2017年08月2日

C1 チョン・ヨンドゥ

 

 チョンさんクラスが終了してから1週間ほど経った5月4日&6日に菱川さんに受講の感想を聞いてみました。



 頭の中でチョンさんの声が聞こえる

「one and two and three and four and ….」

 

 ルーティン化された修行のような8日間が終わった。毎日、稽古中に携帯をフル充電にしておき、帰宅中の電車内でその日の振付動画をチェックする。最初の2、3日はわからないところでつまずくも、クリアにならないまま次の振付へと進んで行く日々が続いた。なんとか一人でできるように、ひたすらビデオを見た。自分の弱いところ、他の人が踊れるのに自分が踊れない劣等感と向き合うため、他の人と距離を取ってみたりした。はじめは「動き」と「カウント」の関係がつかめずに苦戦した。動きが音楽のどこで始まるのかわからない。チョンさん自作のスコア(音楽の秒数と振付のカウントを記したもの)は見方がわかってくると、振付を覚えるための助けになった。

 

 

 あとは周りの雰囲気を感じながら。全ての振付を渡され、位置取りが決まり、作品の全貌が見え始めてやっと安心した。最終日に行ったリハーサルのうち1回目はカウントが取れるようになっていた。

 

 この振付をこなすにはあと2週間は必要だと思うけど、そんなに長かったら奇声を発していたかもしれない。以前からチョンさんのクラスを通しで受けてみたいと思っていた。前回単発で受講したとき、膨大な課題を前にした受講生の輪の中から外れてしまう自分をズルいと後悔した思いもあった。ちょうど仕事を辞めたところで、受講できる時間があった。自分の力量では受講は難しいかもしれないと思っていたけど、実力が伴うのを待っていたら、いつになるかわからない。思い切って飛び込んだ。すごい恥ずかしいことをした。自分でもよくぞここまで諦めずにやったものだと思う。しばらくはあの勇気は出ないし、次回、チョンさんのクラスがあっても受講は無理かも「また来たか!!」て思われそうで・・・。今後も少しずつ、できる引き出しを増やして自信をつけたい。続けていくには「楽しい」と思える根源が大切だと思う。

 



 初日3日日間で離脱予定だった私は菱川さんに「私も出るのに!!」と言って引き止められたのでした。ショーイングまでの参加を決めた後もどんどん追加される振付は覚えきれず、構成も把握しきれないという状態でした。これではショーイングに参加するのは無理だと判断して、5日目終了後に再度リタイアを申し出ました。が、チョンさんは「ショーイングの出来は僕の責任ですから、気にしなくていいです。ももさんはただ一生懸命頑張ってください」と。他の参加者にも引き止められ、もう、私の逃げ場は無くなりました。時に私は踊れないことの劣等感と向き合うことを避けるために、仕事があるからとか、ダンサーじゃないからとかいう言い訳を立ててきました。一人静かに自分の劣等感と向き合う菱川さんとは大違い。再度リタイアを申し出たことで、そんな言い訳も劣等感も捨てて、ただただ精一杯やらざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。

 

 これまで得てきた知識を全部使って、今自分にできること、できないこと、そして残された時間を計り、完璧に振付を覚えこむ箇所を決めて集中的に練習し、ショーイングの全貌が見えた時点では自分で振付を覚えておかないとどうしようもないところ(視界に他の人がいない位置取りになる箇所など)だけ覚えるようにしました。ちょっとズルいかなとも思いましたが、全てをこなすにはとても時間が足りませんでした。ポイントだけおさえてショーイングの時、他の人の邪魔にならない程度にその場に存在できる方法を探しました。ちゃんと踊っている皆の邪魔にならないようにと。本当はそんなことも考えず、がむしゃらに練習に励めばよかったのかもしれません。

 

 緊張するでもなく、どこか冷静な頭のままショーイングの時間を過ごしました。ニュキニュキとフロアに沈んでいく最後のシーンで、受講者8人、皆でフロアを耕し、春の芽吹きを捉えたように感じることができました。チョンさんや受講者の皆に支えられながら、最後までこのクラスを受講できたことは私にとって一生の宝物です。



参考資料:4月27日開催のショーイング時に配布された資料より

チョン・ヨンドゥ クラス成果発表

2017年4月27日(木)19:00–20:30

会場:京都芸術センター(フリースペース)

 

「東の風が吹くとき」(2016)

<Music : Gorecki Strings Quartet #1>

振付:Jung Young Doo

出演:ワークショップ参加者

大藪もも、小倉笑、松倉祐希、山田知世、永井彩子、菱川裕子、福森ちえみ、米澤百奈(五十音順)

 

作品のコンセプトは、旧暦の7つの季節に基づいています。冬至、大寒、春分、梅雨、啓蟄などの季節に応じて着想されたここの動きを、単に音楽と同調するだけでなく、緊密な関係を維持し、構築していきます。

 

「自然には四季があります。人生にも季節があります。東風は季節の変わり目を意味します。身体が変化すると、心も変化します。今、あなたにはどの季節が訪れているのでしょうか?どこでどのような風が吹いているか、感じていますか?たとえば、子供と大人の間に訪れる季節。この作品は、季節が変わる瞬間のように、生活と体が変化する瞬間のための作品です。」

 

この作品の音楽は、ポーランドの作曲家Henryk GoreckiのStrings Quartet #1”Already it is Dusk”を使用しています。



 

チョン・ヨンドゥ(韓国/ソウル)JUNG YOUNG-DOO

Doo Dance Theater 主宰。俳優としての活動を経て、韓国芸術総合学院で舞踊を学ぶ。2004年の「横浜ダンスコレクション・ソロ&デュオコンペティション」にて「横浜文化財団大賞」「駐日フランス大使館特別賞」を受賞。西洋的で高度なダンスメソッドと明確なコンセプトを併せ持つ中に、東洋的に抑制された繊細な動きを加えることで、新たな時間と空間を創造している。マレビトの会や青森県立美術館「祝/言」への出演、京都国際ダンスワークショップフェスティバルの講師、福岡での共同製作作品『baram 033°37’22”N 130°25’31”E』(2013)、『カラスとカササギ』、Dance New Air2014「Project Pinwheel」『報復』(2014)、横浜ダンスコレクション2016 のオープニングプログラム『無・音・花』の振付など、日本でも多くの支持を集める。現在、立教大学現代心理学部映像身体学科特任准教授。

大藪もも

踊る制作。2010年より京都国際ダンスワークショップフェスティバル運営に携わる。舞台&WS制作のかたわら、クラスに参加し、時々指導者。

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