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【暑い夏10】京都の暑い夏を見学した。
2010年07月4日
F ビギナークラス Beginner Class コンテンポラリー・ダンスって何? どんなことするの? そんな疑問に応える、毎年大好評の通称「サラダ・ボール・プログラム」。ダンスに興味ある方へのイントロダクション・レッスンです。世界で活躍する「暑い夏」人気講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができるプログラム。ワークショップ終了後には講師との交流の場「アフタートーク」。そして、講師とスタッフ&有志による「懇親会」へと流れ込みます。身体的にも知的にも刺激的な〈場〉です。
エマニュエル・ユイン(フランス/アンジェ)
フランス・アンジェ国立振付センター(CNDC)の芸術監督。造形作家や音楽家など異なった分野のアーティストとの共同作業を精力的に行うなど、鋭い批評的まなざしでダンスの再構築を進める彼女は、ドミニク・バグエ、トリシャ・ブラウンなど多くの著名な振付家の下で踊り、エルヴェ・ロブ、オディール・デュボックなどと共同作業を行う。’94年にはヴィラ・メディチ海外研究奨学金を得てヴェトナムで創作。ボルドー美術館、ヴェラスケス美術館、ベルサイユ宮殿などでのパフォーマンス企画も多数。’01年にはフランス政府派遣アーティストとしてヴィラ九条山に滞在。09年はモンペリエ・ダンスフェスティバルにて上演を行なう。
撮影:津田英理子 |
「京都の暑い夏」。関わるのは3年目。1年目は通りすがり。公開パフォーマンスを見た。サッカーから題材を得たダンスパフォーマンスを面白いと思った。2年目はビギナークラスを通しで受講した。ダンスっていろんな種類があるんだなってことに驚いた。そして、それを頭ではなく、自分の体を通して感じることができた。そして今年。今年はビギナークラスをひとコマ受講。ひとコマ外から見学した。「京都の暑い夏」との関わり方。このレポートは、「見学」という関わり方からのものである。
ビギナークラスの会場は1階のフリースペースだった。ドアが重い。ワークショップに参加するならまだしも、見学だけで入ることって気が引ける。また、ドアの重さが気が引けるのを助長する。中に入る。他にも見学の人がたくさんいてホッとする。ドアは重たいけど、京都の暑い夏って開かれた場なんだなって実感する。
見学だから端っこに座って、参加者の様子を観察する。談笑する人もいれば、思い思いにストレッチする人、体を動かしている人がいる。いかにもダンスやってますという体の柔らかい人もいれば、いかにもストリート系ですというノリのすごくいい人もいる。体ががちがちで、普段ダンスと馴染みないんだろうなって人も見受けられる。みんな思い思いにレッスン前のひとときを過ごしている。
講師のエマニュエル・ユインが部屋に入ってきた。「先生」っていう感じではない。アンジェ国立振付センターの芸術監督だそうだが、「芸術監督」って感じもしない。ワークが始まった。2時間のワーク。エマニュエル・ユインのワークは、こうしなさいああしなさい、という性質のものではない。それぞれの欲求を汲み取るもの、それぞれが感じたことを大切にするもの。そういうワークだったように思う。その後で休憩を挟んでアフタートークが入る。ただ、今回はワークの途中からアフタートークが休憩なしに始まる感じになった。
アフタートークというと、講師が話して受講者はそれを傾聴するって印象がどうしてもある。仮に何人かの人が積極的に質問しても、一部の人は積極的で、他の人はそれを聴いているって構造がほとんどのように思う。が、今回のアフタートークは違った。それが非常に興味深いものだった。まず、講師が一方的に話すことをしない。エマニュエル・ユインは言う。「皆さんが私から何かを得る場でもあり、私も皆さんから何かを得る場でもある」と。そして、受講者にワークを通して感じたこと思ったことのアウトプットを求める。得てして、こう問い掛けられてもすぐにアウトプットできるものではない。勇気がいるし、大概緊張して思っていることを言葉に出来ないもの。が、このアフタートークは違う。受講者もどんどん発言する。例えば隣の人の発言に対し、ニュアンスがちょっと違っていたら、「私はちょっと違うんですが……」とすぐリアクションする。もちろん、全員が発言した訳ではない。が、外から見ていて気付いたことだが、発言しない人も全く受身になっていなかった。トークに参加していた。ワークは2時間だった。そしてトークは1時間以上、盛り上がった。
なぜ参加するか、人それぞれで違う。そして、参加した理由、その人のそもそも持ち合わせている感性によって感じること、ワークを通して得るものも違ってくる。ダンスのワークショップを受けて貴重な経験をしたな、と思うことがある。が、経験することと、何かを得ることって別のことだと思う。言い換える。講師から何かを得るということと、講師からヒントを得て自ら何かを掴むということは違う。エマニュエル・ユインのワークは意図的に後者を狙ったものであった。なぜ、アフタートークで、全員が能動的にその場に関わるということが可能だったか。考えてみると、ワークで、彼女が、各個人が自らで何かを掴むことを求めた。彼女は答えを示さなかった。参加者がそれに応え、受身ではなく、能動的に場と関わった。そのことが大きいように思う。そして、その空気が、休憩を挟まないことによって、アフタートークにも続いた。それが理由ではないか。
見学後の感想。外から作業を見ることって面白いことだと思った。例えば、ワーク前の準備の時。それぞれの体の動きを見ていると面白い。ひとりひとり、体が違う。そして、思い思いに動かしているからこその面白さがある。個人的な印象だが、パフォーマンスで体を動かす時、他人の目を意識しているからか、体が100%素直にはなっていないように思う。でも、準備で体を動かす時、思い思いに動かす時、体が素直になっているように思う。その人らしさが出ているように感じる。それが面白い。
見学は面白かった。が、欲求不満が残った。ワークで参加者ひとりひとりが積極的に参加している様、アフタートークで積極的に関わっている様は、このワークショップが魅力的なものだったことを示す。それが、外から見るとよく分かる。が、魅力的に思えれば思えるほど、自分が参加していないことの悔しさを感じるようになる。外から見るとよく気付く。が、一番魅力を体感できること。それは参加することそのものである。そのことを切に感じた。
(2010年4月29日 参加)
撮影:津田英理子 |
たかたゆうすけ 京都に惹かれ、何の縁もない京都に無理やり移ってきました。パリに惹かれ、フランスのことを研究しています。そして、ダンスに惹かれ、暑い夏のドキュメントボランティアに参加しました。心の底から惹かれるものって、そう出会わないと思います。だから、惹かれたものを大切にしたいって思っています。(キーワード:フランス文化政策、神戸大学国際文化学研究科)
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