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【暑い夏10】熱いエリックおじさん
2010年07月12日
C-3 エリック・ラムルー 体が衝動的に、直感的に反応していく瞬間、エネルギーが混じり合い、交換され、豊かになるいくつもの分岐点を経験します。他者と次々に交差するなかで、その状態、関係性、変化を身体でとらえつつ、個人固有の身体が次の歩みへと向かい、ダンスが生まれていく衝動や過程を探っていきます。2010年5月3日、今年もショーイングが終わった。今年で3回目。がむしゃらについていった1回目。オーディション込みだったので、楽しめずぐちゃぐちゃになってしまった2回目。フランスのカーン国立振付センター(CCNC/BN)での『just to dance…』を終えての、3回目。純粋に楽しめたなぁ。マイペースに、冷静に、周りを見ることも、見られることも楽しんだ。
ERIC LAMOUREUX エリック・ラムルー (フランス/カーン)
カーン国立振付センター芸術監督。カンパニー・ファトゥミラムルーをエラ・ファトゥミと共同主宰する。優れた身体能力に裏付けられた大胆なムーブメントと、高い音楽性に支えられたロマンティシズム、そして実験精神に基づいたオリジナリティーの高い振付/美術で、’90年バニョレ振付家コンクールに『ユザイス』でデビューするや、アヴィニヨン演劇祭、リヨンビエンナーレなど一躍注目を浴び、国際的に活躍している。’99年フランス政府派遣アーティストとしてヴィラ九条山に滞在。日、仏、コンゴ3カ国共同製作作品『Just to …』を上演中。
エリックのワークは、フロアから始まる。ウネウネ、ゴロゴロと静かに身体を床に這わせる。深い呼吸の中、力まず、突っ張らず、等速で移動していく。エリックのワークは、エネルギーの方向性が重要視されているように思う。だんだん動きのエネルギーが高まってきて、立体的に、音楽的になってくる。こうなると、静かだったエリックもエンジンがかかってきて、ドカーンと爆発し始める。
「Laaaaaaaaaaarge!!!!」
「Puuuuuuuuuuush!!!!」
「Noooooo!! tension!!!!」
「Noooooo!! paawer!!!!」
「Breeeeeeeeeeeeth!!!!」
「Shaaaaaaaa!!!!paa!!!」
繊細なムーブメントに、ダイナミックなもの、そして、むちゃくちゃに体を投げだしてしまう事もやってしまう。それを、大声を出しながら、シンプルにムーブメントの肝を伝えていく。最終的には、言葉よりも擬音語ばかりになってしまうのだが、それがなにより体の音のような感じがしてすっと理解できる瞬間がある。そんなエリックのパワーを受けて、受講者のテンションもどんどん高くなっていき、楽しい瞬間たちがたくさんやってくる。
撮影:津田英理子 |
最初の2日間は、エリック流ワークを8割、残り数十分でショーイングのためのクリエイションを行う。今回のクリエイションでは、二人組みで手をつないで横並びになっているところから始まり、一方がターンをしながら相手の左から右へと移動をする(クラス内呼称:バジック(たぶんbasicのこと)。これを繰り返しながら、シンプルなターンに小さなディティールを付け加えていく。スピード、間、移動した相手の手をとるのではなく、腰を取ったり、首を取ったり、目は合せるのか、合せないのか、回転をしながら小さな変化が生まれることを楽しむ。手と手を繋いでいても、二人の距離で見え方が変わってくるし、腰と腰を合せるとどう見えるか、首と首だと……等、いろいろ試していく。シンプルに、一緒に歩いて移動したり、すれ違ったりするだけでも、なにかが見えてきて、やっぱり楽しくなってくる。笑って楽しいとか、面白いから楽しいも良いけれど、静かに、内側からやってくる楽しさというのは、本当に愛おしいものだと感じる。それぞれのペアは、ダイナミックに、コミカルに、繊細に、それぞれのストーリーを築きながら動きを発展させていく。それを講堂内に描く大きな楕円に沿って、振付化して組み立てる。今年は、人数が多すぎたせいもあって、エリックが全体を細かくチェックできなかったので、ペアそれぞれが責任を持って取り組んだだろうし、それによって二人の独自性と独立性が生まれ、いい意味でアクがあって面白いものになっていった。
日にちが進むにつれ、クリエイションに割く時間が増えて行くので、どんどんのめり込んでいき、ショーイングに向けての緊張感も徐々に見え隠れしてくる。この緊張感も、やはり愛おしいものだと思う。
ショーイングの構成は、
①ペアを一つずつ見せる
②すべてのペアがそれぞれの振付をする
③最後は、ベイシックな回転をゆっくりから、全開ハイスピード、限界まで上げきる。
④限界までいって、内から生まれてくるものに身をゆだねて、インプロで踊る。
の大まかに4つに分かれている。
①はゆったり、各々のペースでできるので楽しい。②は、前後のペアとの兼ね合いや、瞬間的に二重円になったりするので、遊びの要素が強かった。③は、音楽に引きずられて全開ハイスピードまで行くと、線の世界が見えてきたり、体のなにかがずれてきたり、内側からこみ上げてくる気分の悪さがあったりと、本当にわけのわからない状態になってしまう。それが終わってインプロタイムになっても、いつもどおり踊るのでは何か違う感じがして、ふらふらとしていると、おなかの辺りに回転の残りものを感じてくる。それが聞こえてくると、体が「やるか!」と動き始めてくれて、どこかに連れて行ってくれる。そこからは、あんまり覚えてないけれど、ふらふらと楽しく踊っていた気がする。
ショーイングはたくさんの人が見に来てくれて、楽しかった。大人数でドサーっと踊ると舞台とは違ったエネルギーが生まれるし、ライブ感があって面白いなと思った。ライブ感は大事だ。中で見ている人にはどう見えたのだろうか。こっちが見えている世界と、観客の世界はぜんぜん違うのだろうし、感想を聞ける機会がなかったので、それだけが残念だったなと思う。
来年も、エリックおじさんが来るなら、叫び声を聞きに来たいなぁと思う。
※このくるくる回る動きのモチーフは、十数年前にエリックとエラ・ファトゥミのデュオで使われたもの。作中では、このムーブメントに対して、コンセプト、意味合いがあったらしい。今回は、くるくる回りながら、生まれてくるエネルギーをそれぞれのペアが互いの関係の中で変換し、成形していって、限界までぐるぐる回った後の「何か」を見たかったと言っていた。
撮影:津田英理子 |
辻本佳(つじもと・けい)
三重大学在学中にダンスを始める。’08 「京都の暑い夏」 京都×アンジェ交換研修生制度に参加。 ’09 「京都の暑い夏」 主催オーディションに合格し、カーン国立振付センター Company Fattoumi Lamoureux振付作品『Just to Dance』のクリエイション・ツアーに参加。ただいま京都に潜伏中。
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