にまだ有名でない人は、メンバーを集め、時間と場所をやりくりして練習をする。でもそれは他の仕事なりに細切れにされた時間であって、創作に十分な集中は確保されない。そうして作った作品を見て「面白くない」と言われちゃう。これでは育っていきようがない。
+コンテンポラリーダンスに突きつけられる「つまらない」の質、その前提となっているジャンルへの要求は何だろう、とも思います。サイトに「強度のある作品」とありますが、水野さんが求めるものは?
水野:ここ数年で急激に増えたと感じるのは、ブログに喩えられるような、私的な感想を並べただけ、あるいはテクニックで作ったダンスを継ぎ接ぎしたような作品です。伝えたいことが何も感じられない。私はそれを面白くないと呼ぶ。1人でやればいいと思うわけ。ダンスに限らず、作品であれば、「見せたい」というものがあって、それをあれこれ手をつくして世に問うわけでしょう。ダンサーと作家は違うということは前から言われてきましたが、自分個人の名においてこれを伝えたいという作家性のようなものが足りないのでは。内容は何でもいいんです。個人の視点を突き詰めた挙げ句に、ミクロの世界から大きな世界に突き抜けることもあるし。例えば今回、沖縄公演のアフタートークで、年輩の女性がタケヤアケミさんの作品に対して、「自分の姿を見ているようだった」と伝えてくれた。ああいう高度に抽象的な作品でも、見る人が見たら深いところに届く。それは、掘り下げが浅ければ起こりようがないと考えるんです。作家は、人の何倍もどんどん深く地下に掘っていかないと。最終的に言いたいことが出ないし、それがわからなければ共感のしようもないと思います。
+今回、創作支援を始めて数ヶ月ですが、その中で、具体的に見えてきたことはありますか。
水野: まずこれまでと一番違うところは、未完成の作品にサポートをしてゆくところです。なので、作っている過程に口を出します(笑)。「スポンサーは金だけ出して口を出すな」と昔から言われていますが、口の出し様だと思います。自分の好きなように作品を変えさせるのはいけない。でも作家の意図が効果的に伝わっているのかのジャッジは有効だし、必要だと思います。白いカップを「赤く見せたい」んなら、「見えてないよ」と真実を言ってあげたほうがいいでしょう。その部分には口を出させてもらうと、最初に伝えています。これだけ時間とお金をかけて、彼等がやりたいように作品ができなければ仕方ないでしょう。
一方で、いい意味で無責任にならないといけないとも思いました。これまでは、よくも悪くも責任は主催者にある。完成した作品を「これは面白い作品んだよ」って持って行くプレゼンターでしたからね。IIは、環境を作り、稽古場、巡回公演ができる体制を作る。中身に関してはアーティストの責任でやってもらう。私も見ていないものを出すわけだから、つまんないと思われるかもしれないけど、でもそういうプロジェクトなんだということを、理解していただきたい。
もう一つ、今回やって結果的にすごく良かったのは、ダンス・イン・レジデンスです。この言葉も流行らそうと思っているんですよ。恐らく3組とも東京の人たちで、カンパニーじゃないことも関係しているかと思いますが、普段はみんな別の仕事があって、平日だったら2、3時間、土日でも揃わない。まとまった創作の時間と場所もないんです。例えば村山華子さんは、12月に1週間和歌山県の上富田文化会館で滞在制作したのですが、彼女は美術から来ているので、道具や装置がたくさんある。衣裳、映像、道具、すべて自分で考えているんですね。それらを使っての稽古を、東京では電車でいちいち運ばなければならず、スペース的にも限界があったのですが、上富田では1週間でそれらを使っての舞台演出の試しが全部できたんですよ。そこはテクニカルスタッフがホールの職員で、皆クリエイションに積極的。一週間まるまるついてくれました。開催地にはなっていないけど、制作でこんな風に協力してもらえる場所がある。全国にもっと増えればと思います。また、上本竜平さんは、鳥の劇場で行ないました。”いんしゅう鹿野まちつくり協議会”っていうところが、空き家活性化で運営している民家に一週間滞在させてもらいました。鳥の劇場も創るっていうエネルギーがものすごくあるところ。滞在もできるし、劇場とスタジオがあるから集中できる。最後の日にショウイングをして、鳥の劇場の方々と街の人とも積極的な意見交換をすることができました。
+これまでも、クリティカル・レスポンスや、昨年の「アーティストの主張」大会など、観客と作品をつなぐ言説のユニークな場を設けてきましたね。今年は?
水野:公演の後、アフタートークでなく、「本音トーク」というのをやります。これまでのアーティストトークは素晴らしい作品を創ったアーティストの話を拝聴しましょう、作品について教えてください、っていう設定が多いですよね。そうじゃなくて、「どうだったの? 作家たち」っていう切り口です。作家も、どれくらい自分のやりたいことができたかが問われるし、お客さんにはどう観えたかということを聴く。すべてにおいて本音です。価値があるかどうかはわからないという状態でのトークをしたいな、と。鳥の劇場でやった後に、お客さんが「こういう場に参加できることが楽しい」って言ってくれたんです。
+コンテンポラリーダンスの催しが、価値の発見に参加する場だということが浸透してゆけばいいですね。ありがとうございました。
(2月14日@大阪)
「踊りに行くぜ!! II」伊丹公演
日時:2011年3月4日(金)~5日(土)
会場: 伊丹アイホール
URL:「踊りに行くぜ!! II(セカンド)」
A ダンスプロダクション・サポートプログラム
「終わりの予兆」 作・演出・構成:上本竜平/AAPA
「カレイなる家族の食卓」 作・構成・演出:村山華子
B リージョナルダンス・クリエイションプログラム
「SOSに関する小作品集:パート1」作・構成・演出・振付・出演:タケヤアケミ
地元作品
「私たちは存在しない、ブルー」 作・中西ちさと(ウミ下着)
※5日(土)のみ終演後 アーティスト・トークあり
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