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【暑い夏11】新しい自分と自由

2011年06月26日

F コンテンポラリー・ダンスって何?どんなことするの?そんな疑問に応える、毎年大好評の通称「サラダ・ボール・プログラム」。ダンスに興味ある方へのイントロダクション・クラスです。世界で活躍する講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができます。
講師:4/29(金・祝)森裕子、4/30(土)マタン・エシュカー(イスラエル)、5/1(日)室伏鴻(東京)、5/2(月)エリック・ラムルー(フランス)、5/3(火祝)チョン・ヨンドゥ(韓国)、5/4(水祝)森井淳(大阪)、5/5(木祝)クルト・コーゲル(ドイツ)、5/6(金)クルト・コーゲル(ドイツ)、5/7(土)アリーヌ・ランドゥロー

はじめに…なぜ参加しようと思ったのか。そのころの私は、悩んでいました。自己欺瞞。なんだか、自分のことがよくわからなくなっていた。好きなものや、嫌いなもの、したいことや、したくないこと、そんなことを素直に表現できなくなっていた。こうでなきゃならないっていうさまざまな固定観念に縛られていた。このワークショップに参加することで、新しい自分に出会い、自分の心を縛りつける自分の意識から自由になれる気がした。

:::::1日目:森裕子さん:::::

まず、全員で円になり、お互いの身体をほぐしながら、自己紹介。 初めは、身体の様々な部分を意識することで、感覚、動きの変化を感じていく。たとえば、「呼吸」を意識し動いてみる。身体と息のリズムが同調する。「骨」で動いてみる。「風」になってみる。自分の目をカメラにして、人や空間を見る。広さ、質感、温度、様々な感覚が変化する。 森さんは、身体のそういった変化を楽しんで欲しいという。そこから生み出されるものがあると。 しかし、私にはよくわからなかった。こうやって感じたものがどうやって表現に結びつくのか。なんだか、早く結果を知りたくて焦っている…。周りがみんなうまく見える…。

参考動画(アフタートーク)

撮影:庵雅美
撮影:庵雅美

:::::2日目:マタン・エシュカーさん:::::

軽いストレッチから始まる。「呼吸を意識してください」と、マタンさん。そしてポーズをとっていくのだが、その際も、常に呼吸を意識することをアドバイスされる。いくつかの連なるポーズをとっていく時も、呼吸。その動きを何回も繰り返す。だんだんと連なる動きと呼吸のリズムが、考えずに自然にできるようになっていく。身体が暖かくなって、しっとりと汗ばんでくる。ポーズの形は意識しなくていいから、呼吸が浅くならないように注意をし、痛くならないところまででいいから動いてください、とマタンさん。その言葉で、力んでいた気持ちがすっと楽になった。そうしたら自分の身体の中にある、自然なリズムを感じられるようになった。 ワークが終わってみると、頭がすっきりして、なんだか体の調子がいい。ヨガって気持ちいい!

参考動画(アフタートーク)

撮影:庵雅美
撮影:庵雅美

:::::3日目:室伏鴻さん:::::

身体の「センター」を意識するよう言われる。そうして、身体の各部分(手首・腕・肩など)を脱力していく。そうして最後は座り込む。そして、逆に今度は、身体の下から力を入れていく。最後に立ち上がる。なんだか身体全体で息をするようなそんな動きになっていく。会場の空気も動いてるようだ。室伏さんも「呼吸を意識して」と、おっしゃる。そして、ユニークなキーワードを提示しながら、身体が様々なパーツで出来上がっていることを、私たちに意識させる。室伏さんは、「削ぎ落とす」。観せようとすることをやめる。そうして、最後に残った“消えないもの”を表現したいのだとおっしゃる。削ぎ落とす作業は、少し怖かった。残らず、消えないものが自分にもあるのだろうか、と。アイデンティティを問われている気分になる。

参考動画(アフタートーク)

撮影:庵雅美
撮影:庵雅美

:::::4日目:エリック・ラムルーさん:::::

みんなで円になる。簡単なステップをみんなで踏む。その場で、回ってみたり。だんだん速く! ステップを少し増やし、みんなで同時に小さく、大きく、飛び跳ねながら動く。リズミカルな音楽が流れる。「パッション!」とエリックさん。自ら、円の中心に立ちパッションあふれるステップを私たちに見せる。それを周りの人に届けて、届けられたら前に出る。交代交代に入れ替わりながら進む。パッションあふれる動きに息が上がる。パッションって何だろう…。 次に、ナイロン袋を手で軽く動かしながら動く。ゆっくりと、空間に絵を描くような動き。歩いたりしゃがんだり。袋を上に跳ねさせ、人と交換したり。でも、音を立ててはいけない。動きが、繊細になる。素材があることから、動きが生まれた。 そういえば、私たちはいつも何かに触れている。ダンスって、身体だけだから不安になるのか?何かを持っていれば安心するのだろうか?

参考動画(アフタートーク)

キッズクラスでのエリック・ラムルー 撮影:庵雅美 
キッズクラスでのエリック・ラムルー 撮影:庵雅美 

:::::5日目:チョン・ヨンドゥさん:::::

チョンさんは、ワークの間、しゃべらなかった。一言もしゃべらず、呼吸の音と、軽いジェスチャーだけで、私たちに動きを見せ、真似させる。言葉のコミュニケーションがない分、見て、感じるしかない。集中力が増す。 チョンさんの動きの特徴は「流れる」ような動き。風のような。川のような。みんなで会場の端から端まで転がる。うずくまったような格好で。次に、手と足を少し伸ばしながら、流れるように、すべるように転がる。しかし、肩やおしりが床にあたり思うようには進めない。実際にやってみると、いかに難しい動きかがわかる。勢いではできない。テクニックがいる。動くテクニック。 最後は、立って会場の端から端まで、手をゆっくりといろんな方向に出しながら、一歩ずつ前に進む。一転して静かな時間となる。気がつくとせせらぎのような音楽が流れている。自分が木になり、新芽が芽吹くような気分だ。手が、芽が伸びていく。 チョンさんのワークは言葉では伝え辛いが、人間界じゃない世界にいるような気分になるし、見ていてもそう感じる。

参考動画(アフタートーク)

撮影:庵雅美
撮影:庵雅美

:::::6日目:森井淳さん:::::

身体の重心、センターを意識する動き。オンバランス、オフバランス。重心がしっかりしてバランスがとれている“オンバランス”と、重心が傾いている間の“オフバランス”。軽いステップや、振りをつけながら、その重心の違いを意識する。重心が崩れる時、移動する。自分で自分を次の場所に運んでいるような感覚。 みんなで円になって動いてみる。でも、始まりの合図はない。周りの空気、前の人や横の人が動くタイミングを感じることで、みんなで動きをひとつにしていく。アフタートークで誰かが言った。「振りを合わすのではなく、息を、空気を合わすことが大事なんだと思った」と。私も同感だった。

参考動画(アフタートーク)

撮影:宇佐美偉丈
撮影:宇佐美偉丈

:::::7日目:クルト・コーゲルさん:::::

クルトさんのワークは2日間あった。しかし、1日目、どんなワークをしたか、何故か思い出せない。覚えているのは、そのとき自分が思ったこと。私は思った。「外からこのワークを見てみたい。」

:::::8日目:クルト・コーゲルさん:::::

今日は見学することにした。クルトさんのワークを外から見たかった。クルトさんは、まるで私たちを使って、何か、塊(かたまり)を作っているようなワークをする。 みんなで会場を動くが、決してぶつからないように。ビクビクするのではなく、意識する。人と自分の距離感、バランス、空間を意識し、創る形を意識する。 自分は、何かの大事な一部なのだと強く感じた。個があり、そして集まれば一人では作れないような素晴らしい彫刻のようなモニュメントができあがる。まるで社会の縮図のようだ。

参考動画(アフタートーク)

撮影:宇佐美偉丈
撮影:宇佐美偉丈

:::::9日目:アリーヌ・ランドゥロー:::::

とても、静かなワークだった。視覚をOFFにする。目をつぶって、ガイドに案内されながら、いろんなところに行って、いろんなものを触る。カーテン?ペットボトル?ワークが進むにつれて、どんどん感覚が研ぎ澄まされていく。目でみながら触っているときとは、まったく、感じ方が違う。 次に、円になり、目を瞑りながら、中心に向かい歩く。そして、全員が止まったと感じたところで、ゆっくりと、床に倒れる。足音、衣擦れの音などを頼りに、空間が止まるのを感じ、皮膚の触れる圧力などを頼りに、ゆっくりと床に倒れる。面白かったのは、何回か繰り返すごとに綺麗な円になっていく。そして、綺麗なつむじができる。視覚がないからこそ、できる。目を開いていながらも、視覚をOFFにしながら、やってみたら面白いかも。

参考動画(アフタートーク)

撮影:庵雅美
撮影:庵雅美

ワークショップを終えて ワークショップを受けていく中で、いくつもの発見があった。「あぁ、自分はこう思うんだ。」「これ苦手…。」「わ。素敵だな。」って感動が、新しい人や事に出会ってたくさん生まれた。自分が感じていることに素直になることを忘れちゃいけないなって思った。意図的に考えるのではなく、自然と自分の中に生まれるものを、自分できちんと理解することで、どんどん自分のことがわかってくる。それが、凄く面白かったし、嬉しかった。 感じることは自由、表現することも自由、コンテンポラリーダンスには、こうしなければいけないことは何もなかった。ただ、自分の感じたものを表現し、伝える、それだけ。しかし、それが難しい。なぜか?どう表現したらいいかわからないもの。しかし、自分の中に生まれた感動や感覚を表現するために、さまざまな手法を学び、新たな世界観に触れる。そんな素晴らしい機会がこのワークショップなのだと思う。

(参加日:全通し)

前芝和子(まえしば・かずこ) 高校、大学と演劇活動に取り組む。人は、なぜ表現するのか、表現し続けるのはなぜか。そんな表現者たちの、内に秘めたものを感じたい。そんな思いで、ワークショップに参加を決めた。 ダンスの経験はない。
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