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【暑い夏12】「大胆で繊細なパートナーとの出会い」

2012年05月31日

E ビギナークラス Beginner class

コンテンポラリー・ダンスって何? どんなことするの? そんな疑問に応える、毎年大好評の通称「サラダ・ボール・プログラム」。ダンスに興味ある方へのイントロダクション・クラスです。世界で活躍する講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができます。



prof_ericエリック・ラムルー ERIC LAMOUREUX (フランス/カーン)

カーン国立振付センター芸術監督。カンパニー・ファトゥミラムルーをエラ・ファトゥミと共同主宰する。優れた身体能力に裏付けられた大胆なムーブメントと、高い音楽性に支えられたロマンティシズム、そして実験精神に基づいたオリジナリティーの高い振付/ 美術で、’90 年バニョレ振付家コンクールに『ユザイス』でデビューするや、アヴィニヨン演劇祭、リヨンビエンナーレなど一躍注目を浴び、国際的に活躍している。’99 年フランス政府派遣アーティストとして関西日仏交流会館に滞在。「芸術祭典・京」(’99)「コーチング・プロジェクト」(’04 / 京都芸術センター)など日本にも縁が深い。昨秋には日、仏、コンゴ3カ国共同製作作品『just to dance…』を青山スパイラルホール(東京)にて上演し好評を博す。

 ビギナークラス3日目はエリック・ラムルーさん。

 まず始めに一枚の画用紙が配られる。丁寧に扱うように指示される。

 そしてエリックさんはその紙が今日のダンスパートナーだと言った。

撮影:古後奈緒子
撮影:古後奈緒子

 エリックさんは紙を上に向けた片手の手のひらに乗せて、そのまま手のひらを横にに傾けて紙を落とさないようにしたまま動き出した。その動きは軽やかで、美しく舞っていた。それをいとも簡単そうに行っていたのが印象に刻まれた。

 実際やってみると紙は「ハラリハラリ」と手から滑り落ちていった。なかなか言うことを聞いてくれない。人間とのコンタクト・インプロヴィゼーション同様に紙を感じようとして気が付いたことがあった。それは繊細に相手を感じ過ぎても方向を相手に伝えづらかったり、動きづらいということ。そこで少し意識的に動きを伝えると共に、紙自体を見ずに感触を意識してみると、面白いように紙は手から滑り落ちずに共に動いていけた。

 次に紙の動きを真似て表現するワークを行った。まず紙を胸の前で伸ばした両手で持ち、手を離す。すると紙はいろんな動きをしながら床へと舞い落ち、その紙と同じ動きを体で表現するもの。

 紙には毎回違った動きのリズムがあった。それを初めは視覚のみで動きを捕らえようとしていたが、徐々にそのリズムを意識し、感じるようにしてみた。感じたリズムからの動きを表現するのが慣れない故に初めは少し抵抗があったが、この日は大胆に初めの一歩を踏み出せ、リズムを感じて動くのが楽しくなっていった。 

撮影:古後奈緒子
撮影:古後奈緒子

 後半はペアで紙の動きを表現するワークを行った。まず紙の動きを一人目が感じ表現し、二人目は初めの人の動きを感じ表現するもの。ワーク中に紙が舞った動きをペアの人が感じて舞う動きと、伝わっていく課程で自然と動きの厳密さは失われるが、だからといってふたりの関係性が失われるず、紙から感じ取っていたリズムが伝わり、関係性が保たれた感覚を得たのが興味深かった。

 最後に一番印象的だったのが紙はお休みし、ペアで行うもので、まず一人目が今までの紙の動きを想像して表現し、二人目は一人目の動きを感じて表現するものだった。

 自分で意外だったのが、紙のいろんな動きのパターンを覚えていて、迷うことなく動けたこと。そして紙を感じる時と同じように相手のリズムを繊細に感じ、固くならずに動けた。ラストは曲も流され、相手とのリンクも保ちつつ曲からも影響を受けて踊れた。曲調が図ったかのように心地良く、相手との動きにリンクしていったように思えた瞬間が刺激的で気持ちが高ぶった。

 今回「紙」というどこにでもあるものから、いろいろな感覚を開いて行く作業、最後にはダンスまで創作したエリックさんのクラス進め方が興味深く印象に残った。

 ワークの説明のためにエリックさんが紙と踊ったダンスは繊細で且つ大胆な姿であった。今でも印象に深く刻まれている。 

(2012年4月29日参加)

下野優希(しもの・ゆうき)

2008年劇研アクターズラボ、公演クラスに参加し初舞台を踏む。その後「アクターズラボ+正直者の会」に参加し3作品に出演。その間、体からの演技に興味を持ち、2010年より京都の暑い夏事務局主催の定期コンタクト・レッスン受講中、その他に京都国際ダンスワークショップフェスティバル、CIMJを受講。現在は「正直者の会.lab」の企画に参加中。

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