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【暑い夏10】京都の暑い夏のワークショップでの学びについての考察。
2010年07月21日
C-1 ダニエル・レプコフ 昨年好評のリサ・ネルソンにつづき、コンタクト・インプロヴィゼーションのパイオニアによる特別レッスン。歩く、走る、転がるなどの基本的動きを見直すことから身体の使い方、発展のさせ方などを探求します。視覚、触覚、重力、リズムなどにフォーカスした即興を行い、他者や空間と関わりを持ちつつ、感覚、知覚を目覚めさせダンス創作のための言語を習得していきます。そしてワークの中で経験したことをもとに短いソロやデュエットを創作します。 アシスタント:島田櫻
DANIEL LEPKOFF ダニエル・レプコフ (アメリカ/ニューヨーク)
コンタクト・インプロヴィゼーションの創始者と呼ばれるスティーブ・パクストンと共にコンタクトを発展させたオリジナル・メンバーの一人である。70年代初頭、解剖学をもとにしたリリース・テクニックを研究。即興についての作業を続け、世界各国で指導やパフォーマンスを行っている。NYのムーブメント・リサーチの設立者のひとりとしても有名。豊富な経験をもとにした即興に対するアプローチが魅力。
関係者の方々への尊敬と感謝の言葉から始めたいと思います。15周年おめでとうございます。すばらしい文字通りの有り難い空間でした。
ダニエルはスティーブ・パクストン、リサ・ネルソンと同世代の、その場で起こったことを静かに観察しファシリテートする深い洞察力のある人物だ。クリエイション&リサーチといわれるワーク……、それはアートの作業と観察の本質であると感じた。
偉大な音楽家は一つ一つの音ではなく、ある特定のリズムである特定のならび方をしたときに聞こえてくる意図しない奇跡のような音を求めつづける。リサーチってそういうことなのではないかと思う。
動き自体が大事ではない、大事なものはもっとべつにある。だからこそ動きが大切になる。ぼくはずーっとそのことを思いダンスしているのだが、大切なものはココロやココロに生まれるノイズ的ななにかじゃないかと思っていたが、なんか自分でも宗教臭いなぁと納得していなかった。
では大切なことを見つめるために、まず流れを丁寧に洗い出してみたい。芸術センターの床のように……、ツルッツルに磨き上げていこう。
1日目 4/16(金)18:30~21:30仕事を早くあがらせてもらい滋賀へ。着いてみると去年から知っている顔もちらほらあり、外人講師の英語でのワークということで、いろんな意味でほど良いテンションのある空間になっていた。
はじめに断っておくと、去年はこの暑い夏ワークに予約なしで受講可能な分を何コマか経験したことがあったことと、リサ・ネルソンのワークは見学していたので、ダニエルがどういうことをするのかは良くも悪くもこの時点で予想はついていたのだった。
この日取り組んだ作業は、“rest position construction”。
要するに、休んだ姿勢の構造をリサーチしてみようということだと思う。休んだ状態から次に動き出すのだが、ダニエルの方法は本当に動き出す方向には力を加えない。からだの重心に手足を持っていくと背骨が縮み、右半身だけ手足を伸ばしていくと当然のようにからだは右に倒れていく。そのとき生まれる重力を背骨を開くことによりリリースする。そうすると力の入ったベクトルと違う方向に発生する重力で動くことができる(残念ながら文章ではまったく伝わる気がしない……)。
ダニーのファシリテート 「センター(center)、からだの中心を大切にする。からだの中心の背骨の伸び縮みで重心をリリースする感覚。重力、体の重さも体の一部分」
“body weight is a part of body(体の重さも体の一部分)”
重力を使う踊り方はコンタクトの定番だが、その追及は果てしない。
2日目 4月17日(土)11:00~13:002日目に入ると発展していったが順調ではなかった。そこでダニエルは種を明かすようにダニエルユニークのテクニック(developed techniques)を披露し、控えめに慎重に教えた。それは赤ん坊が成長する過程、動けるようになって、這えるようになり立ち上がり歩く、その道のりを探ることによってムーヴメントを生み出すテクニック。コンタクト・インプロヴィゼーションも触れる感覚や力から自我のない動きを生み出すテクニックとして発生したと聞くと、彼のこれまでの歴史を感じる。感覚的には人間の動きを見ているというより動物園で時間を忘れて動物を見ているかのようだった。感動し、静かにエキサイトした。
しかしダニエルはとても繊細・誠実な人物で、テクニックを僕らに押し付けたくはなかったように感じた。「僕の方法ではなく自分の感覚で見つけていってくれ」と常にファシリテートしていたのが印象的ですごく参加者へのリスペクトをぼくは感じた。
ぼくらももっと等身大のダニエルをリスペクトすべきだ。
昼休憩で外に弁当を食べに出た。鳩がいて、動くのをじっと見ていたらダニエルの凄さを僕だけが理解している。そんな気になった。欺瞞だ。
2日目 4月17日(土)14:00~16:00午後は個人の自己対峙的な動きのリサーチではなく、2人組みでのリサーチになった。
レジスタンス(抵抗)。押し合う相手との反発するパワーそのものをからだの中を通す感覚。発展して、合掌で圧力をかけても力は自分を回って循環していくような感覚を持てという。その状態の人と同じ姿勢でマッサージ、誘導する。最後には相手がいるときと同じ感覚でいままでのを一人で行う。
〈クリエイション〉
「床をつかんだ時につながった(when grabing the floor, it related.)」午前中のテクニック(development technique)と非常に関係があるといっていた。
力の流れとからだの中心を感じたまま動く。異常な難しさだ。フォーカスは同じままからだにドローイングをするようなコンタクトもした。ひとりが景色(landscape)になってみたり、「とめる/いく(hold / go)」の指示をされてみたり……。クリエイション。
その後、視感覚とからだ・こころ内面に関するリサーチをした。スナップショット(snapshot)というまばたきだけで、ぱっと見て空間を把握して目的物を決めて目を瞑ったまま触りに行く。昨年の彼の仲間のリサ・ネルソンに近いようなワーク。
3日目 4月18日(日)11:00~13:00島田櫻さんがファシリテート役に。
WALK 歩く止まる。自分の観察。
『歩いているとき他人やその他日常に起こっていることも大切にしなさい。』
RUN 走る止まる。対面で歩く関係性。手を握って歩く関係性。
PASS THE BOTTLE 2人1組で1人がペットボトルを持つ中心を大切にしながら。もう1人は動くペットボトルを見る。次はペットボトルを渡しながら2人で動く。それでホールドの指示あり。いまいちうまくいかない。今度はもっとゆっくり、ホールドも長く止まるという指示。うまくいく。静止は美しい。完全なる異空間を創り上げていく。
SLOW MOTION & STOP なにかがゆっくり生まれて静止固定するまで、ぼくらはその感覚を共有し酔いしれた。感覚は五感それぞれではなく、すべてが一致したようなものだった。
まなび「contribute」
シェアする中でダニエルは「僕には責任がある。僕にはパフォーマンスやワークショップによって日常ではない特殊な感覚の生まれる空間を用意することによって社会に貢献する最低限の責任がある。それをどこまで感じるかは個人に委ねられるそれは責任ではない」と言っていたと思う。たいへん感動し影響されています。ダンスが文化としてあるためには人々に貢献できる可能性があるべきだ。
3日目 4月18日(日)14:00~16:00なにもない空間がある。「Enter. Phase 1. Phase 2. Phase 3.」というコールがかかる。Phase1は第1段階ってことらしい(これ、ぼくにはかなり新しい)。
目を閉じたまま
なにもない空間に入る
Phase 1では止まる
Phase 2では動きの可能性をセンセーションを探す
Phase 3ではそのセンセーションで動き出す
それを様々に環境を変えておこなった。
なにをどう扱えばリサーチになるか。もっと平たく言えば、どういう環境を与えれば特殊な感覚が生まれるのかをさがしているようにぼくには見えた。
この日は2人組・対面にて目を閉じ手に触れるリサーチをしたのだが、「こうできる、こうもできるとかアイデアを試すのではなくセンセーションに従って」というファシリテートに場が締まる。場のしくみと動きのアイデアはまた違う。何を取り扱い、何を扱うべきでないか。
ワークでは「おもしろい」とだれもが言う。笑うこともある。興味深いことも、エキサイトすることも、静かにエキサイトするおもしろさもある。自分のコントロールの範囲を超えた違和感をおもしろいものとしていかに享受できるかとった人間の内容も必要である。それはダンス(舞うこと)ではなくではなくダンス(舞うこと)を通してのアートの感覚だ。
ワークやリサーチを進める上の方向付けとして、何が興味深いとり扱うべき次元で、何が扱うべきでない次元であるか判断する能力が必要になると思う。今回の暑い夏、そこに圧倒的な力の差を感じた。ファシリテート自体にクリエイションのヒントがある。一般人と天才の差より、天才と天才のほうがはるかに大きい……、らしい。
僕らはリサーチに取り組む姿勢という点で失敗していたんだと思う。
「知識」を持った自分の愚かさをまず学んだ。知ってしまっている・やったことのある・見たことがあると思って知識にしがみついてしまい見縊ってしまう愚かさ。それは学びリサーチする姿勢ではない。自分たちの取り組むことや、ダニエルに対する等身大のリスペクトが足りない。それは愛情のようなものかもしれない。櫻さんも終わり際に「もっと歴史を知ったほうがよいのでは?」とおっしゃっていたが、それが気になったんだと僕は感じた。彼らはやさしい人たちなので違和感を察してくれていて悩んでくれていたと思う。
新しいことをすることだけがリサーチではない。日常生活しながら時を経過し、また再び改めて同じリサーチをシェア(共有)する。勘違いかもしれないがそれが学びであるともいえる。
研究のような大学の権威的機能、社会的には学びや貢献の場としての機能を持つには、外国人ゲスト講師からダンスだけを学ぶよりもっと多くを学び、独自に文化を発展更新し続けないといけない。自分たちで考え研究しないと文化ではないと思う。貢献する。ダンスも学びたいと思われるようにならないと正当に評価されない。外国人を呼んだときだけ更新されるようなものは独自の文化ではない。
オーガニック 今回参加してダニエルと接していたら、オーガニックという単語が浮かんできた。オーガニックというのは、人間も自然の一環の一部で、自然の法則に基づいた生き方をしていくことが必然的に幸せになるという考え方。彼らのダンスにはそういう考えに近いものがあるのではないかと思った。オーガニックムーブメント(自然の法則に沿った動き)と人間の内なる力を継続的にリサーチしていきたいと思った。
最後の言葉はすてきだった。『リサーチに参加してくれてありがとう』
(2010年4月16・17・18日 参加)
(写真:津田英理子)
洞ヶ瀬哲哉(スヌー)
富田林市役所職員。共同アトリエ此花メヂア在住。所属LALE、TEAM DANS。ダンスネームはスヌー。学生時代はストリートダンスで賞を得たり、メディア出演した後、自分のやりたいことを追求するためにSALSA、AFRICAN、コンテンポラリーダンス、後にアート方面に参加。所属の此花メヂアではワークショップやイベントなども精力的に行っている。
此花メヂア http://medias.sitemix.jp/ / http://blog.livedoor.jp/utinton/
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