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【暑い夏09】踊る私の心況報告書
2009年06月26日
C-1(クリエイション) チョン・ヨンドゥ 西洋のコンテンポラリーダンスの幅広いテクニックと東洋的な身体をあわせ持つ彼独自のワークショップです。「知覚の方向性」「時間の構成」「呼吸と動きの関係性」などに焦点をあてていきます。クリエイションの一部は、2010 年当フェスティバル での上演作品にもつなげます。暑い夏後半のある日、エリック(C-2)のショーイングに出られないことが決まった私は、なんだかんだ言ってもみんなと一緒に踊れないことが寂しくて、子どもみたいに涙が止まらなくなりました。止めようとすると溢れてきてしんどいので、流れるままにほっておきました。幸いビデオサロンの暗がりの中、スクリーンに見入る格好で泣きながら昼食を口に運ぶ女を気に留める人はいないです。お昼が終わったらチョンさん(C-1)のクラスにいかねば。ぐずぐずの顔をトイレの洗面所で洗いました。1人なのがよくなかったです。チョンさんにも「ももにはショーイングは無理だから……」て言われたら、と考えると、涙の堰はぼろぼろに崩れてもうどうにもなりません。でも、負けたくなく、諦めたくなく、立ち止まりたくなかったので、どう見ても不細工な顔をゴシゴシ洗って、パチパチ叩いて、もう始まっているだろうクラスの扉を開けました。がんばるもん。
チョン・ヨンドゥ (Korea/Seoul 韓国/ソウル)
西洋的で高度なダンスメソッドと明確なコンセプトを併せ持つと同時に、東洋的に抑制された繊細な動きが彼の才能を裏付けている。Doo Dance Theater主宰。韓国新進気鋭の振付家である。韓国を拠点に世界各地で活躍する。’04年にはリトル・アジア・ネットワークでアジア各地を巡回。韓国でも多くの賞に輝く他、「横浜ダンスコレクション・ソロ&デュオコンペティション」にて、「横浜文化財団大賞」ならびに「駐日フランス大使館特別賞」を受賞、フランス国立トゥルーズ振付センターにて研修する。’08年「踊りにいくぜ!」(栗東、東京、広島)など来日多数。
いつものフリースペースにあったのは、なんか見覚えのある光景でした。ん? これは去年ビギナークラスでやっていたsitting騎馬戦じゃない?
説明しよう。sitting騎馬戦とは2チームに分かれて対戦するゲームである。まず、各チームごとに1名の親方を決める。親方の負けはチーム全体の負けとなるため、親方はその他の兵隊とは違いチームの運命を左右する重要な存在である。次に体勢を整える。体育座りの状態で腿を両腕で抱え込むようにして、膝下で両手を組む。移動はsittingの名の通り座ったまま、膝から下の足だけで敵陣へと乗り込む。そして、親方を守るように対陣を組み、敵と戦うのだ。戦い方は全体重で押すか、足で蹴る、押す、引っ掛けるなどして攻撃。相手の組んだ腕が解けたり、腕や背中が床についてしまったらアウトとなる。勝負は親方が陥落するか、全員が敗戦するまで戦い続ける。という一見ダンスになんの関係があるねんと思われるようなゲームです。懐かしい。
そんなゲームが始まろうとしていた最中、遅れて入ってきた変顔の私を皆は特に何も聴かずに親方に任命してくれました。いつも振り覚えの悪い私のために時間を割いてくれた同じクラスのお仲間達です。トイレの涙とは違う涙がこぼれそうになるのをこらえて、いざ、出陣ッ!! 大人気ない必死の戦闘、笑い声と叫び声が、無駄に気持を暗くしていた雲をふっ飛ばしてくれました。
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今年の暑い夏、私には1つの目標がありました。大嫌いな振付に挑戦することです。私は制作なんでそんな踊りに必死こく必要ないんですが、まぁ、ちょっとしたきっかけがあったわけです。
今年の暑い夏の始まり(D-1/D-2)、びわ湖ホールで踊っていたとき「ああ、もっと踊りたい」と思っていました。と同時に、私は今、そういう自分の欲望に忠実な道を選択しているかな、と疑問に思いました。私はよく、ダンスは好きだけど舞台は好きじゃないからダンサーにはならないと言い続けてきました。その一方で、踊りたいと思うのに制作という裏方を選び、ダンサーという選択肢を選ばなかったことがどこか“逃げ”な気がしていました。どういうことかというと、運痴な上にコンタクトからダンスを始めた、つまりバレエやモダンで培われるようなダンスの基礎技術や感覚がない私は、実は自分のテクニックの未熟さと向き合うことから逃げているだけなんじゃないかという思いがありました。そいう自分がイヤで「ほな、向き合ったろうやんか」という訳で、だーーーいっ嫌いな振付のあるC-1やC-2クラスの受講を決め、来年の暑い夏15周年記念のオープニング公演の出演が約束されたC-1のオーディションにエントリーすることにしたのです。
結果は完敗でした。オーディションは途中で諦めました。C-2は最初に書いた通り強制退去でした。無理やった。私はやっぱりダンスはダンスでもインプロが好きやわ。インプロの幅を広げるためのワークとして型をこなす作業をすることは受け入れられるけど、振付をこなすために型を落とし込むことがどうしても苦痛や。だってそれは欲しくもない枠組みに自ら飛び込むようなものやから。枠の中でこそ見えてくるものがあるのかもしれないけど、今のところそんな枠組みに縛られることは、ダンス以外の日常だけで十分です。踊るときはワガママでいたいし、何に縛られることなく広がり続ける線を追いかけたい。ダンサーとかダンサーじゃないとかどうでもいいし、私は自分が納得できるあり方で踊りたい。これからも踊りたくなったら踊ります。制作もします。これから先、何がどこでどうなるかわかりませんが、踊りたい気持を大切にしながら何事も進めていきたいと思います。では、皆様、来年15周年も楽しい会場で、または宴席でお会いしましょう。お元気で。
大籔もも(おおやぶ・もも)
昨年から暑い夏のスタッフであり、宴会部長です。ダンスカンパニーschatzkammer制作者、音楽とダンスのジャム会coron dance&music運営者、時々ダンスのWSナビゲーターを務める踊り好きです。
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