2009年06月29日

はじめに
今年で14年目を迎えた通称「京都の暑い夏」。参加者からの体験レポートに加えて、アンケートデータからその軌跡を振り返ってみたいと思います。尚、このデータ解析は「暑い夏事務局」と「dance+」が行っているアンケートのうち「dance+」が行ったアンケートを元データとして行っています(毎年このフェスティバルではワークショップごとにアンケートのご協力をいただいていますが、dance+ではフェスティバルそのものというよりも、ダンスの持つ可能性についてもう少し堀り下げてお伺いしています)。

今回使用したアンケートは昨年作成した「どんな人たちが参加しているのか」に重点を置いた内容に加えて自由意見を多く拾えるように設定し、継続参加の方からワークショップ参加後の生活の変化などについて質問する項目を追加しました。昨年はアンケートを回収できた大半の方から「参加して良かった」との感想をいただきましたが、やはりワークショップ直後では日常生活そのものへの変化が読み取りづらかったため、継続参加者の方からワークショップ後についての変化点を伺うことにしたのです。今回はアンケート回収率が低かったため、主な解析は参照にとどめることとし、言語データをもとにこのワークショップフェスティバルの一端をふりかえってみたいと思います。




参加者について

photo: I.Takeda
photo: I.Takeda

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〈参加者数〉 09年の参加のべ人数は1,552人で、昨年の1,736名に比べて184人減少している。不況の声があちこちで聞かれていますが、このフェスティバルにおいても影響が出ているのかも知れません。

〈年代層・職業〉 今回のアンケートは35名分にとどまり(主な回答者はD1コンタクト基礎、Gこどもとおとな、D-2ジャムなど。ダンスの初心者が多いと推論)ましたが、参加者の職業バラエティの豊かさは昨年に引き続き興味深い点だといえるでしょう。回答者の半数近くをそれぞれ20代30代で分けあっていることなどから学生よりも社会人が多くなっています。興味深いのは40代50代の回答者が8名含まれているという点。参加者の年代層は多岐に渡っているとみることもできそうです。回答者の職業を並べてみます。

会社員(9名)主婦(2名)自営業(1名)華道・英語(児童)教授(1名)医療関係(1名)学生(1名)販売(1名)財団職員(1名)大道具・演出(1名)団体職員(1名)大学教員(1名)経理関係(1名)カフェ店員(1名)フリーター(1名)ヨガインストラクター(1名)OL(1名)公務員(1名)アロマセラピスト(1名)
〈参加割合〉 回答者に会社員の方が多かったこともあり、受講クラスの全日数に対しての参加割合は「1日しか参加出来なかった」方がもっとも多く13名。その次に多かったのは「通しで参加出来た方」10名。極端に回答が分かれる結果となったことが興味深いですね。来年度はぜひ回答率をあげてこういったデータの深堀を実施してみたいと思います。

〈性別・居住地・運動習慣〉 回答者の性別は男性が13名、女性が21名という内分けになり、居住地は京都・大阪・兵庫・滋賀・奈良などの開催地近隣が31名と大半を占めていました。他には愛知県が4名、東京都1名、宮城県1名など。
運動習慣は「ほぼ毎日ある」人が5名と「定期的にある」人の11名をあわせるとほぼ半数になり、社会人として働きながら運動している人たちが積極的にワークショップに参加していることが伺えます。この傾向は08年度にも見られたもので、ワークショップ参加者は何らかの形で運動習慣を持った人が多いといえそうです。下記に回答者の運動習慣の主な内容をご紹介します。

・ ウォーキング
・ ダンスのトレーニング
・ パフォーマンス、ワークショップ
・ フラメンコ、たまにフットサル
・ 武道、ダンス
・ プールいったり稽古場いったり。あと能動的に自転車。
・ ジョギング、ウォーキング、ラジオ体操(会社で毎朝)、自転車通勤(10分・晴天の日)
・ 高校のダンス部指導/徒手格闘
・ NHK教育TVを見ながら一緒におどる。ラジオ体操を真剣に行う。
・ 週1回のWS(演劇のストレッチなど)や、寝る前はゆったりと。
・ コンテンポラリーダンス。演劇のWSなど
・ あるく、はしる、ストレッチ
・ 子供と遊ぶ
・ スポーツ
・ アロマ施術、ヨガ
・ こんなワークとか。ジョギングとか。



海外講師について
photo: I.Ikeda
photo: I.Takeda

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このワークショップフェスティバルでは、海外から講師を招いてのクラスが充実しているのも特徴ですが、この特徴については「違う地域のダンスに触れることができる」23名、「世界水準のダンスに触れることができる」16名との回答があり、支持されているといえそう。講師の言葉はともにワークショップに参加している通訳者を介して参加者に伝えられますが、講師の意図が伝わりにくいと思ったかという質問に対しては「おおいに思う」がゼロ、「やや思う」が2名。未回答が半数近かったことから正確な判断は出来ないが、大きな問題にはなっていないと思われる。
下記に「思わない」と回答した方のフリーコメントをご紹介します。

・ 通訳もわかりやすく、子供に関しては身ぶりでも理解出来ていると思う。
・ 英語圏の人でないのでシンプルな英語だった。
・ 私自身が素人なので…
・ 体を使うので、言葉が少なくても理解し、共有できた。
・ ボディランゲージ、あるいは講師のやっていることをみることで伝わってっている。
・ カラダや目で伝わっちゃう。



このフェスティバルで得られたもの 1
アンケート

複数回答で「得られたもの」について回答していただいた結果は左記のグラフの通り。1番回答の多かった「講師や参加者とコミュニケーションがあった」についてのフリーコメントは下記のようにワークを通してふれた他の参加者とのつながりの温かさや、いっしょにワークに参加したことによる共有感覚などの心地よさなどがあげられているようです(フリーコメント1)。満足度(質問は「このフェスティバルに参加した甲斐はありましたか?」)は「おおいにあった」「あった」が34名、「まだわからない」が1名という結果になっています。「おおいにあった」「あった」という方の回答内容は下記(フリーコメント2)をご覧下さい。                                 

フリーコメント 1
・ 単なる会話。
・ 昨年も参加したので、昨年の参加者との再会がうれしく、今回もよく遊んでもらえた。
  皆さんの成長を感じられた。
・ いろんな人と踊ることができて、知らない人と踊ると、いつも新しい自分と出逢える。
・ ジャム。去年よりよい雰囲気だと思う。
・ 例と同じことがあったのと、それ以外には受講中のワークや言葉のやりとりでそう思った。
・ びわ湖のほとりで談話。しあわせーー。
・ 初めて会った人ばかりだけど、同じ目的があることですんなりと心が通じている気がした。
  年齢、正確、性別関係なく。
・ からだで♪
・ お弁当を一緒に。
・ ボディサロンに出展していたので、話もできたし、身体状況も知ることができた。
・ 自然に話をすることができた。
・ 仲間と一緒に楽しむことができた。
・ おとなとこどものクラスだったので、他のこども達と一緒にする事ができ、
  とても楽しいものでした。
・ 呑めた。カンパーイ
・ 話が聞けたこと。
回答率の高さは数値データとしての有効さを示すものですが、アンケートの重さは例え少数意見であっても非常に核心をついた言葉が出てくるところにもあると思います。上記に見られるような珠玉のコメントはダンスの持つ可能性や力を自らの身体で体感された方たちの貴重な知見です。


このフェスティバルで得られたもの 2
ワークショップの大切な指標として考えられるのは「ワークショップ以後」にもどのくらい参加した人たちに影響を与えることが出来るかということがあげられると思います。そこで、このアンケートでは次のような質問を参加者にお願いしています。

「このワークショップフェスティバルへの参加を機に、新たにチャレンジしてみたいことなどができましたか?」この質問に対する回答は、「できた」19名、「まだよくわからない」15名となっています。ワークショップ直後ではその影響が測りづらいということもあるということが昨年のアンケートから推論されていましたので、今年は次のような質問も追加しています。

「前回までに参加された経験がおありの方におたずねします。参加されたことにより、その後のダンスライフ、あるいはふだんの生活の中で、何か変わったことがもしありましたら、お教えください」。回答内容を下記にご紹介します。

フリーコメント 2
・ 日々生活の中で、ワークショップごっこをしたり、空想ごっこが豊かになった。
・ 動きが広がった。
・ 演出する上で役に立った。公演に生かせたと思う。
・ 身体や意識の使い方の理解が深まって、とても快適な人生をおくっている。
・ 体をうごかすことを意識しはじめた。
・ 人生が豊かになった。
・ やわらかと動けるようになった。
・ 特にないが、ほんとうはあるはず。
・ たぶんなにかいつもじょじょに変わっているはず。
・ コンタクトを味わったことで、身体が身体に慣れていくことができたと思う。
  空間や空気について、思考できる時間ができた。
最後の質問「来年もまた参加しようと思いますか?」については28名の方が「はい」と回答。他の7名の方は「まだよくわからない」という結果でした。




まとめ

今回の解析は、あいにく回答率が低かったこともあり複雑な解析を行わず、主に言語データからフェスティバルに参加している人たちがどんな人たちなのかに焦点を当てた解析を行いました。さまざまな職業や年代層が参加するこのフェスティバルの意義=「ダンスが芸術表現として成長していくこと、人や機会がつながり、有機的に広がっていくこと」を今年も実感出来たように思います。回答率が低い分は、ぜひドキュメント班によるレポートをご覧下さいませ。「ダンスはあまり経験がないけど」「ダンスが大好き!」「書くことは苦手だけど」さまざまなきっかけからこのフェスティバルについて関わったボランティアスタッフの熱い思いをお感じいただけると思います。

まだまだ未熟な解析者のレポートを最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。ぜひ、感想やご意見をお寄せ下さいませ。来年度の運営に反映していきたいと思います。どうぞご期待下さい!



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アンケート設計・解析:亀田恵子(かめだ・けいこ)
大阪府出身。2005年日本ダンス評論賞第1席受賞、評論活動をスタート。2007年京都造形芸術大学の鑑賞者研究PJT.に参加、Arts&Theatre→Literacyを発足。会社員を続けながらアートやダンスを社会とリンクすべく模索する日々。
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