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大藪もも「もものフランス記 第4回」

2010年08月30日

「胃袋サポート係として参戦」


いよいよカーン国立振付センターの一大イベントDANSE D’AILLEURSが始まった。開催前から滞在して、制作の様子をお勉強するはずだった私は語学の壁にぶつかり、フランス&コンゴ人との国際交流に明け暮れていたんだけど(前回までの様子はこちら)、ホールで出会ったケータリング係のカリーヌに拾われて、私はフェスティバル開催中キッチンを手伝うことになった。ちなみにカリーヌは英語も堪能で、ロシア語も少し話せる上に超オープン・マインドで、スタッフの人気モノだった。しかし、キッチン仕事はかなりハードで、毎日朝は10時から夜の12時まで作業をしつつ、時々舞台を見に行くという暮らしが続いた。

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劇場は毎日、その日の夜の公演に向けて、設営、リハーサル、公演、撤収が繰り返されるので、キッチンでは朝早くから仕事をしているスタッフへの朝食サンドを用意し、昼食用のサラダや、夜の販売用のケーキを一日中焼いていた。日中はダンサー、スタッフが順番にロビーに設けられたキッチン・カウンターへ食事をしにやってくるし、公演が始まるとお客さん用にケーキやドリンクも販売するので、めちゃめちゃ忙しかった。私は足手まといにならないように細心の注意を払いながらも、食事をしにくるスタッフやダンサーとのやりとりを楽しんだ。

公演は毎日3回。19時ごろから始まって、23時ごろまで続く。メイン会場のHall aux Grangesには大小2つのホールがあり、他にも少し離れたところのホールもいくつか利用して、各国から集まったダンサー達の舞台が上演された。大抵の場合、一日のプログラムにメインホール以外での公演もあるので、会場が変わるたびに大勢の観客が大移動していく。23時ごろに公演が終わってからもロビーではダンサーや観客が飲み物や軽食を片手にワイワイと今日の舞台の感想を肴に盛り上がっている。キッチン・スタッフは0時30分には退散するけど、この時間になってもまだ残っている人は数名いたりする。ほんとににぎやかでパワフル。そんな毎日が5日間も続いた。

最終日。
ラストの公演は『Le diwan de Biskra』。アルジェリアの民族楽器の楽隊とインプロダンサーの舞台。ダンサーのパフォーマンスが終わった後は、楽隊の生演奏と共に観客も自由に踊ることができるという設えになっていた。私は最初、キッチンでまったりしていたけど、
ホールの扉が開いて、「もも、皆踊れるよ、踊らないの?」と声をかけられホールに飛び込んでいった。

場内はいつもの公演のスタイルとちょっと違って、舞台の両サイドにテーブル席が設けられ、飲み物片手にのんびりと見られる趣向になっていた。天蓋のような白い布が弧を描き、その下で楽隊の人たちが踊らずにはいられないようなリズムを奏でている。意外と、お客さんは見ている人ばかりでフロアーの人出はまばらだったけど、私は前夜祭のWS以来、踊りたくて仕方なかったので、音楽に身を任せてやりたい放題、汗だくになって倒れそうなくらい踊り狂っていた。そのうち場も馴染んできて、先ほどまで見ていたお客さん達も、公演を終えた各国のダンサー達も、大人も、子どもも、私も一緒になって息が止まりそうなくらい踊りまくっていた。

楽隊の演奏も終わり、お客さんも大分居なくなると、スタッフの打ち上げタイムに突入。先ほどのホールでは飲み物片手に、仕事を終えたスタッフが気ままに踊っている。ふと、キッチンで一緒に働いていたサンドラが「ももこっちおいで」と言うので、行ってみると、キッチン・スタッフや、事務方の皆がズラっとお揃い。ちょっと酔っ払いつつある頭で「ほへ?」と思っていると、「Present for you!!」といってお土産と皆のメッセージが入った手紙を頂いた。フランスに来てからずっと張り詰めていたものが一気に決壊して涙がぼろぼろ止まらなくなってしまった。その後も明け方まで、ふらふら飲みながら、踊り明かした。


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そんなフランスでの日々も、もう2年も前のことになる。あれから、スタッフとして「京都の暑い夏」を2回過ごし、その間私がフランスで一緒に暮らしたコンゴのダンサー達と、「暑い夏」のオーディションで選ばれた日本人のダンサー達が一緒に出演する『Just to dance…』という舞台がフランスで実現した。今年の「暑い夏」では彼らが舞台で踊っている様子を映像でみることができてともて懐かしく、嬉しかった。次は日本で観られることを楽しみにしている。


(おわり)



大籔もも(おおやぶ・もも)
踊りたい制作者。フリーの制作者としてダンス周りの舞台、イベントを手伝ったり、仕掛けたり。時々わが身をもってダンスをお届けし、また時にはこうして文章を書きながら、楽しく踊れる環境の保護・育成にいそしむ。

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