interview

4人の滋賀出身・在住アーティストによる新作パフォーマンス「瞬き」プレトーク

2010年02月11日

インタビュアー:小鹿由加里
構成:古後奈緒子


滋賀出身・在住のアーティストをフィーチャーした、ありそうでなかったダンス・パフォーマンス企画。「身体」と「照明」を手がかりにリハーサルを始めたアーティストに、企画・制作を交えて、それぞれの進み具合の中で見えてきたことや滋賀に思うところなどをゆるりと語ってもらいました。


森裕子×北村成美×藤本隆行 『Time Lapse Plant performance #00』
振付・演出・出演:森裕子 北村成美
照明・コンセプト:藤本隆行
音楽:古舘健
衣裳:CENTER EAST
機材協力:カラーキネティクスジャパン株式会社

チラシデザイン:外山央(Hiroshi Toyama)
チラシデザイン:外山央(Hiroshi Toyama)

森川弘和 ×平井優子 Dreamers
構成:平井優子
振付・出演:森川弘和 平井優子
照明:藤本隆行
音楽:古舘健
機材協力:ウシオ電機株式会社

dots 『She was stone』
出演:谷本みゆき 
振付:高木貴久恵 
構成・演出:桑折現
音楽:原摩利彦
照明:筆谷亮也

日時: 2010年3月19日(金)19:00 
20日(土)14:00/18:00★
21日(日)14:00★

★ゲストトーク(20日)ゲスト:永野宗典(ヨーロッパ企画)
★アーティストトーク(21日)

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◆ そもそもの始まりは…

小鹿:白崎さんは、どういうところからこの企画を思いつかれたんですか?

白崎:滋賀にゆかりのアーティストをメインに考えました。それは、僕自身が住んで務めているという地域だからということもありますが、やっててもおかしくないのに今までなかったなと思って。

森:私、滋賀出身で呼ばれたの、初めてです(笑)。

桑折:僕もです。

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小鹿:出身地を意識することってありますか?

桑折:特には…、東京に住んでたりしたらまた違うと思うけれど、今住んでいるのも隣の京都ですし。

森川:お互い一緒にやることがあったとしても、「滋賀出身だからがんばりましょう」ってのは、まあないですよね…。僕は練習で山を走ったりしますよ。大津なんですけど、歩いて10分ほどでもう山で、道なりに山科くらいまでは行ける。フクロウがいたりサルがいたり、街より面白いですよ。

小鹿:ある意味、滋賀という土地を生かしている(笑)。

北村:私は滋賀在住とはいえ、滋賀の人と知り合ってまだ5、6年。滋賀の人は、ダンス、好きなんですかねえ? そりゃ、日本全国どこにも踊り好きの人はいるだろうし、ここも江州音頭かあるんだけれど、滋賀の人にとって面白いダンスってどんなやろうって、模索中です。

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森:私は大阪や京都に通ってダンスをしていた時期があるので、滋賀の人間はせっせと通うのに逆は「遠い」と億劫がられるたび、「そんなことない」って反発していたな。都市へ向かうのと田舎に向かうことの間には、感じ方にギャップがある。環境としては良くて、劇場も各市町村にあるんだから、それぞれが面白いことをしたら盛り上げるのになあと思います。

白崎:みんな碧水ホールみたいだったら、そりゃすごいでしょうね。


◆ 「滋賀」=メディア系?!

白崎:滋賀らしさを強いて挙げれば、秋からやっていた淡海現代ダンス計画は、ダンサーのスキルアップのためじゃなく、ある程度のゆるさがありました。ただ、子供向けとかは厳しいかな。子供が自発的に来るわけじゃないですしね。でも子供向けのWSが少ないのは、きっと最初に厳しくてやめちゃうんじゃないかなと思うので、ここでやめたらダメ、と。

森:まだ環境がいいから、子供の教育に対しても危機感がないのかも。

白崎:ダンスの公演を見たことなくても来てくれる人もいますしね。

森:生活の中でアートにアンテナを張ってる人は結構いると思います。3

桑折:僕の実家はある時期まで福祉施設をやっていたこともあって、幼い頃、たくさんの人が集まる場所でした。アート関係の人達も多かったし、その人たちが開催するイベントに顔を出したりして楽しかった記憶があります。

森:「おじじ」って知ってます?

桑折:知ってます!一人で『マクベス』やったり、ものすごくシンプルな寿歌やったり、すごくクォリティーが高かったのを憶えています。

白崎:月一回来て、がらくた集めて演奏したり、わけわからんパフォーマンスをしたり、すごいですよね。

2 森:今のメインの潮流にはのっていないけど、独自のネットワークで活動を続けている人はどの地方にもいるのかも知れません。私は滋賀でそれに触れて、踏み込みはしなかったけど、そういう人たちの存在に励まされているところはあるのかも。

森川:この公演をとおして、滋賀でこんなことやってる人たちがいるって、まずは知ってもらいたいですね。そこからダンスはもちろん、芸術や文化…、その人が知らなかった分野を発見することにつながれば楽しくなりますね。僕もそんな風に滋賀でおもしろいことをしてる人をもっと知ってみたいですね。

4小鹿:「滋賀の特性」みたいなことは一概に言えないけど、集まってもらったことで見えてきたリンクもあるんですね。例えば今回、カラーキネティクスジャパン株式会社という企業が無償でLEDを貸し出してくださることになった。企業がもともと考えていた商品の用途以外の方法をアーティストと協力することで、見つけられると考えるようになると面白いと思います。

白崎:全体で見てのつながりもあるだろうし、またそのコントラストが最初に想像したのと真逆になってきたのも面白いですね。最初はひょっとすると、dotsだけがメディア系になっていたかも知れないのに、今はdotsだけが一般照明を使うことになりそうだし。

小鹿:今回のチラシに入れた「妄想」というコピーには、一般に無駄だと思われているけれど、つながり次第で新たな機能を持つ何かに変わっていく、という意味をこめているんです。そもそも、滋賀出身を謳った企画が、しげやんが初めてメディアを使って作品をつくることになったり、地元の企業にアクセスすることになったりといろんな展開ができたこと自体、面白いですよね。

森:滋賀は「メディア系」みたいな?(笑)ちょっと不思議ですよね。


◆ダンサー同士の、「ここが気になる!」

小鹿:今回の企画では、作品のポータビリティ(移動しやすさ)と再演性も打ち出しているんだけど、ふだん作品を創っている側として、そういったことは意識しますか?

5 森:再演できないと、もったいないじゃないですか。そもそも厳密な再演はあり得ないわけだし。

北村:上演のたびに練られてゆく面白さがありますよね。同じことやっても、「変えた?」って言われるし。

小鹿:再演で醸成される作品の世界やクォリティーがあったとしても、お客さんはけっこう新作を求めていたりする。ニーズとのギャップは感じませんか?

北村:私はAVECSじゃなくて、ひたすら「テイチク系」。つまり売れない演歌歌手スタイルで、売れるまで繰り返して、じわじわヒットチャートをめざす。それを敢えて録音じゃなくて、生身でやる面白さ。

小鹿:森川さんはどちらかといえば、振付家がちゃんといた上で、踊りたい人ですか?

森川:振付け家っていうよりは演出家かな。自分の動きは自分で創りたくなりますね。まぁ難しい振付けがあってもできないし。僕、「体の可能性」がすごく好きなんです。で、自分の体をいろいろ試してその可能性を探っているわけです。その作業は,雰囲気や感情を表すことを目的にするというよりも、純粋に動きがあってそれを喜び反応する体がある…、ドライな動きの模索というか…。

小鹿:ドライに動く身体訓練ですか。講師としても活動していますが、かなり厳しい内容だとか(笑)。

森川:僕のワークショップは、基本的に身体訓練ですね(笑)。でも基礎体力、必要でしょうー、動物「人間」として。体の可能性の模索はダンサーに限らず、すべての人にとっておもしろみのあることだと思っているんですけども。

小鹿:そのあたり、純粋にキネティックな楽しみを満たしてくれる人は、関西では少ないかも知れませんね。自分の体を知って動くといった、参加者の個性を重視するクラスは多くなったけれど。
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森:桑折さんは振付はしないの?

桑折:しないですね。

森:って、はっきり言い切るんですね…。

桑折:いや、口は出しますけど。

8 森:どんな言葉を使います? 詩的じゃない? 場所とか風景とかって言葉、嫌いじゃないでしょう?

桑折:イメージの話はよくします。風景のような作品を作りたい、ぐらいに思ってるかも。ただ、最終的に作品に出す言葉と演出途上でダンサーにかける言葉は別に考えていて、リハはどういう状態にあるのか聞きながら声をかけて、探りつつですね。スピードやテンポなど具体的な注文をつけることもあるけれど。言葉についてはずっと模索してて、作るたびに作品にとって適した言葉を悩んでいます。最近は言葉を使って振付をすることは少なくなっている感じがします。

森:でも、求められるでしょう? 

桑折:しょっちゅうではないけれど、溜って来たらですね。稽古場の雰囲気にもよりますけど。

森:ダンサーとしては言葉で変えられてみたいとも思うんですね。モノクロームみたいに長いカンパニーだと、身体言語を共有していてお互い動きが読めちゃうから、ダンサー同士の言葉は弱いの。そうじゃない人の目や言葉をあびてみたいって。

小鹿:森さん、dotsのダンサー募集に応募してみたら(笑)?

森:知ってますよぉ〜。でも、年齢制限してますよね(笑)。

桑折:(笑)。なるべく長くやってゆける人がいいなと思いまして。今までプロデュース形式でやってきたけど、dotsの集団としての身体性をつくっていかないと、今後難しいなと思って、思いきって募集してみたんです。


◆さてどんな作品に?

小鹿:最後に、それぞれ作品作りのきっかけと進み具合を教えてもらいましょうか。

森:「time lapse」は、もともとキンセイさん(藤本隆行)といくつか作品を作ってきた延長に、新作の提案を受けたことから始まっているんです。

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Photo:Yohta Kataoka

タイトルはtime lapse photographyからとったもので、時間の流れを強く意識させるメディアのイメージから、主観的な時間というものを考えてみたいと。時間って、誰にも同じ一定量で流れているようでいて、感じ方にはかなりの伸縮や個人差があるでしょう? 「蟻の時間、象の時間」という本もあるけれど、植物や鉱物の時間というのも想像してみると面白い。ずれたりゆがんだり反復したり、そういった時間を感じてもらいたいですね。

森裕子 photo:Toshihiro Shimizu
森裕子 photo:Toshihiro Shimizu

小鹿:北村さんは、もとのソロの構想から一番変わりましたよね。森さんとも初共演でそして、初のメディア作品ですね。

北村茂美 Photo:Toru Ito
北村茂美 Photo:Toru Ito

北村:そう。自分一人だと、そういう発想になかなかならないので、貴重な機会だと思っています。裕子さんは私に取って大先輩。嬉しいですよー。関西のコンテンポラリーダンスシーンが始まって10年、よもや裕子さんとやる日が来ようとは! 今、お互いに動く必然性をつくるためのネタ出しをして、めっちゃ稽古してるんですよね。まあこういう時代なので、世間一般の人が求めているのは、身体の肉ニクしさ、温度感かなって仮説で、私はまずは肉ありき。電子な世界の中で、見ている人の身体以上に生なましいものが立体で飛び出せばいいなあって、動いています。「瞬き」というタイトルなので的外れかも知れないけれど、瞬いている瞬間に、そういう質感の身体が入って来たらなって。私自身、たまたま自分の瞬いている間に動かれたりして、「こんなに長く見てんのに、今、何やった?」みたいなことがよくあるのでね(笑)。

桑折:「She was stone.」は、ある女性ダンサーの死が一つのきっかけなのですが、dotsの振付をしている高木貴久恵との対話を出発点にしています。タイトルのsheは出演者ではなく、ここにはいない「ある人」。とはいえ、生死といった大きな話ではなく、自分自身からは逃げられなくて、どうしようもなく生きてしまうといった感覚、そしてもちろん喪失や不在の感覚などに、身体に近いところからアプローチしていこうとしています。

小鹿:dotsはメディアテクノロジーを特色とする作品の印象が強いから、これも意外ですね。

桑折:今回の作品は、身体と空間というシンプルなところから、どうスペクタクルを展開してゆくかを考えています。前作の『KISS』が野外で空間から入ったことを考えると、今回はスタジオということもあり身体から出発していますね。結果はまだ見えないけれど、他の2作品がメディアを用いてかっちり決めた環境からダンサーの体へというアプローチのようなので、プログラム全体でも出発点のコントラストは面白いかもしれないです。

dots『KISS』(2009)  Photo:井上嘉和/Yoshikazu Inoue
dots『KISS』(2009)  Photo:井上嘉和/Yoshikazu Inoue

森川:「Dreamers」は、一緒に創る平井さんに、一年前に別作品への出演を持ちかけられたことに遡るのかな。平井さんとは、フランスでマイム学校の友達を介して知り合って、帰国してダムタイプに出演したときの相手役。ひとつの作品をゼロから作るのは今回が初めてです。今はお互い忙しくてリハの時間を合わせるのが大変なので、平井さんのイメージに沿って、一人で課題を決めて動いてます。作品のイメージはラジオメーターで、真空管の中で光をエネルギーとして回し続けるっていうイメージだそう。そこでどう動くかを考えているところです。

森川弘和『A4』(2009) photo:schatzkammer
森川弘和『A4』(2009) photo:schatzkammer

小鹿:作品で使おうとしているHIDって、舞台で使われたことはあるんですか? 話ではかなり熱くなるらしいけど、天井焦げたりしないかな。

森川:焦げたり燃えたりはないけど、下からファンで風を送り続けないと、かなり熱くなるらしい。

小鹿:みなそれぞれに挑戦的な(笑)。どんな作品になるのか楽しみにしています。





森裕子(もりゆうこ)
滋賀県出身。自称、日本一小さいダンサー。坂本公成と共にMonochrome Circusを主宰する他、関西日仏学館主催のダンスWSのコーディネートなどを通じて海外の多くの作家と関わり、現在は「京都国際ダンスワークショップ・フェスティバル」の代表を務める。各地でコンタクト・インプロヴィゼーションや「身体への気づき」のワークショップを多数行う。踊ることの根源的な「楽しさ」を伝えたいと願っている。 http://www.monochromecircus.com/

森川弘和(もりかわひろかず)
滋賀県大津市在住。フランスにてマイムとサーカスを3年半にわたり学ぶ。帰国後、Monochrome Circusのダンサーとして5年間活躍。現在はフリーとして活動する。瞬発力と動物的な勘、抜群のボディバランスを生かした動きで注目され、自身の作品を発表する他、dumbtype、じゅんじゅんSCIENCE,小野寺修二/カンパニーデラシネラ、Ted Stofferなど、様々な振付家のもと作品に出演する。

北村成美(きたむらしげみ)
大阪府出身・滋賀県在住。通称、なにわのコリオグラファー・しげやん。6歳よりバレエを始める。英国ラバンセンターにて学び、’93年より創作開始。’00年ソロとなり「生きる喜びと痛みを謳歌するたくましいダンス」をモットーに、バカおどり道を疾走中! ご家庭の居間で踊る「ダンスアットホーム」や1週間1人で踊り続ける「ダンスマラソン」を開催するなど、国内外で精力的な活動を展開。2009年の別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」での振付作品は近年の好評作。第1回「TORII AWARD」においてフランス賞、観客賞、平成15年度大阪舞台芸術新人賞を受賞。「トヨタコレオグラフィーアワード2008」ファイナリストに選ばれる。 http://www.shigeyan.com/

dots(どっつ)
2001年、桑折現(滋賀県出身)を中心に京都造形大学映像・舞台芸術学科一期生が集まり結成され「空間」「映像」「身体」をキーワードにパフォーマンスグループとして活動開始。’05年より桑折現を中心にプロジェクト単位でメンバーを構成し、作品制作・発表を行っている。伊丹アイ・ホールとの共同製作プロジェクト〈Take a chance project〉での作品制作や、犬島での野外アートフェスティバル、ホテルを会場にした現代美術展〈STAY WITH ART〉など様々な企画に招聘され公演活動を行ってきた。独自の空間構成をベースに身体や映像など様々な要素を重層的に結びつけ、根源的な人間の「存在」を見つめようとするパフォーマンス作品は、トータルなパフォーミングアーツの可能性を切り拓きつつあると評価される。 2009年京都・北山の「陶板名画の庭」の池を使った「kiss」は各地から話題を呼んだ。 http://dots.jp/ja/

白崎清史(しらさききよし)
滋賀県高島市生まれ 安曇川文化芸術会館から草津、水口文化芸術会館を経て滋賀会館へ、2008年秋滋賀会館大ホール閉鎖に伴い、しが県民芸術創造館へと移動。事業企画の他、舞台照明技術員として会館運営業務に従事する。その経験と移動で培った県内各地でのネットワーク、実家が川端(かばた)付きの農家という自身の武器を生かしたアート、人、地域性を結びつけるオリジナルな企画を展開中。

小鹿由加里(おじかゆかり)
’03年よりインディペンデントの企画制作者として、芸術団体や大学、NPO、文化施設等とともに、身体を軸とした企画制作を行う。農学の経験を活かした、農や地域、メディアなどへの幅広いビジョンが活動の幅を広げている。裏方ケータリングユニット「茶水」主宰。「農学部に芸術学科があったら」がテーマ。




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