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【暑い夏15】 D-2「コンタクト・インプロヴィゼーションを『見る』」
2015年07月1日
「コンタクト・インプロヴィゼーションをするとどういう感じですか。」
ー「人に触れることに抵抗があるけど、いざやってみると楽しい。」
ー「自分がコンタクトしている相手だけでなく、周りのグループにも意識が向く。」
ー「初めに自分の中を覗く。それから他の人の動きを見ていると客観的に自分の動きが形になって見える。他人と触れ合いだすと皮膚の感じが変わる。動きの構造が複雑になってくると他人とコンタクト仕切れない、他人を聞く余裕がなくなる。」
ー「コンタクトしている人の呼吸で息ができる。」
ー「他のクラスはハード、でもノアムのクラスを受けた後は、体がぐにゃぐにゃになる。気持ちも。」
以上はノアムのコンタクト・インプロヴィゼーション(コンタクト)クラスが終わったあとにインタビューしたクラス参加者たちの言葉である。このレポートではわたしがノアムのクラスを見学して、感じたことを参加者の言葉とともにつづりたい。参加者たちによれば、コンタクトをすることで、それぞれの人にとって体性感覚や空間知覚に変化をもたらすようだ。コンタクトでは床・空気・他者と触れあう感覚から動きが始まっていく。ふれあいの感覚を感じる過程で、自分の感覚も変化する。コンタクトに自分のからだは参加せずに、見学していても、そのような「感覚」の変化は見えてくるのだろうか。
ノアムは「内から外へ感覚を広げていこう」という。彼のクラスでは、まず自分のからだの状態に集中して、自分のからだを動かしたり、支えたりする方法をそれぞれがからだのうちに落とし込んでいく。水風船やおきあがりこぼしのような人形を見せ、「皮膚の内側が水に満たされている感覚でそれを揺する」といった言葉をかけることで、ノアムはからだの内部のイメージを具体的に伝えてくれる。参加者が集中して、ソロで動いている様子は、さながら瞑想しているようだ。そこからコンタクトの醍醐味、他者との交差が始まる。
床との距離が近い状態でペアになってコンタクトがはじまる。このときはお互いに接触せずに、相手のリズムから自分のリズムを作っていくことが条件。ペアになったふたりがじかに触れていなくても、コンタクトをしているつながりは視覚的に見える。参加者は30人を超えており、空間は埋まっているのに、ソロで動いているときとは異なる動き、二人のあいだの空間の密度のようなものが異なって見える。みな何も難しいことはないかのように、ペアでのセッションを楽しんでいる。他者を意識する、他者に意識を向けるということは目で相手を見るだけでなく、皮膚やからだでも可能なのだということが見学する側からも見えた瞬間だった。
インタビューで参加者たちは、自分の内側に集中して、まず自分ひとりで動き方を観察したり、コントロールしたりすることがノアムのクラスの基礎にあって、その特徴が好きだと言う。
ー「コンタクトは相手を聞くことだけど、ソロの動きを意識する時間が最初にあることで、自分のソロも踊り続けることができる。コンタクトをしていても主従の関係がうまれない。コンタクトをすると自分のソロを踊っていたときとバランスが変わってくる。ノアムのクラスが終わった後に、からだが不思議な感じで空間へ開いていく。」
ー「ノアムのやりかたは一人でまず動くから、からだで動き方を覚えてから、無になって動ける。」
ー「ノアムのクラスは自分がどうあるか感じられる。コンタクトといっても人に寄りかかるのとは違う。そこから2人で動けるのがいい。コンタクトは身体感覚が活性化して、人間的な豊かさにつながる気がする。スタジオの外に出てもコンタクトが生かされていくような感じ。」
踊るときに、自分のからだへ集中しようとする。そのときに他人のからだの意識がこちらを向いていることがわかると、自分のからだだけに集中することが制限される。すると、自分のからだへの意識が他人へ、空間へ広がっていくし、お互いが交感しようとしたり、力の受け渡しがおこなわれていることは、見ていてはっきりとわかる。共に相手のことを探りあいながら動く様子やそのリズムに、わたしのからだも引き寄せられていく。だからコンタクトは見ているだけでも美しく、おもしろいのだ。
ノアム・カルメリ (イスラエル/テルアビブ)NOAM CARMELI 建築家を経て、武術家(合気道)、ボディーワー カー、そしてコンタクト・インプロヴァイザーとして 活動している。イスラエルの即興グループOktet の創設メンバーで、ヨーロッパでの活動も精力的 に行っている。現在イスラエルの CI アソシエーショ ンの総監督、及びイスラエルコンタクト・インプロ ヴィゼーションフェスティバルのオーガナイザーを 務める。CI、合気道、GAGA、イラン・レヴ・メソッド を学び続ける中、ムーヴメントの探求と融合、そし てコミュニ ティー の 形 成 に 積 極 的 に 臨 んで いる。 flow(流れ)を重視したワークは誰もが楽しめるも ので、多くの支持者を得ている。(KIDFホームページより)
小泉朝未(こいずみ・あさみ)
大学院で身体表現について哲学研究をしています。コンテンポラリーだけでなく、アフリカンダンス、即興で踊るのが好き。踊ること、表現すること、知覚することをどう言葉にできるか考えています。
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