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【暑い夏09】身体からはじまる信頼
2009年06月27日
F(ビギナークラス) イニャーキ・アズピラーガ コンテンポラリー・ダンスって何?どんなことするの?そんな疑問に応える、毎年大好評の通称「サラダ・ボール・プログラム」。ダンスに興味ある方へのイントロダクション・レッスンです。世界で活躍する「暑い夏」人気講師による様々なスタイル、考え方のダンスに触れることができるプログラム。ワークショップ終了後には講師との交流の場「アフタートーク」。そして、講師とスタッフ&有志による「懇親会」へと流れ込みます。身体的にも知的にも刺激的な〈場〉です。
イニャーキ・アズピラーガ (Bergium/Brussel ベルギー/ブリュッセル)
身体と身体が限界において対峙する際に生まれる測り知れないエネルギー。その未知のエネルギーを循環させその渦に人を巻き込む彼のクラスで、動くことへの衝動を抑えることはできない。ベルギーを代表するカンパニー、ウルティマ・ベスの振付アシスタントをつとめる。ニード・カンパニーやIMPULS TANZなど多くのヨーロッパのカンパニーにレッスンを提供している。パフォーマー、講師として数々の経験に裏打ちされた魅力溢れるレッスンが好評。
Photo by Fumiko URUNO |
ビギナークラスでイニャーキは、よくconfidentやconfidenceということばを用いていた。trustとは言わない。その違いを気にし出したのはワークショップ終了後で、どういうことかと考える。手元にある電子辞書によると、confidentという語には信頼という意味はなく、「(人が~することを)確信する」という意味らしい。confidenceという語には「(理性、証拠に基づく)信頼、自信」とある。逆に、trustには「(直観に基づく)信頼」という意味がある(以上、ジーニアス英和辞典第三版より)。イニャーキがconfident, confidenceとtrustとの意味の違いをはっきり理解した上で用いていたかどうか、私は知らない。しかし、ワークショップを振り返ってみると、彼がその違いを踏まえた上での「信頼」を提示していたような気がして、それをはっきりと記しておきたく思うのだ。彼のワークは、私の「信頼」の定義を更新させたから。
例えば、目を閉じて走るワーク。走る私を受け止めてくれる人がペアで居てくれるのは分かっているのだが、ものすごく怖い。横の走者とぶつかったらどうしよう、転倒したらどうしよう。受け止めてもらえなければ、どうしよう。だって、知らない人が受け止めてくれるのだから! 「ひゃー」と思ってしまい、順番を遅らせたが、どうしても順番は回ってくるので走らなければならない。ゆっくりと走るが、やはり怖い。しかし、怖がる自分を面白くも感じられる。腹部に衝撃を受けて目を開けると、受け止めてくれたひとはとても真剣な表情をしていた。ああ、止めてくれてありがたいな、良かったと思う。
次は、私が受け止める番だ。ペアの人と手をつなぎ、走る人の進路をよく見極めながら、能動的に受け止めにいく。走者はどこで受け止めてもらえるのか分からないから、結構な力でぶつかってくる。でもこちらも必死だ。手を抜けるような関係ではない。走者はきっと不安だろうから絶対に受け止めてやる! と思う私がいる。なんだか、すごく相手(=走者)を大事に思っている自分に気づく。きっと、自分の抱えていた不安の分だけ支えようとしているんだろうな。そして順番が来て、走者と受け止めを幾度か繰り返す。だんだん走る際の不安は薄れ、スピードは速まる。それでも受け止めてもらえる安心感。「受け止めるひとを信頼して走れ!」なんてイニャーキが言ったかどうかは忘れた。でも、私にはそんなメッセージがあるように聴こえたのは確か。
最初、私は(ほぼ初対面に近い)人に対する信頼などなく、すごく怖さを感じた。しかし、だんだんワークをこなすうちに、他の受講者の方々を自然と信頼するようになった。「信頼しているから、何かができる(何かをする)」などという方法しか知らなかった私は、イニャーキのクラスを通じ、「何かができる(何かをする)から、信頼する・できる」という「信頼」に至る逆の方向性に気づいた。イニャーキがtrustではなくconfident, confidenceを用いる理由に思い至る。私たちはきっと、こうして身体で、相手が~するという経験を確信してから信頼を始めるのだ。もしかすると、ハイパークラスでは、イニャーキはtrustを使っていたのかもしれない(ハイパークラスに参加された方、いかがでしたか?)。身体を通じた確信を多く経験したひとは、直感で「信頼」を掴めるようになるのか? -この疑問は、自分で解くべきものだし、私にしか分からないものだ。私の「信頼」の定義なのだから。これからも、彼のワークショップに参加する度、私の定義は磨かれていくことだろう。
Photo by Fumiko URUNO |
国頭郁美(くにとう・いくみ)
自分の言葉で大好きなダンスについて語れるようになりたいと思い、暑い夏終了後ドキュメント班に参加志望しました。思いを余すことなく伝えられる、自分の文体を探しています。物忘れが激しいのを治したいです。よろしくお願いいたします。
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