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【暑い夏12】「世界と接続する瞬間/自愛を持つ事」

2012年07月15日

D-2 ノアム・カルメリ コンタクト・インプロヴィゼーション (基礎編)

テーマ:Riding the waves –波に乗る。

『ムーブメントの生み出すウェーブとは何だろう?カラダの内側でどういう風にしてそれを感じとるのか?世界にそれはどんな風に現れ、そしてそれを感じ取る能力をいかに発展させることができるだろうか?独り / パートナーと行う、様々なエクササイズを通じて、ウェーブを追いかけること、そしてそれを身体の内側で感じること、踊りながらいかにウェーブをキャッチし乗りこなすかを学びます。そしてそれはより自由で、より正確でより愉しいものになるのです。』(ノアム・カルメリ)基礎編では上記のテーマに基づき身体や感覚を開いていき、動きに親しみ、感じ、使うことを学びます。



prof_noamノアム・カルメリ NOAM CARMELI (イスラエル/テルアビブ)

コンタクト・インプロヴァイザー、武術家(合気道)、ボディーワーカー、そして建築家としても活動している。イスラエルの即興グループ“Oktet ” の創設メンバーで、北アイルランド“Echo Echo dancecompany” でも踊る他、ヨーロッパでの活動も精力的に行っている。現在イスラエルのCI アソシエーションの総監督、及びイスラエルコンタクト・インプロヴィゼーションフェスティバルのオーガナイザーを務める。CI、合気道、GAGA を学び続けるなか、ムーブメントの探求と融合、そしてコミュニティーの形成に積極的に臨んでいる。

 今回が初めての受講となった京都の暑い夏。

 私は、申し込み段階から一体どのクラスを受けたらいいのか、パンフレットがボロボロになるまで目を通し、受講ワークを検討した。慎重に検討した結果、ビギナーズクラスの通しはすでに満席となってしまっていた。なんてこった・・・と思いつつも、ビギナークラスを飛び飛びでチョイスした。ワークの日が迫るたびに高鳴る胸。一体どんな自分に出会う事ができるだろう? と期待で胸は膨らんだ。

 全部で5名の方のワークを受講した。どれも私にとっては新鮮で胸ときめいた。中でも惚れ込んだワークはノアムのワークだった。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 まずはストレッチも兼ねた体の力を抜く事から始まる。骨と筋肉の間が離れるように、チョコレートが溶けるように大の字になって寝る。自分で体の中のあらゆる部分を感じようとする。自分の体の内部を一致させる。自分の気づきや感覚。どういう感じか観察し、緩める事を助けてあげる。

このようにワークは緩やかに入っていき、確実な物へと発展して行く。

 私は、元々ダンスをしていた訳でもないので、どのように動くといいのか? きれいなのか? などは一切わからず、おもむくままに動いていた。ノアムはワーク中に丁寧な説明をしてくれる。骨の位置や、構造、役割について。それを知る事によって、正しい筋肉の使い方も教えてくれる。身体構造を知るにつれて、いろんな所に興味が発展していった。

 まさか自分がノアムクラスに毎日張り付くまでに至るとはこの時は想像もしなかった。だが、ワークを受けた事で私の中の何かが弾けた。まるでパチンと音を立てるかのように弾けたのだ。弾けたそれはもう止まらなくなった。ノアムの発する一言、一言が私にはとても貴重で、アフタートークでは一語一句逃さぬよう記録した。お陰でノートはビッシリとノアム色に染まり、時間を見つけては読みかえした。それは、今後の私を助けてくれる貴重なノートになった。

 ノアムのワークを受けて、自分の体の無限の可能性を感じた。今迄感じた事のない感情や感覚が生まれて、喜びとともに驚きがあり、とにかく衝撃の一言だった。ワークが終了しても高揚感が収まらず、どうしたらいいのかわからない程だった。

 来るべくして、ここに来たのだと、偶然でなく、必然であったと感じた。すべての動作には意味があり、しかし難しく考える事無く、感覚で動く事ができた。体中の不要物がとりはらわれ、そのなくなったスペースに新しい何かが肉付けされていく様がわかる。身を削った分だけ、得た物の大きさは計り知れない。私の人生において今後私を助けてくれる重要な事をたくさん教えてもらった。単に踊って楽しかっただけではない。自身の深部と向き合う事になった。

 ワークを積み重ねるにつれて、自分が踊っている感覚がある。すこしずつ、大胆になり欲もでてくる。あらゆる場面でコミュニケーションが発生し、自分が変わっていくのがわかる。不思議な拠点が出来上がっている。コミュニケーションを観察する上でもっとも興味深い事が、このワーク中に多くの場所でおこっていたのだ。

 ビギナークラス最終日を受講して、ノアムのワークは私にとって特別な物となった。さらにノアムのバックボーンを知る事で、私は彼のパーソナリティに非常に惹かれた。30歳で踊り始めた事、きれいにかっこ良く見せるだけのダンスに疑問を感じて、コンタクトに出会った際に、自分にはこれだ!と感じた事。建築家をしながら踊り続けてきた事。

 ノアムがアフタートークで言っていて印象に残った事は、他にもある。

「コンタクトは、どういう風に体の構造が繋がっているのかを伝えるのがヘルシーでクリア。コンタクトの大切な事は、人々の壁、ヒエラルヒー、ピラミッド組織をいかに壊していけるのか。良い/悪い、男/女のいくつもの対比はない。垂直ではなく、いつも流れている。コミュニケーションを求めている。変わって行く事を求めている。即興というのはどういう風に感じているのか? お互いはどう感じているのか? 突き詰めて行けば、どう見えるかじゃない、どう感じるかだ。自分を開いて、ムーブメントを通じてわかる。トライしていこうとする事は、体の中でムーブメントが通り抜けて行く事、ムーブメントを感受する事。形とかムーブメントを作り出す訳ではない。体の中で感じとりたい。」

などなど・・・この他にも書ききれないほどにたくさんある。

 ビギナークラスを受講した後に、私はまさかのアドバンスクラス(D-3応用編)に申し込んだ。まともにダンスをした事のない自分が、アドバンスクラスを希望する事すら想像もしていなかったが、何かの中毒にでもかかったかのように、私はノアムのワークにどんどん引き込まれていった。動けば、動くほどに体が喜んでいるのがわかった。間違いなく疲労は蓄積する一方だが、踊る事でそれは解消されていくという初体験も経験した。今迄は筋肉痛時に運動を重ねると、余計に体調はひどくなる一方だったが、ノアムのワークでは正しい筋肉の使い方を学ぶ事ができるので、私の体はきっとそれに反応し、痛さを乗り越えて正しい位置に戻ったのだろう。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 アドバンスクラスは既に満席で1度しか受講ができなかったが、ワークが受講できなくても私は毎日見学に訪れた。見学していると体が勝手に反応し動いていたりもした。

 ワークでは合気道の要素も取り入れていて、これは介護や介助にも使える! と思う動きがあった。正しい位置で動けば自分よりも体重の重い人を持ち上げたり、背中に乗せたりする事も容易であるのだ。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 さらに、特に床を押す作業は最も大事に感じた事だ。”リリース”&”プッシュ”だ。押したり引いたりする事でどこがリリースできているのか、できていないのかの、違いを感じるとる事が重要なのだ。これを感じる事ができたら自身の動きにも変化がでて、無理なく自然に動く事ができる。   

 ちなみに私は暑い夏のワーク後に、舞踏を習い始めたのだが、舞踏のワーク中に、床を押す事で自然にでてくる身体の動きによって助けられる事の多さにノアムに感謝をした。

 そしてもうひとつ大事な事は、センターを意識する事。これは何においても重要となってくる。センターを意識する事によって、間違った身体の使い方をせずに、安全かつ楽しく踊る事ができる。自分の体は自分で守る。これは森裕子さんからも教わった大事な、大事な事である。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 ノアムのコンタクトはアドバンスになると、グンと具体的な動きになってくる。昨日迄こんな事できると思ってなかったのに、できた!という達成感と充実感に満たされる。そしてまた新しい自分に出会える。

 低い姿勢から徐々に高い姿勢になり、ゆるやかなストレッチのような動きで身体をゆるゆるになったタイミングで、ソロを踊ってみて~と言われる。ソロなんて経験のない私だったが、驚くほどに体が動くので楽しくてしかたなかった。ソロやジャムでは、これからを織り交ぜながら、流れるように上下して踊るのである。この時にスムーズに表現できるように、毎日いろんな動きをレクチャーしてくれる。

 時にはとかげのように、蛇のように、赤ちゃんのように・・・これはすべてにおいて使える動きだ。一つ、一つの動きを丁寧に消化し、吸収して行く事で体は自然と動きをマスターし、はじめは見よう見まねだった動きも時間が経つに連れて自分の物にしているのであるのが驚きだ。決して難しいレクチャー方法ではなく誰にでもわかりやすい形で教えてくれるのもノアムのワークの魅力だ。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 上手い、下手なんて概念はどうでもいいのだ、と思った。どれだけ楽しんでできているかなのだ。時には上手く動きを消化できずに、悶々とする事もあったがそれも楽しさの一つであり、成長であると捉える事ができた。

 私たちが、普段身体に被っている「何か」を脱ぎ捨て、ありのままの状態で身体を世界に投げ出し、無心になって踊っている姿に真の美を感じた。見ていて目頭が熱くなるほどだった。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 今迄のダンスの概念を取っ払ってくれたノアムに私は心から感謝している。体が喜び、勝手に動き出し、そしてもっと踊りたい! ただ、踊る事だけではなく、見せるだけでなく、本当の自分と対峙し、対話し、心の声をきく。という気持ちにさせてくれた。

 それは苦しみや、悲しみをも癒し乗り越えさせてくれる力を導いてくれる不思議な力。ダンスという枠を超えた瞬間を私はワーク中に何度も体験した。これが「世界と接続する瞬間」であったと私は思う。ノアムは私にたくさんの世界を見せてくれた。そして、私は世界を見る事ができた。その力を与えてくれて、身につける事ができた。ノアムはとても大切な事をさりげなく教えてくれる。それらはすべて無駄な物でない。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 私はノアムからたくさんの贈り物をもらった気持ちになった。

撮影:地案絵里
撮影:地案絵里

 ワーク期間中、私は自愛をもって過ごせたと思う。それは今でもそうしたいのだが、ただでさえ自愛を持つ事が苦手な人間がわずかな時間でも自愛をもてた事は大きな進歩であった。ふと気がつくと、朝目覚めた瞬間にストレッチをしていたり、体を冷やさぬように気遣っていたり、心の声にも丁寧に耳を傾けてた。まさかダンスで自愛をもてるようになったなんて、不思議かもしれないが、そんな不思議な力が潜んでいるのが、京都の暑い夏なのだ。

(2012年4月27日、30日参加)

地案絵里(ちあん・えり)

デザイナー(Headdress and Accesories Designer)としての職業の傍ら、毎年作品を発表。(主に造形物、写真)やがて身体表現へ関心が広がり、京都芸術センターのWSでコンタクト・インプロヴィゼーションに出会い衝撃を受ける。その後、明倫お花見コミュニティダンス公演に出演し更にダンスに引き込まれてゆく。冨士山アネットショウイング出演。いろんなWSを受講し、身体表現×コミュニケーションについての関心も高く様々な視点から表現そのものを体感し見つめている。制作に関わる事も置く様々な現場に飛び込み学ぶ日々。8月に劇団公演に出演。秋には舞踏での公演も控え邁進中。



ビギナークラス参加の某教授曰く、「きゃりーぱみゅぱみゅみたいな見た目で、すごいよあの子は。」実際会ってドキュメントの相談をしたら、何をふっても「できます」「手伝ってくれる人を知っています」という高スキル、いや高「メディア力」の持ち主。講師であろうがフェス・ディレクターであろうが「持ち上げて下さ〜い」と呼び止めては、持ち上げられたり持ち上げたり。そうやって至る所で「できない」を取っ払ってゆくんだろうなと思わせるスーパーガールでした。(編集部より)

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