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【暑い夏13】 E 「学び続けて」
2013年05月31日
E ビギナークラス 4/28(日) コンテンポラリー・ダンスの多様性をまさにコンセプト的にも地理的にも満喫できる、イントロダクション・クラス。世界の第一線で活躍する講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができます。ダンスには興味があるけど敷居が高かった方、身体全般に興味ある方、アカデミックな関心のある方、世界のダンスに肌で触れたい方、ただただ動きたい方、それぞれの切り口で飛び込んでください。
フランチェスコ・スカベッタ (ノルウェー/オスロ)FRANCESCO SCAVETTA イタリア生まれ。IMPULSTANZ(オーストリア)や、P.A.R.T.S(ベルギー)、MTD(オランダ)など、コンテンポラリー・ダンスの主要なフェスティバル、大学、ダンス機関等で引っ張りだこのカッティング・エッジな振付家。ノルウェーとスウェーデンを拠点にダンスカンパニーWeeを率い、これまでアメリカ、ヨーロッパなど27 カ国をツアーしノルウェーを代表するカンパニーとなる。ヴェネチア・ビエンナーレで初演されたミクストメディア作品『Live』から、アブストラクトで即興的な『Surprised Body』まで幅広い作品群を誇る。そのムーブメントは、リリーシング・テクニックやコンタクト・インプロヴィゼーション、そして太極拳などをバックボーンに独自の言語を開発している。北欧の風雲児来日!!(KIDFホームページより)
午後6時30分、京都芸術センターフリースペースに年代も、性別もバラバラな人達が集まってくる。会場に目をやると仕事帰りで少し疲れた表情でひとりストレッチをする人、顔見知りと楽しげにおしゃべりする人、スマートフォンをいじる人、様々な人達が集まっている。
ここは京都国際ダンスワークショップフェスティバル(以下フェス)のビギナーズクラスの会場。ビギナークラスとはフェスに参加している各講師が日替わりでダンス初心者に向けて教えるクラスである。昨年に続いて私が今年もビギナークラスを受講した理由は明確だった。各講師の大切にしている意識や思考、テクニックがシンプルに説明されよりわかりやすいと思ったからである。加えて昨年受けて感じた、新しい発見にドキドキワクワクした気持ちが背中を押してくれた。
4月28日日曜日、二日目のフランチェスコ・スカベッタのクラス。 フランチェスコが教えてくれたアップの動作は、振り付けのように動作が一連で繋がっているように思ってしまった。そう、思ってしまった時点から元々振り付けへの苦手意識を持っていた私は「フランチェスコのように動かなくては!」と更に意識を強くして、同時に体も緊張し硬くなり動きづらくなっていった。ほどなく自らの焦りと体の緊張に気が付き、すぐに体をリラックスさせるために自分の体へと意識を向けて余分な体の力を抜き、脱力を心掛けた。すると徐々に体はリラックスへ向かい動きもスムーズに流れるようになっていった。今までの緊張を緩和する経験を活用し、時間が掛かったものの自分自身の体と意識の調整をやっと終える頃には前半が終了していた。
後半は短い振り付けが始まった。苦手な振り付けである・・・。何とかしようとアップでの“外見の動きを精密に真似る”から“内側で起こる動きを同じように感じられれば動けるのでは?”へと意識を変えてみた。内側の動きを真似るために注意をはらったのが“呼吸”であった。すると見ただけで真似ようとした動きはつぎはぎだらけで流れが途切れるイメージを感じていたが、同時に呼吸に注意をはらうと動きと動きのつなぎ目がスムーズに繋がっていった。動きの違いは体が開いて伸ばす時に腕や足が大胆でしなやかに伸びていく感覚があり気持ちよく感じ始める。自分の中での気づきを楽しみ始める頃にはちょうどタイムオーバーとなり、ビギナークラスは終了。毎年恒例のワーク終了後に講師を交えて参加者と感想を話し合うアフタートークへと続く。
この回のアフタートークでは参加者ひとりひとりの感想を聞く機会があった。 私が興味深かった感想は、吉森さんがおっしゃった「体が広がる感じがした、前半のワークを指示通りやっていると気持ちがよくリラックスし寝てしまいそうでした」というもの。吉森さんの感想と自分の感想の違いに大きな差があるのに驚いた。前半苦手意識からの緊張を和らげようと必死だった私と対照的に、吉森さんはリラックスされていた。同じ時間を過ごしたのに大きな違いがあるのだと改めて感心し、同時に対照的なふたりの違いは何だろうと疑問が生まれた。この疑問はアフタートークの中で解決されていった。
話題が“学び”について進んでいった最後にフランチェスコはひとつの例えを披露してくれた。 「ワイン(=知識)があって開けて飲もうとしている人(=学ぶ人)とワインを提供する人(=講師)がいて、提供する人が簡単に開けられる栓抜きを渡そうとするが、多くの飲もうとしている人は「大丈夫、開けられます」と自分で何とかしようとし、かじったり、割ろうとしたりして苦労して開けようとする。「栓抜きなら簡単に開くのに・・・」と。まさに何とかしようともがいていた私はワインをかじって開けようとしている人だったと気が付いた。
学ぶ側の大切な心構えは“素直さ”なのだと思った。吉森さんは素直に指示に従っていたからスムーズにリラックスできたのではないだろうか。でもワインを開けるまで、ゼロからの経験を元に自分自身でたどり着くのも大切だと私は思っている。と書く時点で素直じゃないのだが(笑)。ものごとを始めて続けていくと、多くの経験を得てビギナーではなくなっていく。時として得た経験を重視し続けると、新しい学びの妨げになる場合があるのだと気が付いた。経験者となってこれからも学び続けるためには、ビギナーの“素直さ”を忘れず、新たな知識を得た時、新たな感覚を得た時のまるで子供のようにドキドキワクワクした楽しさ、嬉しさを持ち続けられるのが大切だと思えた。風雲児フランチェスコのビギナークラスでした。
下野優希(しもの・ゆうき) 2008年劇研アクターズラボ、公演クラスに参加し初舞台を踏む。その後「アクターズラボ+正直者の会」に参加し3作品に出演。その間、体からの演技に興味を持ち、2010年より京都の暑い夏事務局主催の定期コンタクト・レッスン受講中、その他に京都国際ダンスワークショップフェスティバル、CIMJを受講。現在は「正直者の会.lab」の企画に参加中。
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