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【暑い夏16】コミュニケーション / ディスコミュニケーション

2016年09月27日

 

撮影:すやまあつし
撮影:すやまあつし



コンタクト・インプロビゼーション。

  去年の「京都の暑い夏 2015 」で、僕はこのダンスに巡り合った。

いまだに「コンタクト・インプロビゼーションってどういうものですか?」と聞かれると、

僕は非常に答えに困ってしまう。

  うんと…なんて言えばいいのかな。

ダンスの一種で合気道とかの考え方が基本にあって。

でも、世間一般のダンスというイメージとはまたちょっと違ってて。

重力やパートナーとの接触部分を意識しながら踊る即興性の強いパフォーマンス…

伝えようとすればするほど、逃げていくイメージ。

言葉にできない魅力がたくさんあるのだけれど。

  今回のコンタクト・インプロビゼーションのクラスの担当は

カティア・ムストネン。

彼女は北欧からやってきた、とても笑顔がキュートな女性。

  彼女のワークをしていくうちに、とても心が開かれていく感覚がでてくる。

そう、コンタクト・インプロビゼーションをしていると

なぜか平和な気分になっていくのだ。

  彼女のワークのひとつで印象的なものがあった。

それは一人の人(フォロワー)が目をつぶって、

パートナーの人(リーダー)がフォロワーの人の体のパーツに手を触れていく。

フォロワーの人はその刺激に対して、アクションをとっていくことになる。

リーダーがコンタクトしてくるポイントに対して、

押し返したり、寄り添って進んだり。

  その中で、とても美しいなと感じた瞬間があった。

それは、まるで大きくそびえ立つ木のようなイメージだった。

光・風・水、そして共生する小鳥やリスなどのいろいろな刺激を受けて

先へ先へ伸びていく枝や根っこのように。

  コンタクト・インプロビゼーションの基本には「自分の体の声を聴く 相手の体の声を聴く」

というコミュニケーションの考え方があるのだが、

コミュニケーションっていろいろな形があるんだなと思った。

そして、お互いが通じあったときに、その瞬間が訪れるのだ。

  もちろん、コミュニケーションがいつもいつもうまくいくというわけではない。

今回組んだパートナーの中にも、

なかなかうまくコミュニケーションできなかったということがあった。

体の声もお互いうまく聴き取れず、終わった後にお互いの感想を言い合ったときにも

相手の言っていることが自分の中で消化できず、

また自分の言っていることが相手に消化されない。

  そういえば、去年にも同じようなことがあったことを思い出す。

パートナーから「もっと力を抜いて」と言われて、

その場で一生懸命理解しようとしたのだが、

なかなか力を抜いて動かすというイメージが飲み込めず、悪戦苦闘。

そのときは理解ができなかったのだが、

半年後くらいに、別のワークをしていると、同じようなシチュエーションがあり、

そのときにやっと理解できる瞬間が突然訪れた。

今回も同じようなことなのかもしれない。

  答えを求め続ければ、ふとしたことをきっかけに自分の中の答えが訪れるのだ。

ということは、そのパートナーにも理解できる瞬間がいつか訪れるのだろう。

  コンタクト・インプロビゼーションが好きな理由。

それは、こういった日常ではあまりないコミュニケーションのあり方を垣間見たり、

自分の中の感覚的な部分を再構築したりできるところかもしれない。

  そして、それは日常でも同じで、日々を輝かせる。

  そんなことを考えながら、僕の「京都の暑い夏 2016 」が終わった。

カティア・ムストネン (Finland)KATJA MUSTONEN   フィンランド出身のダンサー、教育者、振付家。2004年オウトクランプ(フィンランド)にあるVocational Dance Schoolをダンサーとして卒業。フランクフルト(ドイツ)のHochshule fur Musik and Darstellende Kunstにて「コンテンポラリーダンス教育法」の修士号を取得。2008年以来、ダンスを学ぶ学生やプロ、ありとあらゆるムーブメントの愛好家を対象に、コンテンポラリーダンスのテクニックやコンタクト・インプロヴィゼーション等国際的に教え続けている。存在の有様、イメージや知識、感情を変容させ、具体化して雰囲気や動作に伝える身体の能力に興味がある。近年写真やビデオ、テクストといったほかのメディアと混ぜ合わせることに関心を寄せている。

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すやまあつし(すやま・あつし)

好奇心旺盛な小心者。動物占いは子鹿。サーフィンとスケボーとピアノが好き。ライターの端くれ。

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