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【暑い夏11】めざめる五感

2011年06月13日

A-2 アリーヌ・ランドゥロー 身体への意識を高めることで、自分自身が望む動きへと身体を近づけていきます。即興的なムーブメントと、振付けられたムーブメントの間を行き来するワークを行います。自分自身の動きと、他者の動きを往還すること。そうする中で自己と他者への意識を高め、重心、空間、そして内なる音楽性への意識を発展させていきます。 (編集注:東日本大震災のため来日を中止したレスコプ氏の代講を、ランドゥロー氏が務めました。経緯は、事務局のウェブサイトをご覧ください。)
plof_alineALINE LANDREAU アリーヌ・ランドゥロー (フランス/アンジェ) 大学にて哲学を専攻した後、アンジェ国立振付センター・コンセルヴァトワール(CNDC)に入学。以降、同センター芸術監督エマニュエル・ユインの作品や、ロイック・テュゼ、ヴィンセント・デュポンの作品をヨーロッパ、フランス各地で踊る。’06年『Monster Project』を通じて、坂本公成+Monochrome Circusとのコラボレーションを開始、日仏で作られた2作品に出演。2009年にはCNDCの「振付家養成コースEssais」に進み、「知覚のプロセスを探求する」という考えの元に、コレオグラフィーについての探求を進めるとともに、エクスペリメンタル・ミュージック、舞台美術、パフォーマンス、インスタレーションやヴィデオなどとの様々なコラボレーションを展開した。一方で、この数年は、ポストモダンダンスの与えた財産や身体技法、そして即興的な文脈に対する感心に則りダンス指導にも携わってきた。新進振付家による共同体”Météors” での創作活動に従事している。

 『京都国際ダンスワークショップフェスティバル』に参加するようになって、今年で足かけ5年になりました。今年は個人的に怪我をしてしまったので「体験をレポートする」というスタンスではなく「何が起きていたか目撃する」というスタンスで書いてみたいと思います。

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撮影:庵雅美

 アリーヌさんのワークショップを見学したのは、彼女のワークショップの3日目(全体で9日間ありました)。ワークショップの会場となった京都芸術センターフリースペースの扉を開けて中に入っていくと、すでにワークはスタートしていました。私は参加者のみなさんがいらっしゃるフロアより少し高い位置の階段上に腰かけて様子を伺うことにしました。ワークは参加者がフロアの上を静かに歩いているような場面でしたが、空気がちょっと不思議な感じです。見た目にはとても静かなのですが、参加者の集中度が高いので大変な熱量がそこには漂っているような雰囲気がありました。集中が生み出すエネルギーが参加者の目線の高さで静かに対流している・・・そんな景色が広がっていました。次に参加者がアリーヌさんの静かな声に従って動きだすと、空気もいっしょに動きだしました。もしこのとき空気に色をつけることが出来たとしたら、会場内には参加者の数だけ色とりどりなラインが描かれていたような気がします。歩き出すだけで、こんなにきれいな光景が生まれるんだなって驚きました。アリーヌさんは歩き続ける参加者に次のような言葉をかけていました。「wellcome・・・視界から飛び込んでくる空間にあるものを歓迎して身体の中に入れてみましょう。」「耳から聴こえてくる音も歓迎して。環境を知り、発見していきましょう。」「他の人の存在も忘れないで。」「舞台に立つダンサーは下を向いてばかりではないですよね?内側を見ているだけではないはずです。」「目に入ってくるものを捕まえるのではなく、歓迎していきましょう。」

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撮影:庵雅美

 この日の彼女のワークは、目を閉じたり開いたり、音を普段よりも敏感にして耳をすませたり、肌で触れたりというようなワークを通して、人が本来持っている「五感」を開いていくことを試みていたように思いました。その中でも特にユニークだったのは、後半に参加者たちがペアになって会場の外に出ていって展開されたワーク。ペアの内1人が目を閉じ、もう1人が目を閉じている人をガイドするのですが、ここでとても興味深いことが起きたんです。彼らにとっての「ガイド」は単に目を閉じている相手を連れ歩くことではなく、視覚以外の感覚で場にあるものを見るよう促すことだったのです。例えば、あるペアが会場から出ていくときのことです。ガイド役の人が会場の扉をそっと開けます。すると、目を閉じている人は頬に伝わる新鮮な外気や、一歩踏み出した足元の冷たい感触から自分が外に出たことを感じるわけです。そこから歩き出すと、さまざまなものがガイドを通して手に触れさせられ、自分が歩き出した場所にいろいろなものがあることを発見していく。これは、目を開いているときには当然すぎて見過ごしているものばかりだと思います。でも、目を閉じている人は何かを発見するたびに表情を輝かせているようでした。彼女の中で今、世界がどんなにイキイキと新鮮に受け止められているか、私は想像しただけで羨ましくなってしまいました。目を閉じて信頼出来るパートナーと歩く・・・ただそれだけで、日常空間が果物を切った瞬間の連続のように瑞々しくなってしまうことに驚かされます。

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撮影:庵雅美

 ダンスは、世界の鮮度を輝かせる旅なのかも知れない。そんな風に感じたワークショップでした。

(見学日:5月1日)

亀田恵子(かめだ・けいこ) 大阪府出身。2005年日本ダンス評論賞第1席受賞、評論活動をスタート。2007年京都造形芸術大学の鑑賞者研究PJT.に参加、Arts&Theatre→Literacyを発足。会社員を続けながらアートやダンスを社会とリンクすべく模索する日々。
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