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【暑い夏18】ふれあうことで相手を知る

2018年06月27日

〈B-1:坂本公成+森裕子〉ワークショップレポート

コンタクト・インプロヴィゼーション、相手と触れあうことで成立する。わたしたちはふだんの生活だと他人との接触は避けている。たとえば、人ごみで肩が当たらないように避けたり、痴漢にまちがわれないように電車の中で両手をあげたり、接触に対して気をつかう場面は多い。わたしはダンス経験がまったくないのだが、ふだん避けている人間に触るというのはどんなものだろうと、B1クラスを受講することにした。森さんは初日に、ワークショップを受けるにあたって四つ注意をした。それは「自分の体を聴くこと」、「相手の体を聴くこと」、「自分の内と、外を感じること」、「自分の身は自分で守ること」だった。はじめはよくわからなかったが、しだいに意識するようになった。初日は目を閉じて相手がどんなポーズをしているか探ったり、場内を歩きまわってできるだけ多くの人に触ったりした。とくにお気にいりだったワークは、相手を型取りあうというものだ。相手にコンタクトしたらその姿をキープし、コンタクトされた側は相手の動きが止まったと感じたらコンタクトされている部分から抜けでて、今度は自分から相手にコンタクトしにいく、というものだった。相手から抜けでたあと、自分がいた形跡があることが、無性にうれしかった。

(撮影:岡安いつ美)


二日目以降はすこしむずかしかったり、苦しさに耐えたりする場面もあった。カウンターバランス(同じ力でお互いを押しあい体勢を保つ)のワークでは、身体のいろんな場所を使ってお互いの力が同じになるよう体勢を探るが、なかなかバランスを掴めず、相手のほうにたおれてしまう。また、リフト(相手を持ち上げる)やローリング(自分が転がる力で相手の体を運ぶ)では相手の体の上に体重を預ける。ローリングは自分も痛くないように、というのはむずかしい。相手を上にのせて転がると、身体のいろんな骨同士がぶつかってしまう。お腹のあたりのやわらかいところに乗るなど工夫が必要なのだが、なかなか痛くないポイントというのがみつからない。

(撮影:亀田恵子)


リフトのウォーミングアップでは、ただ床に寝転がっている人の上にかぶさるように乗るだけでも、体の中の空間がどんどんなくなるような感覚は恐怖だった。そういえば、他人にも重さってあったんだな、なんてあたりまえのことを思いだす。むしろ、子どものころは友だち同士でおんぶしあったり、組み立て体操があったりして、他人の重さを感じる機会が意外と多かったのかもしれない。圧迫されて息ができず声も出ないような瞬間があったりすると、もしこれが地震だったら、わたしはきっと助けを呼べないだろうと思った。本格的に相手を持ちあげるワークに入り、大きいマグロを両手で持つように相手を持ちあげた。坂本さんと森さんがお手本を見せてくださったときは軽々と抱えているように見えたが、じっさいやってみるとなかなか持ちあがらない。しかし森さんが「持ちあげる側は足の間にしっかり手を入れて、持ちあげられる側が足をしっかり伸ばせば上がるよ」とアドバイスしていただき、その通りやるとおどろくほどかんたんに持ちあがった。そういえば介護施設の面接に行ったとき、「人や重いものを持ちあげるのにはコツがある」と聞いたことがある。そのときとても小柄な女性のヘルパーさんが、自分よりも体格の大きい人を持ちあげたり移動させたりしていたのだった。どうしても持ちあげられないポーズもあったが、持ちあがってしまえばあまり重さを感じなかった。

言葉によって知るものと、身体を使ったコミュニケーションで知るものはまったくちがっている。相手の重さや感触はもちろんだが、いま自分に身をゆだねてくれている、ということや、動きをリードしてくれているなど、力加減や行動で伝えたり伝わったりする。痛みや苦しみでストレスもともなうこともあるが、言葉を交わさずとも相手と知りあうことができたのは、なんともふしぎな体験だった。

 

坂本 公成(日本/京都)

KOSEI SAKAMOTO(Japan/Kyoto)

ダンスカンパニーMonochrome Circus主宰。リヨン・ビエンナーレ(2000)、ベイツ・ダンス・フェスティバル(2002)、香港芸術節(2005)、フェスティバル・ドートンヌ(2009)、別府現代芸術祭「混浴温泉世界」(2009、2015)、瀬戸内国際芸術祭(2010)、鳥の演劇祭(2012)など、17カ国で作品を発表。「身体と身体との対話」というテーマからコンタクト・インプロヴィゼーションの普及や開発に興味を持ち、更に空間、コミュニティー、建築とその射程を広げている。平成19年度京都市芸術新人賞受賞。現在、嵯峨美術大学、天理医療大学非常勤講師

森 裕子(日本/京都)

YUKO MORI(Japan/Kyoto)

ダンサー・振付家。1996年よりMonochrome Circus のメンバーとして、上演300回を越える『収穫祭』プロジェクトや、『掌編ダンス集』『直島劇場』『TROPE』『HAIGAFURU』など、カンパニーの主要作品に出演。小柄で中性的な身体、そして機敏な動きが魅力。指導者としても水戸芸術館ACM劇場、北九州芸術劇場などの劇場や、TOYOTAなどの研修、生涯大学など幅広い層に各地でコンタクト・インプロヴィゼーションや「身体への気づき」のワークシッョプを多数行う。踊ることの根源的な「楽しさ」を伝えたいと願っている。

和田 華月(わだ かづき)

大学の卒業制作で小劇場演劇の観劇エッセイを執筆していました。コンテンポラリーダンスはときどきなにを観ているのかわからなくなるのがおもしろいです。

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