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【暑い夏10】shin-biの照明が見せてくれたもの
2010年07月12日
G こどもとおとな 子どもと大人で楽しめるダンスクラスです。フェスティバルの名物男(?)「パジャマおじさん」とサボテンのはにはにくんがダンサーのおともだちを紹介していく4日間。からだをつかって自分のからだや人のからだを知ったり、表現することをこどもも大人も一緒にする中で、こどもたちの豊かな表現や、年齢を超えたコミュニケーションの難しさも楽しさも知る場です。パパもママもおやじもじいじもばあばも大歓迎!
NUNO BIZARRO ヌノ・ビザロ (フランス/アンジェ)
NUNO BIZARROヌノ・ビザロ(フランス/アンジェ)
アンジェ国立振付センター附属コンセルバトワール講師。リスボンにてコンテンポラリー・ダンス、即興を始める。’90年よりポルトガルの数名の振付家の作品に参加。近年はベルギー、ドイツ、フランスにてグザビエ・ルロワ、ボリス・シャルマッツ、メグ・ステュアート、マチルド・モニエなどの現在ヨーロッパで最も先鋭的な作家の作品に出演し、エマニュエル・ユインとはいくつかのコラボレーション作品を創作している。フェルデン・クライス・メソッドに精通している。
5月1日から4日まで、暑い夏の「こどもとおとな」クラスがcocon烏丸のshin-biスタジオで開かれました。「こどもとおとな」クラスでは、5歳から小学生までのこどもと、18歳以上のおとなが一緒にからだをつかうことを楽しみます。
わたしは全ての日程に参加したのですが、今回はヌノ・ビザロさんが講師を務められた、2日目のワークショップで感じたことを中心に記述しようと思います。
* その他の日程につきましては、写真やレポートを以下のブログにアップしております。どうぞご覧ください。
『dance×【京都の暑い夏】ふらふらへろへろ日記』
「こどもとおとな」クラスの会場、shin-biスタジオの照明は、何気ない光景をなんだか特別なものにしてしまう。場がきらきら輝いて、とてつもなく大切なものを目撃してしまったような気持ちにさせるのだ。
5月2日のワークショップでは、特にその傾向がみられたように思う。その日の講師は、フランスから来たヌノ・ビザロ。このクラスには初日からの参加者が多く、前日のワークを通じ親しみが生まれたのか、お互いにリラックスした様子でストレッチが始まった。からだを撫でたり、ゆっくりのばしたり。のんびりした雰囲気のなか円になり、猫の鳴きまねをしながらぐーっと体をのばす。案外からだがのびて、きもちよい。猫はこんな気持ちでいるのかと思う。こどもたちは「にゃあにゃあ」「ぎゃおぎゃお」と大騒ぎ。猫のポーズを保ったまま列をつくり、その下を交代でくぐりぬけることになると、騒ぎは一段と大きくなる。それに伴い笑顔も増え、場が輝きはじめた。
次に参加者全員で手をつなぎ、円をくぐったりして遊ぶ。こどもたちは元気いっぱいで、勢いよく人と人の間に突っ込む。そうしてできたややこしい形のままで、壁際の箱に移動し、みんなで入る。狭くて狭くて、人と人との距離が一気に近づき、呼吸や体温が感じられて、何といっても暑い! くすくす笑いが止まらないまま、休憩へと入った。
休憩ではAちゃんが得意のブリッジを披露し、そのまま歩けることも判明する。他のこどもたちも我先にとブリッジをはじめ、講師のヌノがすごく驚く。ヌノも一緒にブリッジをすると、こどもたちとの距離がさらに縮まったようで、やわらかい空間の肌理がさらに細かくなったように感じられた。
撮影:国頭郁美 | 撮影:小鹿由加里 |
休憩が終わると、今年の暑い夏で、わたしが最も美しいと感じたシーンを生み出したワークが始まった。まず参加者が2組になり、スタジオの両端へと分かれる。それぞれから1人ずつ前に出ると、目を瞑ったまま他の参加者にぐるぐると方向を変えられてしまう。そのまま歩き出し、もう片方から歩き出してくる人と握手をするという内容だ。見守る側は、指示を出してはいけないようだ。
まずはこどもから。目を閉じたままで所在無さげに、とぼとぼと歩き出す様子は、見ているこちらがはらはらしてしまう程だ。どこかにぶつかったりはしないだろうか、開け放しているドアから外に出ていってはしまわないだろうか。なにより、ずっと出会えなければどうしようか。そんな思いばかりが行き過ぎる。短いけれど、長い時間。特に珍しい光景ではないのに、どきどきする。ここの特別な照明のせいか、ひとつひとつがドラマチックに思える。かけがえのないシーンのように思える。
撮影:久保花子 |
しかし静かに見守っていると、徐々に2人の距離は近づき、少し手先が触れたかと思うと、次の瞬間にはしっかりと握手ができていたのだった。見守る者のふーっという大きな吐息と共に、拍手が起こる。
ああ、こうして人は出会うのだと、わたしは理解した。目を閉じていて、閉じられていて、方向さえ判らなくても、じりじり進んでいれば必ず出会えるのだ。出会えたときの2人の笑顔から、出会うことの喜びがひしひしと感じられる。出会うって、ほんとうに奇跡みたいなものなのだ。ほんとうは、きらきらしたものなのだ。と同時に、見守る側の心が押しつぶされそうな感覚も忘れられないとも思う。親がわたしを見守るのもこんな感じだろうか。だとしたら、悪いなあと感じる。ごめん。いや、しかし、この感覚があるからこそ、出会えた喜びが倍かそれ以上に感じられるのかもしれない。それを知っているからこそ、黙っていられるのかもしれないな。
出会おうとする2人を見守る緊張から解き放れると、場は一気に和らいだ。周囲が自然な方向転換を促すので、目を閉じていても危なくないようだし、どうやら必ず出会えるようだ、という認識が生まれたのか、次のペアからは大きな動きが目立つようになる。そして、やはり、必ず出会う。出会う楽しさを積極的に楽しむようになったようだ。そうしているうちに、こどものペアが終わり、おとなの番になる。パジャマおじさん(通訳の坂本公成。初日のワークをパジャマおじさんとして担当)が目を閉じ歩き出すと、前日のワークですっかり馴染んだ相手だからか、ヌノの少しの促しで、こどもたちは積極的にいたずらをはじめる。パジャマおじさんの横で手を叩き嘘の合図をしてみたり、少し触ってみたり。雑巾を触らせてみたり、引っ張ってみたり。見ているこちらも思わず笑ってしまう。
しかし、こどもって、すごいなあ。わるいなあ。Oさんの「こどもって基本的に残酷だよね」との言葉が頭をよぎる。大人はそれを隠しているだけなのか? そして、やはり出会いにくいのか、時間がかかる。いや、でも、現実ってもっと邪魔が入っているよなあとも思う。もっと多くの人がいるし、雑音はすごいし。ipodなんか聴いちゃってるし。携帯見たり、今日のタスクの配分考えたり。色々しているし、されているし、出会うことに専念していないよなあ。出会うことが第一目的なわけではないのだけれど。
撮影:久保花子 |
次の大人ペアが始まっても、こどものいたずらは変わらなかった。いや、他の大人も積極的にいたずらをはじめた。みんなわるい顔をしている。だからか、ペアはなかなか出会えない。みんなが思う存分いたずらをした後、ヌノが撤退を命じ(たように思う)、ようやく2人は出会えた。大きな拍手と共に、みんなの笑顔が場を包む。
最後のワークは、ペアをつくり、目を閉じたままお互いに振り付けを教えあうことだった。目を閉じたままだから、相手の動きをよく知ろうと必然的にからだが近づき、呼吸まで共にしようとしているかのように見える。静かな空間の中で、時折笑い声が響く。すると、自然とこのワークに「出会い」のその後を想像させられてしまう。ヌノが音楽をかけ、それに合わせて動くことになった途端、「その後」がダンスに見えてくる不思議に、なんとも言えぬ感動を覚えているうちに、ワークショップは終了したのだった。
(参加日:2010年5月2日)
撮影:久保花子 |
国頭郁美(くにとう・いくみ)
広報に特化した製作者になろうかしらと思っている卒業できない大学生。今年の暑い夏で写真に目覚めたかもしれない。ブレブレな写真も味があって良いじゃないかと思っています。それだけよく動いてるってことで。
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