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松山大学ダンス部!

2009年08月8日

私たちは松山大学を応援します!


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Text: 森本アリ
インタビュー構成: 森本万紀子

「全日本高校・大学ダンスフェスティバル」という大会が、18年間、神戸文化ホールで行われている。「コンクール部門」と「参加発表部門」に分かれており、前者は予選・決戦を経て、選ばれた受賞校が最終日に大ホールでの特別プログラムに出演する。また、その模様は毎年NHKで記録/放映されている。

僕ら夫婦がこの催しに関心を持ち、観に行ったのが、2年前の第16回大会。元々は、楽しいダンス基礎知識の名著『西麻布ダンス教室』のリーダー桜井圭介氏が、大学ダンスが今「面白い!」と言っていたのを小耳に挟んだからだった。その時は、「参加発表部門」を高校・大学20作品ずつぐらい観た。衝撃だった。特に高校生部門のはつらつとした元気さには、作品のクオリティーに比例することなく、ダンサーの輝きに目頭を熱くさせられることもしばしば。小難しいコンポラに観客として矛盾を感じる事も多くて敬遠しだし、安全パイの海外からの話題作/大御所作品以外は、昔のミュージカル映画鑑賞が主なダンスとの関わりだった当時の僕には、ストレート超ど級だった。ここには頭を通過する前の動く喜びがある。もちろん玉石混合。ダサくて観られないものも、高校生がやると、喜びとにじみ出る人間性が、作品を「輝く青春の1ページ」な眩しい作品に変えてしまう。

そんな中で、松山大学ダンス部が参加発表部門に出品していた『end roll』という4分の作品には、時空に違う完成度(人間性・身体・振り付け・構成・音……、すべて)があり、個人的五感を刺激しまくられ号泣してしまった。去年の第17回大会では「コンクール部門」大学部門決選16作品を鑑賞。やはり、松山大学ダンス部『応答せよ!こちら自分』は群を抜き、さらなる号泣だった。松山大学ダンス部は、この『応答せよ!こちら自分』で特別賞(独創的な発想作品に与えられる賞)を、そして第16回大会コンクール部門出品作品『揺れる葦』でも特別賞(ユニークな発想に対して)を、2年連続受賞している。

今年は、この「dance+」の取材のこともあり、3日間通った。初めてコンクール/参加発表の両部門とも鑑賞し、大会の傾向が分かってきた。日本の6,70年代全盛の創作ダンス/モダンダンスの伝統が根強く生き続け、「コンクール部門」にはそれが色濃く反映され、「コンクール部門」で評価が難しい、ジャズダンス、ヒップ・ホップ、ファンクほか諸々の受け皿となっているのが「参加発表部門」だということ。真にコンテンポラリーなのは、松山大学ダンス部と同じ松山で隣接している愛媛大学ぐらいだということ。

で、やっぱり松山大学ダンス部。

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今年のコンクール部門出品作品『サイトトレイン』。作られてない素の一人一人の自覚と自信が頼もしい。表情だけでも目頭が熱くなる。紐2本がいろんな場面を仕切り、比喩し、なおかつ抽象的なまま一本の軸をを作り、少人数~28人の群舞(起こってる事全ては把握できない複雑さから一直線の美しい平面構成)まで、バリエーション豊かな構成美。ダンサー達が漏らすささやきのような歌声。動きもコンタクト、跳躍、フロアワーク……、他校のモダンダンスにはないボキャブラリーが豊富で飽きない、気持ちいい。空気にブラボー歌にブラボー紐にブラボー体にブラボーブラボーブラボー 

僕には大傑作の『サイトトレイン』は今年無冠。創作ダンス/モダンダンスを逸脱してしまっているからだろう。部員にとっては、この大会が「夏の甲子園」。彼らの発表の場はここと松山市内にほぼ限られている。やはりわびしい。

松山がコンテンポラリー・ダンスの土壌として面白いという声は聞かれる。松山大学ダンス部の定期公演が11月に松山であるのだけど、これ、全ダンスファン必見なのじゃないだろうか?

このwebマガジン「dance+」に関わる事になり、僕らがまず出した企画が「松山大学ダンス部」の取材+レポート。この企画で松山大学ダンス部員、監督、コーチらとも知り合うことが出来、ダンス部の過去現在未来にも触れ、この大会内の突然変異的なこのダンス部には「深い洞察と断固な意志」も伴ってることを知り、僕ら夫婦は声高に宣言。「私たちは松山大学ダンス部を応援します!」



というわけで、この全国高校・大学ダンスフェスティバルのために神戸を訪れていた松山大学ダンス部、総勢54名。さすがに全員に話を聞くのは無理なので、代表の4回生10人にインタビューしてきました。大会初日、コンクール部門の予選が終わった直後、決選に通るかどうかの発表前のドキドキな休憩時間に、時間を割いてくれたのでした。

2005mmd01松山大学ダンス部代表:
荒瀬佳奈・河野優・小山朝子・高田李沙
田中哲也・西絵理加・西村唯・森千晶
安永晃子・和田隆明(五十音順)

聞き手:森本アリ・森本万紀子











どんなふうに作ってる?


アリ ああやってフェスティバルを見ると、僕には松山大学って突出してるのね。全然別の次元なのよ。まぁ、それもやってる方が感じで分かると思うねんけど。

全員 え~~(笑)?

アリ 僕は素人な動きっていうのも好きで、訓練されてないっていうのも含めて素晴らしいんだけど、その自覚も他と全然違うような感じすんねんけど。振付家がいて、全員が振りを決められててやってるようなわけでもなく、わりとみんなで作ってるような感じも受けるし、一人一人がキャラが立ってるっていうかね。今のままのコンポラにちゃんとなってるのって松山大学だけやと思うし。そういう土壌の説明みたいなのってあったりする? 

マキ まず作品自体はどうやって作り始めて、作り上げていくんですか?

和田 この神戸の大会で言うと、コンクール部門の方は毎年4回生が創ってて、参加部門の方は3回生が創ってて。別にそうじゃなくてもいいけど、なんとなくそういうふうになってるんです。 それで、全員で話し合ってまずテーマみたいなものを決めて、まぁそれも先生やコーチにボツられたり(笑)することもいっぱいあるんですけど、そうやってまずテーマみたいなものから固めていって、もしテーマが決まらなかったら、何かこういう動きがしたいとかだけでも決めていったりして、そこからちょっとずつちょっとずつ広げていく感じですかね。

小山 誰か一人が全部振り付けするんじゃなくて、出し合って寄せ合って(笑)、やる感じです。で、それをコーチや先生にアドバイスしていただいて、直してもらって、っていう感じで。

和田 僕らはすごい頭が固くって(笑)、これって思ったら、こうしか見えなくなってくることがあるんで、そこをぶっ壊してくれるのが先生やコーチで、だいぶ助けられて。

小山 だいぶ助けられております(笑)。

和田 普段の練習から、一連のムーヴメントのルーティーンみたいなことを、何かの作品を創るとかいう目的ではなくやってたりもするし、あとは、なんとなく遊びで即興とかやってたものが、あれ良かったよねとか、使えたりするものもいっぱいありますね。

アリ 今日の作品『サイトトレイン』の作り方とかは?

荒瀬 『地下鉄』(ジミー著/小学館刊)っていう絵本に出会ったことがきっかけになって、まず‘電車’っていうアイデアが最初に生まれて。電車、駅、地下、階段、入り口、行き先、目的、人生、って風に、いろいろとイメージの連想ゲームを繰り返しながら、それを動きに置き換える方法を探して……。

小山 でも、なかなかうまくいかんくって、先生やコーチに見てもらっても、全然伝わらんくって。ボツられてばっかりで、描いたイメージを動きに置き換えるってどういうことなんか、全然わからんくなって。かなりピンチやったよね。

和田 そこで紐(作品中の小道具)を使ってみたらって言ってくれたのがコーチだったんですよ。


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アリ そこから紐がどう使えるか、紐は線路にもなって、座席にもなってとか、文法増やしていったりもするの? 

西村 インプロをいっぱいしたよね。

田中 そんなにこだわって、絶対これじゃないといかんとか考えずに、紐を持って遊んでみたら、自分は遊びよるだけやけど、他の人が見よったら「今のってこんなイメージが湧くね」とか言われたりして、「へぇ~」って発見がいっぱいあって。

どんな練習してる?


マキ 普段の練習は、例えばバーレッスンとかから始めるところも多いと思うんですけど、どういうことやってるんですか?

田中 最近バレエもときどきしよるよな(笑)。

小山 大会前とか、自分らの公演前以外は、だいたい週3回がレギュラーのレッスンになってて、監督の先生がしてくれるレッスンを受ける日と、コーチの人がやってくれるレッスンの日と、学生だけでやるレッスンの日があって、そのコーチと監督のレッスンはもう全然それぞれいろいろあるんですけど、うちらでする時は……。 ウォーミング・アップして、筋トレして、‘流し’(フロアの端っこから端まで走ったり、ジャンプしたりする練習)をして、あとは最近フロアが面白いね。フロアワークの流しもします(笑)。ごろごろって転がっていったり、びょーんって跳んで床に入ってみたり(笑)、とかいうのを、前から後ろにサーッて。またサーッて(笑)。


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アリ それとかも学生内で決めるの? こんなんやろかって、面白い動きがあったら全員でやって慣れとくみたいな。

和田 そういう時もありますし、コーチや監督のレッスンで教わったことの復習みたいなこともやったりしますね。

小山 それが終わったら、だいたい季節ごとにイベントがあって、夏だったら神戸(全日本高校大学ダンスフェスティバル)、春だったら新歓(新入生歓迎パフォーマンス)とか、秋だったら自分たちの自主公演とかあって、その作品創りになったりします。

全国高校・大学ダンスフェスティバルってどう?


マキ この全日本高校・大学ダンスフェスティバルにはずっと出品してるそうですが、私も松山大学はこの中ですごく突出してると思うんですけど、このフェスティバルに出す理由みたいなものは何かあるんですか?

和田 人それぞれけっこう違ったりもすると思うんですけど……(笑)。

  やっぱり全国規模の大会なんで、‘試合’だと思って来てるんで。

小山 自分たちの創った作品が、全国とか出した時にどこまで通用するのかとかっていうのが知りたいっていうか、県外の人(審査員の先生も含めて)の作品に対する価値観ってどんなのかなとか、全然知らない人に、うちらの思いってどんなふうに届くんかなとか……、そういうのもあって、多分出たりする。

田中 いろんな人にも見てもらいたいしね。

マキ そうですね。それでわたしは松山大を知ることができたので(笑)。

松山で開かれてるワークショップってどんな感じ?


マキ 松山って、わりとコンテンポラリーダンスのワークショップが開かれているという話を聞くんですけど、印象深いもので何かありますか?

全員 にちべ~~(笑)。

アリ・マキ ??

和田 今年の2月に「日米振付家交換レジデンシー・プロジェクト」というものがありまして。これは、日本人から東京と大阪の振付家が一人ずつ、アメリカから3人の、計5人の振付家が参加して、アメリカの都市数箇所で滞在創作やパフォーマンスをした後、日本では、京都と松山で同様の活動を展開する……、というJCDNの企画だったんです。主催してくれた方が、松山のダンス・シーンのひとつとして、‘大学生ダンス’のポテンシャルに着目してくださって、大学生対象でこの企画をやってくれた。

小山 これはすごい奇跡(笑)。

和田 あと、コンテンポラリーのダンスカンパニーで有名なコンドルズの主催をしている近藤良平さんのワークショップが、本当に偶然の機会で松山であったことがあって。行った人、俺だけ? 何人かおる。

田中 あとは春口に、「京都の暑い夏ワークショップ」から「Dance Workshop Program(通称DWL)」のサテライトプログラムの一環として、外国の先生が来てくれています。監督の先生の企画で、一般の人と一緒に僕らも受講するんですけど、僕らにとっては「春の強化練習」みたいな感じです。

マキ 「京都の暑い夏ワークショップ」の本体プログラムを受けるために、京都にもけっこう来てるっていう話を聞いたんですけど。

西  去年、ヴィンセント・セクワティ・マントソーというアフリカンダンサーのを受けました。わたしファンなんです(笑)。自分が1回生の時に3回生の先輩が創ってくれた作品が、そのヴィンセントのワークショップから触発されたエネルギーやエッセンスを取り入れたみたいな感じの作品で、すごい楽しくって、で、本物ってどんなんだろうって思って受けたら、もっとすごくって、あぁ楽しいなぁと思って。ね! たまらなく楽しくて。

小山 めちゃくちゃ楽しかった。ヴィンセントかっこいいです。かわいいし(笑)。(その影響は)多分作品にも出てると思うし、自分の踊り方に一番影響を受けてると思います。

ほかとは違うなっていう意識ってある?


アリ なんか他とは違うなっていう意識ってある?

小山 地方なのに、ワークショップとかをいっぱいやってくれるのは、先生とかコーチが呼んでくれるという環境の良さというか、地方なのに条件が揃ってると思って、それを、機会があれば吸収できるいいところにいるんだろうなっていうのは思います。

田中 それから、僕らって‘へぼい’っていうこととかも特徴(笑)? ダンスはへたくそなんで。特に技術はないんですよ。

全員 ない(笑)。

田中 それ以外で勝負しなきゃいけないんで。

アリ そこで、表現する時に何が出ればいいとかっていうのはあったりするのかな。人が受ける時に何が伝わればいいとかさ。楽しそうだったらいいかなぐらいの感じとか、あるじゃない? ものによっては完成度とか、こういうテーマが伝わればとかっていうところもあるやろうし。このフェスティバルってわりと宗教系のテーマが強かったりするようなものも多いけど、松山のは、すごい自然っていうか、日常生活っぽいままの延長みたいな……。

全員 おぉ、すごーい(拍手)!

アリ 僕が言うんじゃなくてそっちから言ってよ(笑)。そういう感じの、あるじゃない。なんか。

和田 テーマはあるんですけど、それをわーって見せて‘理解’してもらうんじゃなくて、自分たちの作品を観てくれた人がいろんなことを思ってくれたらもうそれで全然嬉しいし。

田中 題名は『サイトトレイン』やけど、別に電車に見れなくても全然僕ら的には構わなくて、何か見てる人の心が動いてくれたら、それでいいです。

マキ 動きましたね(笑)。

和田 今回のこの作品の場合だったら、本当に見た人の受け止め方は様々だと思うので、それで何か分からないけど面白かったとか、その中の一部でもよくて、あそこがすごい強烈に印象に残ってるとか、何かに見えたとか、いろんな受け止め方があると思っているので、僕らの中には核みたいなものはあるんですけど、それを直接伝えるというよりは、作品を介して、見てる人のいろんなイメージをふくらませてあげたい……、ん? わかんなくなってきた(笑)。っていうような作品になるようにやってきました。

(2005年7月29日 於:神戸GUSTO HOUSE)


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短い時間に、ほとんど「時間切れ!」な状態で上記のインタビューを終えました。松山大学ダンス部のみなさん、ほんとうにありがとう!

インタビューを終えて、この3年間わたしにはなんだか不思議でしょうがなかった松山大学ダンス部という現象のナゾが少しずつ解けてきました。毎年、学生の入学や卒業に伴って流動的にメンバーが変化していっているはずなのに、ビシバシ支配的な指導者に吸引されるわけでも、部活にありがちな体育会系のヒエラルキーにのっとって結束しているわけでもなく、30名もいる出演メンバーを、驚くほどフラットで多様に構成されていく作品の完成度=最高の未完成度は絶品なのです。全員野球ならぬ全員ダンスのふしぎ。(部員54人全員の誕生日を祝うらしいと聞いて納得もしましたが……)

でも、最後まで読んでくださった皆さんがいるとすれば、同じように感じるかと思うのですが、彼らのお話の中には「監督」「コーチ」そして「松山という土地」といった、松山大学ダンス部には欠かせないであろうキータームが随所に出てきまして、どうもその辺にも秘密があるのではと、さらなる好奇心がくすぐられ……。わたしの印象では、与えられたものを素直に吸収してすくすくと育った可愛い子ヤギたちが、身体も才能もエネルギーも、余すところなくのびのびと跳ね回っているように見えたので、その土壌がまたすごく知りたくなっちゃったんですね。

そして大会最終日、監督の大野八重子さんが、アポなしにもかかわらず、私たちのインタビューの申し入れに快く応じてくださいました。大野さんは、もうこころゆくまで、私たちの好奇心を満足させてくださいまして、あまりにも長いインタビューとなってしまったので、次号であらためてドッカンと掲載いたします。


松山大学ダンス部 (過去作品が動画で見られます!)
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~harai/circle/circle.html

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