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【暑い夏10】講師インタビューVol.19 ヌノ・ビザロ
2010年07月29日
聞き手・インタビュー構成:中村まや
通訳:三柳竜子
NUNO BIZARRO ヌノ・ビザロ (フランス/アンジェ)
アンジェ国立振付センター附属コンセルバトワール講師。リスボンにてコンテンポラリーダンス、即興を始める。’90年よりポルトガルの数名の振付家の作品に参加。近年はベルギー、ドイツ、フランスにてグザビエ・ルロワ、ボリス・シャルマッツ、メグ・ステュアート、マチルド・モニエなどの現在ヨーロッパで最も先鋭的な作家の作品に出演し、エマニュエル・ユインとはいくつかのコラボレーション作品を創作している。フェルデン・クライス・メソッドに精通している。
インタビュー・ウィズ・ミスター・ビザロ
4月29日、東山でのワークショップに参加しました。
ねころがって、体のどこに圧力がかかっているか、重心はどこにあるかと探ってゆく。少し体を動かすと、体のどの部分が動き、どこに重心が動くかが意識される。些細な動きにも注意を払い、体の動き方に気づいていく、そんなワークショップでした。
ワークショップの後、ヌノ・ビザロ氏にインタビューをお願いしました。
撮影:久保花子 |
+ レッスンをありがとうございました。「動く瞑想法」といったことを言われていたかと思います。体の中の声をよく聞くということだと思うのですが、初めての場合だと、すごく難しく感じることもあると思うんですね。どういう事に気をつけて受けるのがおすすめですか?
ヌノ いきなりエンドから始まりましたね(笑)。どうやったらその目的、つまり最後の部分にたどり着くかを聞く質問ですね。
体の構造、感覚、そういうところに指標をおいて、最初は探ってゆきます。体に対しては、難しい言語ではなく、感じれば、問題はありません。圧力、支え、体の構造などが大事になってきます。体のパーツの様々な配置に注意を払う、ということです。
+ 注意する?
ヌノ そう。ワークショップでは、やれといわれたことを実行するというよりは、自分自身の体の中で何が起こっているのかを感じる。そういうものだと思うし、私の仕事はそれを助けることです。一回この経験をしただけでは、自分の中で何が起こっているのか、はっきりしてこない。だから、経験を重ねていくのが大事なんだと思います。「感じる」ということを少しずつやっていくにしたがって、ピアノの調律のような感じで、すこしずつ自分の経験になって実行していけるようになる。とすると、「瞑想法(meditation)」という言葉はどうなのかな。翻訳の問題かも知れませんが、実際は「気づき(awareness)」ですね。
+ 「瞑想法」というと、感情や、心に目を向けることのような感じがします。しかし、ワークショップを受けてみて、私はもっとテクニカル、あるいはフィジカルな印象を受けました。
ヌノ 言葉の意味はさておき、そこを通過するのは確かで、具体例を挙げると、骨の存在は感じやすいので、骨の周りに集中して、自分を感じていくといったことをやってみる。
+ 骨の感じで、自分の体の中で何が起こっているかを知るのですか?
ヌノ 物事がこういう風に起こってほしいとか、何かを狙って動かすといったものでもないんですね。ひとりひとり違うし、色んなやり方があるから。あることをすればこうなる、というような定理があるんじゃない。ひとつの方法を使って、みんなでそれぞれ自分なりに感じていくんです。
+ それが、フェルデンクライス法なのですか?
ヌノ 僕が話しているのは、方法の一つとしてのフェルデンクライス。フェルデンクライスの定義を確認したほうがいいのかな? なら、動きによる意識の覚醒(awareness of moving)としておこう。ワークショップの目的は、みんなを手助けすることです。それを通して、それぞれの人が自分なりのやり方にしたがっていく。そうすることによって、どうやって意識を目覚めさせていけばいいかに気づいていく。だから、知識で理解するのではなくて、五感を通してわかるということだと思います。他にもやり方はあります。
撮影:久保花子 |
+ もうひとつの質問です。ヌノさんは3度来日し、日本人のダンスを見てこられました。その中で、日本人のダンスの良い点と、ここのところをもう少し伸ばせばいいなぁっていう点を教えてください。
ヌノ 日本で教えるときは、初心者に教えることが多いので、ひとりひとりを長い期間見守ることは、なかなかできません。だから、それぞれがダンスを続け、私が教えたことを継続していってくれているのかはわからない。私のワークショップの後、中級者、上級者というように授業を受けていっているのかもわかりません。ただ、初心者を見ていると、すごく注意をして聞いてくれていると言うのを感じます。何かを始めるというときは、わりと注意散漫になりがちなのに、みんなすごく集中してくれているからびっくりします。また、どこか僕の出身地のポルトガルの80年代のような精神のあり方も感じます。常に続けていくという体質です。休憩中も復習をしたりして、みんながんばっていますね。あと、僕にとっての外国語ということもあるけれど、言語で理解しようとしても限界がある。だから物事を一般化しないで、ひとりひとりを見ていくと、それぞれが割りとはっきりとしたビジョンをもって取り組んでいるように感じられる。それは日本のダンサーを見ていていいなと思うところです。
悪いところは……、思いつかないな。なんていうかな、こう、自分自身を揺るがされるような質問ですね。
+ 最後に、「暑い夏」15周年と今後に向けてコメントをお願いします。
ヌノ もちろん! おめでとうございます! 将来的に何か改善できるところと言うなら、先の質問と関係して、昨年アンジェとのエクスチェンジのオーディションクラスを受け持った時、考えたことを思い出しました。まず、アンジェの奨学生になりたいという人の意図を理解するのは難しいものでした。ひとりひとりを見ていると、コレオグラファーになりたい人、選考に残りたい人、ただ踊り続けたい人など様々でしたからね。それは、ワークショップの間に複数の違う分野のものが混ざっていた上に、内容量がものすごく多かったことも関係しているのでは? 時間と空間の点においては、もう少し改良点があると思います。また、振付を作るときに、参加者が話し合って作っていけるような形にもしたいと思いました。自分と振付との関係性がそれぞれはっきりしていれば、それぞれ自分がどういう方向に向かっていきたいかを確認し合ったり、お互いを見合って改良点を見つけたりできますよね。振付というのはそれぞれが個人でやっていくものですから。
+ ありがとうございました。
ヌノ どういたしまして。こちらこそ。
(2010年4月29日 東山会館)
中村まや(なかむら・まや)
2005年ペルー留学中、たまたま暗黒舞踏に出会い、コンテンポラリーダンスに興味を持つ。現在は商社で働きながら、ダンスのWSに参加したり、バレエでよく動く体づくりを試みる。サルサ、ブラジル音楽なども趣味とする。
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