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2011.3.5-6「劇団ティクバ+循環プロジェクト」         theater Thikwa+Junkan Projekt@ArtTheater dB

2011年03月1日

宣伝美術:砂連尾瞳
宣伝美術:砂連尾瞳

 2007年に日本で始まった循環プロジェクトと、ドイツの劇団ティクバの共同プロジェクトが、昨年のドイツ公演を経て日本での上演を実現した。
 発端は、循環プロジェクトでナビゲーターを務めていた振付・演出の砂連尾理氏が、2008〜09年に文化庁の研修員としてベルリンに滞在中、障がい者の劇団ティクバと作業を始めたことにある。dance+への寄稿「ベルリンゆらゆら日記」の第1回には、その手応えが書かれている。
「上昇し、エネルギーに満ちあふれているものこそ目指すべき身体なのだという発想がいまだに多くの社会で根付いているように思うのだが、それは一体どこまで 続けられるのだろう。もちろん、そんな身体があっても良いのだけれど、それだけじゃない身体、例えば彼等(注:Thikwaのメンバー)のような身体をもっと顧みても良いと思う。鍛えた 身体でなくても充分にコミュニケートし表現できる。そんな所から生まれる身体操作をいま自分は求め、考えたいのだなとつくづく感じる。」
 氏が振付家として評価をなしたダンスの世界、そして世間一般でも支配的な、”強い”身体、”できる”能力への志向。それとは違った方向性で活動してきた二つの運動体が、ここで合流することとなった。砂連尾氏は帰国後、2010年に循環プロジェクトのメンバーとともにベルリンを訪れ、共同作業の成果を発表している。
 その際、ドラマトゥルクとしてプロジェクトの展開に寄り添った中島那奈子氏が、価値観の軸を多様化する重要な視点を提供したと、砂連尾氏。「最初はティクバとの打ち合わせは、中島さんに通訳してもらっていたんだけど、ある時点で僕が自分の言葉で話すように促されたんです。その時に、『砂連尾さんが抱えているのは、言葉の障がいですよね』とも言われて。僕自身も、ある意味では障がい者だったってことに、無自覚だった。これは、日本でやっていては気づけなかったことだとも思います。」
「ダンスにおける老い」をテーマとする研究者でもある彼女は、老いや障がいを考える前提として、それらを包括する”弱い”や”できない”ということを考えてきた。「この場合、言葉が使えないということは、そこへの入り口になればいいなと思ったんです。国に限らず、違うコミュニティにいけば、その人たちの「言語」というものを理解しないといけない。わたしたちがやっているのは、身体表現でも言葉を使うのでも、お互いに理解したことを自分なりの”ことば”に置き換えていくということの繰り返しなので。実際には、ちょっと突き落としたところもあるんですけれど(笑)」
 自分なりに話をしていった中で砂連尾氏は、通じない中での試行錯誤が、一番一生懸命クリエイションしている実感があったと振り返る。「理解したことをどう翻訳するかという問題は、言葉も体も同じだってこと。それは他のメンバーにも言っています。今回きているティクバの3人とは、ブロークンな英語でも、だいたい通じ合ってきている。それは、無意識での探り合いや誤訳や想像を重ねてきたから。そういったやりとりで、どう関係をつれるかっていうところが、一番エキサイティングだと感じます。」
 今回は、切れのある動きで光っているダンサーの西岡樹里、なんだか不思議な装置を仕込んでいる望月芳則、怪しい動きをするミュージシャンと、新たなメンバーが加わった。それによって、(ミス/ディス)コミュニケーションの幅が広がるとともに、いわゆる障がい者の活動に向けられる福祉的な枠組みも突破しようというもくろみもある。
 中島氏曰く、「新しい文脈を作りたい、ということはよく言っていました。別のコミュニティのダンサーやアーティストが入ってくることで、今までのカテゴリー分けにとどまらない、新しい文脈ができたらいいなあ、と。障がい者のダンスやダンスセラピーというかたちで作るのではできないことが、砂連尾さんにはアーティストとしてあったと思うし、それだけじゃ超えられないものが実際にありますしね。」

(2月27日@しが県民芸術創造館)

取材:古後奈緒子


日時:2011年3月5日(土)~6日(日)
会場:ArtTheater dB 神戸
振付・演出:砂連尾理 
ドラマトゥルギー:中島那奈子 
舞台美術:望月茂徳 
演出助手:ゲルト・ハルトマン
出演:カロル・ゴレビオウスキ、 ニコ・アルトマン、 ゲルト・ハルトマン、福角宣弘、 白井宏美
   西岡樹里、 砂連尾理
※各回の終了後にはポストトークを行います。
■3月5日 15:00 西川勝(大阪大学CSCD特任准教授/臨床哲学)、池内靖子(立命館大学産業社会学部教授/演劇論・ジェンダー論)、砂連尾理、中島那奈子(進行)
■3月5日 19:00 古後奈緒子(ダンス批評/WEBマガジン「dance+」運営)、久山雄甫(京都大学/ドイツ哲学)、ゲルト・ハルトマン(演出家)、砂連尾理、中島那奈子(進行)
■3月6日 15:00 八巻 真哉(京都精華大学メディアセンター)、望月茂徳(立命館大学/インタラクティブメディア)、砂連尾理、中島那奈子(進行)


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