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【暑い夏12】「抑制から生まれるもの」

2012年05月31日

E ビギナークラス Beginner class

コンテンポラリー・ダンスって何? どんなことするの? そんな疑問に応える、毎年大好評の通称「サラダ・ボール・プログラム」。ダンスに興味ある方へのイントロダクション・クラスです。世界で活躍する講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができます。



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ディディエ・テロン DIDIER THERON (フランス/モンペリエ)

抑制された動作の中から、人間のおかしみ、狂気等様々なエッセンスを見事に表現する彼の作品は、ダンス界と演劇界双方から大きな注目を集め、世界中のフェスティバルから招待を受けている。ドミニク・バグエ、マース・カニングハムに師事。’88 年の処女作『パルチザン』で、冬季アヴィニヨン・フェスティバルとヴェゾン・ラ・ロメヌ国際コンクールで共に一位を受賞する。日本でも水戸芸術館、利賀演劇祭、静岡春の芸術祭、など来日は数えきれない。「禅」をこよなく愛する。

 ビギナークラス5日目はディディエ・テロンさん。

 初めの物静かなイメージと全く違って、クラスの内容は熱いものとなった。 印象深いのがディディエさん自らカウントしステップを踏んでいく姿。この姿を見て、ディディエさんの存在が、この集団のペースメーカーとなっているのではないかと思った。このディディエさんの熱い雰囲気に全体が引き上げられたように感じた。

撮影:古後奈緒子
撮影:古後奈緒子

 後半はこのステップが終始行われた。私はステップに苦手意識を持ってしまい、ステップが自分の動きの抑制になってそれがすごく不自由に感じていた。

 しかし何度もステップを踏むにつれて、慣れもありステップは形として残りつつも、そのステップに収まりきらない何か力が、ステップを通して体から生まれてきたように感じた。ステップを踏むたびに自分が大きく、広がって行くイメージがほんのすこしだが得られた。

 この抑制から何か生まれる感覚は、私が経験した芝居のセリフでも似たような感覚があった。本当のセリフが出てくるためには、体の中でいろいろなことが起こっている。それが稽古を通じて自分の体の中に溜まり、セリフを通じてにじみ出す。そのセリフからにじみ出る何かが、ステップに収まりきらないものに似ていると思う。そしてにじみ出た何かが舞台上で観客に魅力的な演技、パフォーマンスとして伝わるのではないだろうか。

撮影:下野優希
撮影:下野優希

 ステップで抑制されることで初めは不自由に感じ、個性が抑えられる感覚があるがその抑制を越える何かが出てきた時に、個性が際だち伝わりやすくなるのかもしれない。個性がバラバラに提示されてもそれは群像の一部に過ぎず、何か統一されたものの中から個性が生まれるのではないだろうか。この抑制から生まれる何かが、舞台という空間では様々な可能性を持っていると私は改めて思った。

(2012年5月1日参加)

下野優希(しもの・ゆうき)

2008年劇研アクターズラボ、公演クラスに参加し初舞台を踏む。その後「アクターズラボ+正直者の会」に参加し3作品に出演。その間、体からの演技に興味を持ち、2010年より京都の暑い夏事務局主催の定期コンタクト・レッスン受講中、その他に京都国際ダンスワークショップフェスティバル、CIMJを受講。現在は「正直者の会.lab」の企画に参加中。

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