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伴戸千雅子「母ちゃんと赤ちゃんのカラダ学 第3回」

2009年09月14日

「おむつと親子コミュニケーション」
bando2 今回は「おむつなし育児」の話です。
「ダンスとおむつは遠いんじゃないの」と思われるかもしれませんが、身体への向かい方という点においては近い。というか、考えさせられるところが大きいのです。
誰しもおむつをしていたはず(多分)。そんな頃に想いをはせてみてください。

さて、「おむつなし育児」とは平たく言うと、生後まもない赤ちゃんでも排泄の時に何かしら意思表示があるから、それを受け止めて、おまるやトイレで排泄させようという育児法です。今の育児の主流は、生まれたら布でも紙でもおむつをつけて、その中でうんちやおしっこをさせて、2~3歳頃にトイレでするように練習するので、なんだか根本的に発想が違います。

まず、赤ちゃんの排泄欲求に目を向けていること。
そして、おむつの外で排泄をさせること。
そりゃあ、赤ちゃんだって、おむつの中でやるより外でやる方が気持ちいいだろうな。

「おむつなし育児」を積極的に取り上げている「自然育児友の会」の会報では、「子どもの排泄の欲求を、彼らの身体を使った意思表示から感じ取って、適切なタイミングで排泄させる育児」だと紹介しています。おむつをつけてはいけないのではなく、「子どもたちが本来持つ機能を発揮させ、親子の意思疎通をスムーズにすることが目的」。

親も子も身体の感覚に目を向けて、身体を通してコミュニケーションしようということ。ダンス的だと思いませんか。
 
「おむつなし育児」は『オニババ化する女たち』などの著書で知られる三砂ちづる(津田塾大学教授)さんの「赤ちゃんにおむつはいらない―失われた身体技法を求めて―」という研究(07年)から始まりました。08年には実際に育児をしているお母さんが参加する「おむつなしクラブ」が立ち上がり、実践する中でいろんな発見や楽しみ方が見えてきたそうです。

京都で「なんちゃってアフリカン」というダンスワークショップを一緒にやっている西山由紀さんは二児の母。下の子が2ヶ月になるころから「おむつなし」を始め1年数ヶ月。排泄をスムーズにするため、子どものおむつや服をあれこれ工夫したり、自分の身体にも目を向け着物を着たり。会う度に、発想の豊かさ自由さに驚かされます。そんな彼女に「おむつなし育児」について聞いてみました。



〈 膀 胱 を 鍛 え る ! 〉

愛用のおまる
愛用のおまる

伴戸 「おむつなし育児」をして感じることって何?

西山 膀胱を鍛えるのが重要だと感じた。人生の始まりの何年間に、膀胱の感覚、「ああ、気持ちいい」っていうすごく根源的な感覚を味わえないのはさみしい。「食べること」「排泄すること」「寝ること」という根源的な欲求を満たしてあげるって、赤ちゃんを尊重できていいんじゃないかと思う。

注)おむつをしていると排尿感覚が短く、おむつを使わないと長くなるらしい。つまり、おむつの中ではおしっこをチョロチョロしてしまうが、おむつの外ですることに慣れると、膀胱にためてジャーッとできるようになる。膀胱が鍛えられるのだ。
西山 赤ちゃんのうちに、膀胱がいっぱいで気持ち悪いとか、出た時は気持ちいいという感覚をちゃんと味わっておいて、 (男なら)おちんちんをお腹や手や肩と同じように触れることも大切で、そういうことを小さい時にしておくと、大人になって健全な性欲の持ち主になるのではないかと本に書いてあったんだけど。

注)その本はフランスのおむつなし育児に関する本。西山さんが翻訳して、出版社を探し中。
伴戸 一番最初におまるでやった時はどんな感じだった?

西山 「おむつなしクラブ」のメーリングで、まだ首の据わっていない赤ちゃんをトイレでおしっこさせている映像(アメリカのテレビニュースで放映されたもの)がまわってきて、すごいショックでびっくりした。でも、次の朝自分もやってみたらトイレやおまるでできてうれしくて、それでやみつきになっちゃった。
上の子の時は3歳まで布おむつを洗い続けて、下の子ができてまた洗うのがいやだなと思って「おむつなし」を始めただけだったのに、それ以上のことがいろいろ出てきて、すごい面白い。

伴戸 面白いところの話を。

西山 赤ちゃんって意思があるんだって思った。上の子の時は、泣いたら何も考えずにおっぱいだって思ってた。でも、赤ちゃんの気持ちを分かるよう多少努力すると、サインを出していることや、しかもサインを出しわけてることが見えてきた。みんな、赤ちゃんの様子を見て、「お腹減ってるんだな」とか「眠いんだな」とかは思うんだけど、それと同様に「おしっこしたいんだな」とかなんとなく分かる。

伴戸 おしっこの合図ってどんなの?

西山 寝たままの赤ちゃん(2,3ヶ月の頃)は分かりやすくて、手足をバタバタ動かしたり、泣いたりする。泣くのはおしっこをしておむつが濡れて気持ち悪いからだとよく言われるけど、膀胱が一杯で気持ち悪くて泣くの。

伴戸 小さい時はすごく頻繁に排泄するでしょ。

西山 そう。30回とか28回とか。「おむつなしクラブ」の宿題で、去年の8月1日から31日までの排泄記録をつけたことがあった。それで分かったのは、親が排泄している時は赤ちゃんもしているということ。だから、お母さんがおしっこしたいなと思ったら、まず赤ちゃんにさせるとすることが多いの。
その時、もう一つ分かったのは、8月1週間くらい森の中で過ごす機会があって、太陽と一緒になるべく電気つけないで暮らしてみたら、子どもがお日様と一緒に起きて、お日様と一緒に寝たの。子どもって何も言わなくても、こうしてお日様と一緒に生きるように出来てるんだと思って。それから私もすごい早寝早起きになって、8時に寝て4時に起きている。


〈 お 母 さ ん も 身 体 を ゆ る め る こ と が 大 事 〉

伴戸 おむつなし研究チームから「こうしてください」という指示があるの?

西山 それはない。子どもによって違うしね。ただ、東京で毎週やっているミーティング報告がメーリングで流れて、その内容が面白くて参考になる。例えば、赤ちゃんをおまるにささげる時、お母さんが緊張しているとおしっこしてくれなくて、身体を緩めてリラックスしているとしてくれるとか。
裸育児に関する本も話題にのぼって、下半身だけでも裸にしておくと、おしっこが出そうな時の様子とか、何分おきに出るかをつかむのに役に立った。みんな苦労してたのは、部屋でおしっこされること。私もおまるでできなかったら、拭けばいいやって思うまでに時間がかかった。

伴戸 裸と言えば、中国の股われズボンをはかせて公園に行ったりしてたでしょ。注目されるんじゃない?

西山 だから、人口密度の高い公園は行かない。最初に外でうんちした時は、外でうんちするなんて思ってなかったから、穴を掘って埋めてきた。野ションも大好きで、おしっこの勢いもすごくなった。最近は、夜中おしっこしなくなって、朝方おまるでするんだけど、前はシャーって感じだったのに、ここ2ヶ月ほどでジャーって。すごく勢いがつきました。

伴戸 夜寝て朝までおしっこしないの?

西山 膀胱を鍛えた甲斐があったな。

伴戸 おむつの中でしたくないから我慢することを覚えて、鍛えていったってこと?

西山 多分。外出しても、家まで我慢しようねって言ったら、我慢して家に帰ってからしたりする。冬は寒くてすごく頻尿だったけど、暖かくなったら、効果が現れたのか、5,6時間しなかったり、外出もノーパンのまま行っちゃったり。今でも部屋でおしっこされて床拭いてるからえらそうなことは言えないけど、おむつは洗わずにすんでよかった。

伴戸 何より、気持ちよさそうだもんね。

西山 裸だと冷えるんじゃないかとか、着てない時に汗もができるんじゃないかとか。

伴戸 私もここ数ヶ月家にいる時は下半身はだかにしていて、それで、何回か熱を出した。

西山 そうやって強くなるのかなと思う。お腹が冷えないように、お腹に手ぬぐいを帯みたいにまいたりしてたけどね。

伴戸 工夫するよね。

西山 おむつなしに合った服が売ってなかったりするので、工夫せざるを得ない。
でも、おむつを早くとることじゃなくて、赤ちゃんとコミュニケーションをとることが目的だから、おむつが3歳までとれなくてもいいの。ただ、赤ちゃんの気持ちを尊重するとか、身体の感覚を研ぎ澄ませるように手伝ってあげるとか、できたらなって。



〈 着 物 で 育 児 〉

着物姿の西山さんとギーちゃん(息子)
着物姿の西山さんとギーちゃん(息子)

伴戸 着物を着はじめたきっかけは?

西山 赤ちゃんが身体の感覚を研ぎ澄ましていられるように、股に布をあてない効果を実験中なんだから、お母さんも自分の身体をより意識してみようという話題が去年の秋ごろ「おむつなしクラブ」のメーリングで出てきた。それで、着物を着てみようという人が続出。私もやってみたら意外と快適なので、1週間くらいでやめると思ったら、結構続いている。身体を締め付けないように着たり、下着をふんどしに変えてみたり。そうしたら、なんか快適で。靴も下駄にすると開放感がなんとも言えないし、鼻緒が指の間を刺激して気持ちが良い。そうやって私が着物を着ていると、子供も着物を着てないとなんだか変だなって思って、着物を着せたりしている。

伴戸 以前、ふんどしは合わないって言ってたよね。

西山 でも、やっぱりいい。ふんどしをつけ始めると、パンツのゴムが耐えられなくなる。昔のふんどしより随分小さくて、割とコンパクトな服を着ても大丈夫。ズボンをはいた時は分かんないけど。

伴戸 つけ心地はどんな感じ?

西山 何もつけてない感じ。服を汚さないためにつけてる感じ。

伴戸 なんでこんなに身体を締め付けるようになったのかな。今まで当たり前だったことが、いろいろ疑問に思えてくるね。

西山 洋服もいいんだけど、着物もいいんじゃないって感じ。着物って足を広げられないし動きにくい。でも、センターが通るのは実感する。これは何も偉そうに言うことじゃなくて、足が開かないからやむを得ずなんだね。不便だったり、動き回れないくらいでいいのかな。十分家事もできるし、走ったりもできる。ま、ジョギングはしないけど。

伴戸 西山さんにとって身体って?

西山 子供ができて、おっぱいとかやるようになると、炊飯器みたいって。私もご飯が作れるんだと思ってうれしくなった。



西山さんのサイトにもいろんな話がのってます。http://sites.google.com/site/francecithare/

(つづく)

「母ちゃんと赤ちゃんのカラダ学」バックナンバーはこちら

伴戸千雅子(ばんど・ちかこ)
ダンスグループ花嵐のメンバー。ダンサー・振付家。一児の母として子育てにアタフタしつつ、子連れ参加のワークショップ「なんちゃってアフリカン」(京都)、「カラダとココロのストレッチ」(高槻)をやっている。「なんちゃって」は9月10日(三条コミュニティセンター)、11月14日、26日(静原のCafé Millet)でやる予定。
私事ですが、8月に連れ合いと子どもと駒ケ岳でミニトレッキングに行ってきました。やっぱり山は楽しい。ベビーキャリアの中で子どもはおおはしゃぎでした。
http://baab.cocolog-nifty.com/blog/
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