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砂連尾理「ベルリンゆらゆら日記 第3回」

2009年09月21日

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そういえばベルリンに来てからというもの、日本にいる頃には想い出しもしなかった、幼い頃に聴いていた歌を突然想い出してはYouTubeで聴いている。日本にいると、そんな精神的な余裕が無いのは確かなんだけれど、こうやってゆったり自分の身体と付き合える環境にいると、身体の中に堆積している過去の記憶みたいなものが出てきて面白いなと思う。

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ゆっくり呼吸する事。そうして身体の内と外にあるものをじっくり感じられるまで待って、感じてみる。内と外の感覚を合わせていくと漠然と感じている現在という地点に近づけるのかもしれないなと思う。ただ、この一見何気ない行為ほど簡単なようで難しい。

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“麻雀は人生そのものである。麻雀ではもらった牌は必ず捨てなければならない、それはまさに呼吸と同じである。吸ったら必ず吐かないといけない。また、麻雀は状況が悪くなった時に逃げて牌を捨てたら必ず負ける、だからそんな時ほど私は逃げ腰で牌を捨てる事はせず、前のめりに捨てていくようにしている”と、昨日友人のY君が言っていたな。そうそう麻雀はしないからよく分からないけれど、確かに状況が悪くなった時ほど、息を吐く事って忘れるんだよな。

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こちらで会話をする時に(といってもドイツ語ではなく英語なのだが)日本語程に言葉を知らない、話せないという事に、ついつい劣等感を持ち、相手に申し訳ないという感情を抱いてしまいがちだったが、そんな態度を取ると相手も引いてしまう事が分かってきたので、私の感覚ではちょっとずうずうしいかなと感じるくらいで会話に臨もうかなと思う今日この頃。

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ベルリンに来られている合気道本部道場の遠藤征四郎師範の研鑽会に参加。今日の稽古で改めて相手の力を受け止める事、またそれを返す事の大切さを考えさせられる。師範が稽古後半で、“自分の腕を取り戻す、自分であれば良いのです”と言っていた。それって一体どういう事だ!?

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研鑽会二日目。相手と関係を結ぶとは一体どういう事なのか? 特に受けをしている時に、どれだけ踏み込めるか。ただ触る、合わせるだけでは実は組み手になっていなくて、当らなければ結べないという事。そういう意味では、受けというのもかなり能動的な行為である。そんな事が、まだまだ分かっていない自分に気づく。それにしても今日組み手をした方の肌はとても心地良く、何ともいえない感情が引き出され、気持ちの良い稽古が出来た。肌が合うというのはこういう事なのかなと思う。

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今週の月曜から、食事の際に噛みしめる時間を十分取って、食事する事を心掛けている。そうすると、今までの食事の仕方はよく噛まずに、ややもすると少し飲み込むようにして食べていたのではないかということに気づく。このような食べ方は多分、栄養を十分に摂取出来ずにいるだろうし、胃に負担をかけているじゃないかなと思う。しっかり噛んで食べてみると、ごはんにしても噛み始めと、噛み砕き後では、味がかなり違う事に気づくし、お米だけでもかなりの彩りある味わいがあるのではと実感する。それにしても、噛みしめて食べてみると顎がこんなにも痛くなるとは。

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今日合気道のHans先生に、技を掛ける際に急ぎ過ぎだと注意を受ける。慌てると、どうしても自分だけになってしまい、しっかりと相手を見ていない。それはきっと相手にやられてしまう前に、技をかけてしまえという気持ちに囚われているのだろうな。組んだ相手とギリギリの所で向き合うとは一体どんな状態なのか? 観念としての理解ではなく、自分に固執しない所、相手にいったん命を預けてしまうような感覚をどうやって稽古するか?

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昼間に公園で、出来るだけ広範囲に目をやる事と、一点だけを集中して見る事の二つを交互に行ない遊んでみた。最初の広範囲に見ようとする事を考察していると、どこにも焦点が定まらず、ボーッとなり、広範囲に目が点在していき、そしてそのイメージの目に自分が見られているような、そんな感覚になる感じがした。一点に集中した時は、普段何気なく見ているものが実はこんなにも細部に至るまでクリアに見え、じっくり見ると皮膚感覚が思いのほか揺さぶられるものだなと改めて感じる。こうやって考えてみると見るという行為は、自分の意識の有り様によって見えるものが結構変わってくることに気づく。そうした時、普段素通りして見えているものを、今一度じっくり見つめ直す事から、目の前にあるものを捉え直し、味わい直したいなと思ったりする。

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Theater Thikwaでワークショップをする。彼等との久々の再会、そして身体を通しての対話はやはり楽しい。どうやら定期的にワークショップをやらせて貰えそうで楽しみが増えたなー。


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(続く)

砂連尾理(じゃれお・おさむ)

大学入学と同時にダンスを始める。’91年より寺田みさことダンスユニットを結成。又、近年はソロ活動を展開し、舞台作品だけでなく障がいを持つ人やホームレス、子どもとのワークショップも手がけ、ダンスと社会の関わり、その可能性を模索している。’02年7月「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2002」にて、「次代を担う振付家賞」「オーディエンス賞」W受賞。平成16年度京都市芸術文化特別奨励者。昨秋より、文化庁・新進芸術家海外留学制度の研修員としてベルリンに滞在している。

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